「
本作は原田マハの同名小説を原作に、かつて撮影所で映画の夢を追い求めるも、今ではギャンブル漬けで借金まみれの生活を送る男ゴウの姿を描いた松竹映画100周年記念作品。沢田研二が現在の落ちぶれたゴウ、菅田が若き日のゴウを演じたほか、妻・淑子に宮本と永野、テアトル銀幕の館主を務める元映写技師テラシンに小林稔侍と野田、昭和の銀幕スター・桂園子に北川、ゴウと淑子の娘・歩に寺島、孫の勇太に前田が扮している。
菅田とダブル主演を務めるはずだった志村けんの死去、そして撮影中断、またコロナ禍による2度の公開延期を経て、8月6日に封切られる本作。山田は「今から1年半前、ゴウをやるのは志村けんさんだった。そのつもりで(過去パートを)ずっと撮影していた。(2020年)3月の末、コロナで大変だと思っていたら志村さんが倒れてしまって、一時は呆然としていました」と長い監督生活でも初めての経験に戸惑いを隠せなかったという。「ピンチヒッターを決心してくれた沢田研二さんが、志村さんとはまったく違うゴウ像を作り上げてくれた。そんなふうに大変な出来事を経て、映画は別の様相となってできあがりました。亡き志村けんさんのことを思い出しながら観てください」と呼びかける。
志村の本読みを見学してから撮影に臨んだという菅田は「ある意味、志村さんが演じるゴウを想定してのお芝居でもあった。ちょうど(自分が)撮り終わった頃に亡くなり撮影も止まった」と回想。山田はコロナ禍を受け脚本を書き直しており、菅田は「それを読んだときに、また1個違うパワーが生まれている気がして公開が楽しみになった。沢田研二さんが演じたゴウを見たとき、僕は勝手に志村さんを感じました。確実にいろんなものが残っていて、ほかにない映画になってます」と語った。山田組初参加の菅田は撮影で「リテイクがある」といううわさを事前に聞いていたそう。いわゆる撮り直しのため現場では、スケジュールや予算の都合上、敬遠されることも多いリテイク。菅田が「一見、よくないことに聞こえるかもしれないですが、僕からしたらもう1回求めてもらえることが実はうれしくて。それだけ俳優の演技を見てくれてるし、僕ら以上に撮ったあとも演技のことを考えてくれてる。山田さんと『このシーンのゴウはもっとこうなると思うんだ』と稽古したのは奇跡のような時間でした」と話すと、山田は「よくないですよ。割り切りが悪いんだから」と笑う。菅田は「本当に幸せなことでした。『マジか』とは思いましたけど」と続け、笑いを誘った。
宮本を除き、今回登壇したキャストの6人が山田組初参加。山田は「もちろん親しい友人のような俳優と仕事する面白さ、楽しさはある。しかし、同時に初めて一緒に仕事をする人から受け取る新鮮な感動、喜びもあるわけですから。新しい人たちと巡り会えたことが、僕にとってどんなに大きな喜びであったかわかりません。この仕事は本当に楽しかった」と撮影を振り返る。ゴウ、淑子、テラシンの三角関係が軸になっており、山田は「菅田くんと野田くんの芝居、キャラクターが対照的である必要があった。今回それぞれのパーソナリティや演技のスタイルが、すごくうまくハマってると思います」と称賛。また北川については「映していて、うっとりするぐらいきれいな人。映画にとってそれは大事なこと」と述べつつ「その中のワンカットは彼女が出てきた映画やドラマの中でも、一番きれいなカットとひそかに自負してるぐらいです」と打ち明ける。北川が「どれですか? 知りたいです」と食い付くも、山田は「それはちょっと言えないです。短いカットですよ」ともったいぶり、北川は「あとで粘ってこっそり聞いてみます」とほほえんだ。
最後に山田はかつて「男はつらいよ」シリーズが上映されていた正月の映画館の風景を述懐。「通路にもベタベタと座って、廊下側のドアがお客さんで膨れて閉まらないぐらいの状態。大声で叫んだり、笑ったりしながら、観てくれていたことを今思い出します。映画って本当はそんなふうにして大勢がにぎやかに声を上げながら観るもんじゃないのかと。静粛に観てくださいとテロップが出てきますが、僕に言わせれば大きなお世話だと思います。お金払って観に来たんだから、うんと楽しんでください。前の座席ぐらい蹴っ飛ばしたって一向に構わない(笑)。そういう映画を作っていきたい。この映画が皆さんにとって楽しいものでありますように。封切りの日が無事来て、できることならば50%ではなく、びっしりと満員の映画館で観てもらえる状況を心から願っています」と語り、イベントを締めくくった。
「キネマの神様」は8月6日より全国ロードショー。
関連記事
菅田将暉の映画作品
リンク
Rieko @r_jnknmsk
「キネマの神様」山田洋次、菅田将暉と野田洋次郎の対照的な芝居称賛「うまくハマった」(写真16枚) https://t.co/LWqcSq7uZn