明日7月9日に封切られる「
本作は「イリュージョニスト」「ぼくを探しに」で知られるショメが2002年に発表した長編アニメ。マフィアに誘拐された最愛の孫シャンピオンを奪還するため、大都市ベルヴィルまでやってきたおばあちゃんと愛犬ブルーノの不思議な冒険が描かれる。
非商業・インディペンデント作家の研究を行うかたわら、ニューディアー代表として新千歳空港国際アニメーション映画祭のフェスティバルディレクターを務める土居。「ベルヴィル・ランデブー」はアート色の強い“大人向け”の長編アニメとして需要された側面もある。そういった作品が増えている近年の動向について尋ねられると、ショメは「大人向けの作品が多く作られるという現在の傾向は歓迎しています。ただ、私は大人だけというのでなく、大人と子供、あらゆる世代の人が楽しめるものを作りたいと思います」と作品作りへの根底にある思いを語った。
「ベルヴィル・ランデブー」におけるカオスやグロテスクな表現については、ショメ自身がキャリアをフランスのマンガ“バンド・デシネ”からスタートさせている点の影響が明かされた。「誇張やカリカチュアはとても重要です。マンガは自由に描くことができるから好きだし、自由のために描いています。ポリティカルコレクトネスの点では、今やカリカチュアするだけで怒り出す人がたくさんいます。それはみんながユーモアのセンスを失ってしまったからです。問題を解決するためにはユーモアも必要。人を黙らせようとすることではありません」と、昨今の風潮に警笛を鳴らす場面も。
インタビューではショメが設立を準備している映画学校「Sylvain Chomet Animation Academy - The school」にも話題が及ぶ。2020年9月の開校を予定していたが、パンデミックの影響で予定を変更している同校。ショメは「バイユーというノルマンディの町に学校を設立しました。私が映画を制作した際、多くの若いアーティストと仕事をし、それを通じて若者の育成にかかわりました。教えるのが好きですし、自分のアニメーションへの情熱と技術を次の世代に伝えたいのです」と新たな目標を明かす。
最後には準備中の新作「The Magnificent Life of Marcel Pagnol(英題)」に言及。本作はフランスの国民的作家であり映画作家だったマルセル・パニョルの伝記映画だ。その人生は過去に「マルセルの夏」「マルセルのお城」という2部作の映画になったことでも知られる。2年半後の完成を目指すショメは「パニョルは映画スタジオや配給会社を作り、トーキー映画の普及に貢献しました。老人となり、創作の意欲をなくしたパニョルが、何にでも興味を持っていた子供時代の彼自身と対話をする、という形で語られます。忘れてしまっていた自分の中の子供とコミュニケーションすることで、もう一度共通するものを取り戻そうとするのです」と語った。
「ベルヴィル・ランデブー」は東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で順次ロードショー。
土居伸彰 Nobuaki Doi @NddN
シルヴァン・ショメが準備中の映画学校や最新作を語るインタビュー到着 https://t.co/u8lthUaruR