本作は1386年、百年戦争のさなかで実際に執り行われたフランス史上最後の“決闘裁判”を題材にしたミステリー。世紀を越えたスキャンダルとして歴史家たちの間で物議を醸す裁判が、暴行を告発した被害者マルグリット、マルグリットの夫ジャン・ド・カルージュ、ジャンの旧友で容疑者であるジャック・ル・グリという3人の視点で紡がれる。
事前に行われた会見には、カルージュ役の
1つの事件についてそれぞれ異なる見解を主張する人々を描いた、黒澤明の「羅生門」の影響下にある本作。スコットは監督を引き受けた理由を「マットが取り憑かれたように『羅生門』の話をしていたんだよ。1つの行為が3つの視点で語られることをね。私がこの作品に惹き付けられたのはそれが理由だ」と明かした。
実際の裁判の資料は男性側の視点のものしか残されていないが、映画では抜け落ちていたマルグリットの視点も描かれている。女性の脚本家が必要と考えたデイモンとアフレックは、「ある女流作家の罪と罰」のシナリオを手がけたホロフセナーに参加を要請。またカマーにも脚本会議に参加してもらい、積極的に意見を募った。
カマーは「脚本では3つのシーンで3つの同じセリフが書かれているけれど、すべてはそれをどう演じるかにかかっている。微妙なニュアンスや表現の違いを観客の皆さんに感じ取ってほしい。私は同じセリフを言う、それを相手がまったく違う態度で受け止める。それがこの3人の脚本家たちがこの映画にもたらした力だと思う」と語る。マルグリット視点の脚本パートを担当したホロフセナーは「彼女の身に降りかかったことは、今でもどこかで誰かが経験していることだと思う。でも私はそういうふうに書きたくなかった。私が書こうとしたのは、彼女が経験したようなことが身の上に起こったとき、どう行動するかということ」と話した。
作品を観た記者からの質問に、デイモンとアフレックが思わずマイクの取り合いをするほど白熱する場面も。記者の「第2幕と第3幕の暴力の表現にさほどの違いを見出せない」という指摘に、スコットが「君は本当に映画を観たのかね?」と声を荒げ、同じ出来事を異なる視点から描いた一連のシーンについて、アフレックは「それら2つは違う。同じ暴力を描いているが、アダム・ドライバーが演じたル・グリの視点が違うんだ」と反論。デイモンは「騎士の世界で生きるル・グリには理解できないことが表現されている。観客は理解していて、それがわかっていないのはル・グリだけなんだ」と続け、ホロフセナーも「ル・グリの視点では、マルグリットが誘っているように映っている」と言及。スコットが演出による細かな違いを解説し「もう一度映画を観たまえ!」と一喝して会見は終了となった。
「最後の決闘裁判」は10月15日に日米同時公開。
中西豪@史道不覚悟 @take_nakanishi
@gymrit ニュースのあらましを読んで脊髄反射的につぶやきましたが、そもそもリドリー・スコットは黒澤明に多大な影響を受けてきていましたね。また、マット・デイモンが熱烈に推しての実現なんですな、デイモンも黒澤明信者か。
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