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人より常にワンテンポ早い郵便局員シャオチーと、常にワンテンポ遅いバス運転手グアタイの“時差”から生まれる恋模様を描く本作。旧暦の7月7日にあたる七夕バレンタインデーにハンサムなダンス講師とデートの約束をしたシャオチーだったが、目覚めるとなぜかバレンタインの翌日に。シャオチーをリー・ペイユー、グアタイをリウ・グァンティンが演じた。
台湾新世代の異端児として出現し、「熱帯魚」「ラブ ゴーゴー」などで日本でも高い人気を誇るチェン・ユーシュン。本作の着想のきっかけが野球だったことに触れ、彼は「ピッチャーとバッターの関係が非常に面白いと感じました。なぜならピッチャーとバッターのリズムが合ったときにだけ、ボールを打つことができる。この『リズム』に私は着目したんです」と話し、「そこから、まったくリズムの違う男女の間で恋がどのように現れ、成立するのかを考えました。それが、この物語の始まりです」と明かす。
続けて「着想のもう1つのきっかけは、台湾の大スターの写真が、ある写真館に飾られていたことです」と回想。「そのときふと疑問に思いました。このスターは、自分の写真がこんなに引き伸ばされて飾られていることを知っているのだろうか?と。もし、撮られた記憶もないのにここに飾られているのだとしたら? まったく知らない消えた1日があったとしたら? このアイデアを使えば、面白い映画になるのではないかと思ったんです」と振り返った。
ヒロインのシャオチーが消失した1日を探す様子をつづる本作。消えた1日として七夕バレンタインデーを選んだ理由について、チェン・ユーシュンは「2000年にシナリオを書いた当時は『消えたバレンタイン(「消失的情人節(原題)」)』を意味するタイトルではなく、『ある日』という意味のタイトルでした」と裏話を披露し、「バレンタインデーというのは、彼氏や彼女がいない人にとっては、なんとなく避けたい嫌な日だと思います。人によっては消してしまいたい1日でもあるわけです。でも一方で、期待をしたい、自分の存在意義を見出したいという気持ちもある。だから消えた1日をバレンタインデーにすることによって、物語を膨らませることができるのではないかと考えたのです」と思い返す。
そんな消えた1日を探してシャオチーが訪れるのは「熱帯魚」の舞台にもなった嘉義県・東石村。「不思議な雰囲気を出したかった」と述べるチェン・ユーシュンは「東石村でしかこれは撮れないなと思ったんです」と同地の魅力を伝える。
また本作のような“奇跡”が起こった場合どうするか?という質問に、チェン・ユーシュンは「これは台湾でQ&Aがあるといつも聞かれる質問です。まずはお金を取りに銀行へ行って、そしてそのお金で映画を撮ると思います」と答え、映画への愛を示した。
最後にチェン・ユーシュンは「誠心誠意を込めてこの映画を撮りました。私自身、とても好きな作品です。きっと日本の観客の皆さんにも気に入っていただけると思います」と思いを口にした。
「1秒先の彼女」は東京・新宿ピカデリーほか全国で公開中。
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リズムの違う男女間で恋はどう現れるか?台湾新世代の異端児が語る「1秒先の彼女」(コメントあり)
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