「ドライブ・マイ・カー」カンヌで脚本賞など4冠、濱口竜介「重要なのは原作の物語」

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濱口竜介の監督作「ドライブ・マイ・カー」が、フランス現地時間7月17日に第74回カンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞した。

濱口竜介

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「ドライブ・マイ・カー」本ビジュアル

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レオス・カラックス、ウェス・アンダーソン、ポール・ヴァーホーヴェン、フランソワ・オゾン、ジャック・オディアールらの作品が並ぶ中、日本映画として唯一コンペティション部門へ出品された「ドライブ・マイ・カー」は、村上春樹による短編小説を原作とする物語。妻を亡くした俳優・演出家の家福が寡黙な専属ドライバーのみさきと出会い、喪失感と向き合っていくさまが描かれる。映画には、村上による短編集「女のいない男たち」所収の「ドライブ・マイ・カー」だけでなく、同短編集に収録された「シェエラザード」「木野」の要素も投影されている。脚本賞だけでなく国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞にも輝いた。

濱口竜介(中央)

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濱口はスピーチで「最初にお礼を申し上げなくてはならないのは、この物語を我々に与えてくれた原作者の村上春樹さんです」と村上に感謝。「共同脚本家の大江崇允さんという脚本家がいらっしゃいます。大江さんと僕の関係は奇妙なもので、大江さんは僕にひたすら書かせるタイプの脚本家です。大江さんはいつも読みながら『本当に素晴らしい。このままやりなさい』と言ってくれました。この作品は、3時間近くあり壮大な物語。単純にわかりやすさだけを考えたらそうはいかなかった。彼がずっと励まし続けてくれたから、この物語を最後まで映画として書き切ることができたと思っています」と話した。

「ドライブ・マイ・カー」

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家福を演じた西島秀俊は「監督が村上春樹さんの原作を問いとし、過去と真摯に向き合う事で人は絶望から再生することが出来るという答えを示したこの作品が、世界の人々の共感を呼んだのは本当に素晴らしい事だと思います」とコメント。みさき役の三浦透子は「皆さんと仕事ができたこと、自信を持って届けられる作品が完成できたこと、カンヌ映画祭で上映できたこと、そしてこれから日本の皆さんに観ていただけること。もう十分嬉しいことばかりなのですが、やはり、こうして賞という形で評価をいただけることは、本当にありがたいです」と述べた。

「ドライブ・マイ・カー」

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また、家福の亡き妻を演じた霧島れいかは「私はこの作品を家族や親友のように大切に想っています。今回その作品が素晴らしい賞を頂けたこと、今、撮影当時のことを振り返りながら感動と感謝で胸がいっぱいです」、物語を動かすキーパーソン・高槻役の岡田将生は「この映画が世界の方々に通じた事が何よりも幸せです。早くスタッフキャストとこの気持ちを分かち合いたいです。そして、日本の方々にもこの映画をスクリーンで是非観て頂きたいです。この映画は僕にとって本当に宝物です」とコメントを発表した。

「ドライブ・マイ・カー」

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記者会見での「登場人物が作用し合っていて、複雑な人間関係を描いた演劇のようでもあります。どのようにして流れを作ったのでしょうか?」という質問について、濱口は「重要なのは原作の物語だと思います。村上春樹さんが書かれた物語の登場人物の魅力を決して損なわないようにと考えていました」と述懐。「家福とみさきはすごく抑制された人間性を持っていて、自分のことをあまりしゃべるわけではないのですが、それぞれ腹の中に渦巻いている感情はあり、それがあるきっかけで出てきてしまう。内にあるものがあふれ出してくるという流れを1つの軸として考えていました。実際“流れ”というものはものすごく意識して書いていたと思います。滞ることがあったら、この長い物語は観客にとってとても負担になってしまう。淀むことなく進んでいくように、ということは考えていました」と続ける。

「ドライブ・マイ・カー」

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「シーンが進むごとに風景や音の表現が変わっていくのも興味深かったのですが、それは登場人物の心情の変化を表すためでしょうか?」という問いには「登場人物の関係性なり感情が変わっていくと、自然に音が変わっていくということがあると思います。出てくる感情によって声が違うということがあるし、関係性によって言葉の出方も違ってくるんですよね」と回答。「あるときはバーッと流れるようにあふれてくる。それは中盤以降、家福とみさきの関係性で起こることですけれど、それだけ言葉があふれたあと、2人はまた沈黙する関係に戻っていく。でもそれは最初の頃の沈黙とは意味が違う沈黙と思っています。2人の親密さみたいなものを観客が確信して味わったあとのものなので、この沈黙の中に、観客はそれまでよりも分厚い何かを受け取るんじゃないかと思っています」と語った。

「ドライブ・マイ・カー」は8月20日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。

濱口竜介 授賞式スピーチ

ありがとうございます。脚本賞、この物語に対していただいた賞ですが、最初にお礼を申し上げなくてはならないのは、この物語を我々に与えてくれた原作者の村上春樹さんです。共同脚本家の大江崇允さんという脚本家がいらっしゃいます。大江さんと僕の関係は奇妙なもので、大江さんは僕にひたすら書かせるタイプの脚本家です。大江さんはいつも読みながら「本当に素晴らしい。このままやりなさい」と言ってくれました。この作品は、3時間近くあり壮大な物語。単純にわかりやすさだけを考えたらそうはいかなかった。
彼がずっと励まし続けてくれたから、この物語を最後まで映画として書ききることができたと思っています。
脚本賞をいただいたが、脚本は映画には映っていない。それを素晴らしいと思っていただけたのは、表現する役者たちが本当に素晴らしかったと。役者たちこそが物語だという風に思っています。
主演の西島秀俊さん、三浦透子さん、岡田将生さん、霧島れいかさん、パク・ユリムさん、ジン・デヨンさん、ソニア・ユアンさん、ペリー・ディゾンさん、アン・フィテさん、安部聡子さん、すべての出演者、役者のみなさんが、この物語を自分の身体で素晴らしく表現してくれた。もしよろしければ、海の向こうにいる役者、それを支えてくれたスタッフの皆さんに大きな拍手を送っていただけたらと思います。

西島秀俊 コメント

濱口監督、大江崇允さん、カンヌ国際映画祭脚本賞受賞、心からお祝い申し上げます。
監督が村上春樹さんの原作を問いとし、過去と真摯に向き合う事で人は絶望から再生することが出来るという答えを示したこの作品が、世界の人々の共感を呼んだのは本当に素晴らしい事だと思います。
監督の、人への深い洞察と愛情の力です。
これからも沢山の傑作を作って下さい。楽しみにしています。おめでとうございます!

三浦透子 コメント

濱口監督、作品に関わった全ての皆さん、本当におめでとうございます。
皆さんと仕事ができたこと、自信を持って届けられる作品が完成できたこと、カンヌ映画祭で上映できたこと、そしてこれから日本の皆さんに観ていただけること。もう十分嬉しいことばかりなのですが、やはり、こうして賞という形で評価をいただけることは、本当にありがたいです。みんなでお祝いできる時を楽しみにしています!

岡田将生 コメント

濱口監督、カンヌ国際映画祭脚本賞受賞、本当におめでとうございます。
そしてこの作品に関わった皆さん、本当におめでとうございます。こんな幸せなことがあっていいんでしょうか。
監督の作品の現場で過ごさせて頂いた日々は宝物です。この映画が世界の方々に通じた事が何よりも幸せです。早くスタッフキャストとこの気持ちを分かち合いたいです。そして、日本の方々にもこの映画をスクリーンで是非観て頂きたいです。この映画は僕にとって本当に宝物です。

霧島れいか コメント

私はこの作品を家族や親友のように大切に想っています。今回その作品が素晴らしい賞を頂けたこと、今、撮影当時のことを振り返りながら感動と感謝で胸がいっぱいです。濱口監督の作品に対する真っ直ぐな心と深い想いが伝わったカンヌでの上映後の拍手は忘れられません。この感動をキャストと関係者の方々と早く共有したいです!
濱口監督おめでとうございます!

大江崇允 コメント

19世紀末に誕生した「映画」という芸術は今後、何百年先にも残ることが確定したと僕は思っています。21世紀の文明が情報をアーカイブ化し、昨日生まれた映画の隣に色のない名作映画が並ぶ、なんてことが当たり前になりました。時間が失われた感覚すら覚えます。スマホの向こう側にあらゆるエンターテイメントが残り、遠い未来までなくなることはないでしょう。図書館の本棚のように綺麗に整った装いですが、しかし畑の作物のようにそれは同じ顔にも見えます。これが現実だと思います。困難な時代と取るか、新しい世界の種が撒かれたと受け止めるのか、それは自分次第だと思います。「ドライブ・マイ・カー」では、ゴドー(神)を待ちながら、同時にアーストロフの台詞のように、数百年後の未来へと奇跡に似た「祈り」を投げています。それが今の作家にできる、映画という可能性だと僕は考えています。そして、今映画を作ることは百年後にも残ることを想定しなければならないのではないのか、と身が引き締まる思いです。濱口竜介監督、山本晃久プロデューサー。お二人の素敵な企みの仲間になれたことを光栄に思います。ありがとうございました。

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(c)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会 (c)Kazuko WAKAYAMA

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