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本作は原田マハの同名小説を原作に、“映画の神様”を信じ続けた男・ゴウとその家族に起きる奇跡を描く物語。現在と過去のゴウを沢田研二と菅田が2人1役で演じ、ゴウの妻・淑子に宮本と永野、娘の歩に寺島しのぶが扮した。また映画館「テアトル銀幕」の館主を務める元映写技師・テラシン役で小林と野田が出演している。なお現在のゴウは当初志村けんが演じる予定だったが、新型コロナウイルスによる肺炎で志村が死去したため沢田が代役を務めた。
山田は「ようやくこの日がきました」としみじみ述べ、「本読みまでしたあとに志村けんさんが亡くなった。こんな体験は初めてで混乱しました。どうすればいいのか? 不安に思ったことを今でも思い出します。公開までこんなに長く時間が掛かったのは、僕の映画人生でも初めてです」と述懐。続けて「なんたって志村けんは日本を代表するコメディアン、沢田研二は日本を代表する天下の二枚目。でも2人は仲がいいんです。志村さんをイメージして描いたダメ男を別の形で表現してくれるんじゃないかと思っていましたが、沢田さんが鮮やかにゴウを演じてくれました」と沢田をたたえた。
菅田は「沢田さんはものすごいパワフルで、俺より動き回って大暴れしている。撮影現場を見学させてもらったのですが、すごいチャーミングで、ダメ男なんだけど色気があって、とても魅力的にゴウを演じていました」と目を輝かせる。初の山田組参加となった永野が「ワンシーンワンシーンに懸ける皆さんの思いを感じて、1つひとつ丁寧に取り組むことは大事だなと思いました。毎日緊張していましたね」と言うと、山田は「本当に緊張してた? 落ち着いているなと思っていましたよ」と声を掛け、永野を照れさせた。
およそ50年ぶりの山田組参加となった宮本は「50年は長いですね。『男はつらいよ 純情篇』当時の監督は怖くて。でも今回、顔合わせをしたときに監督とハグしました。長生きして今回出演することができてよかった。キャスティングしていただいてうれしいです」と笑みをこぼし、対する山田は「50年も経ったんですね。あのときは、かわいいお嬢さんでしたね」と話し会場を和ませる。
「山田監督は現場でアイデアを紡ぎ出す方」と紹介した野田が「監督の瞬発力のある演出に右往左往している自分がスクリーンに映っています。『ギターを弾いてみない?』って撮影の3日ぐらい前に言われたこともありました(笑)」と裏話を明かすと、山田は「野田くんが出ているんだから、ギターを弾いているところを見たいなって」と茶目っ気たっぷりに返した。
試写会で鑑賞した観客から、野田とそっくりだという感想が上がっていることを聞いた小林は「野田さんと食事をする場を用意していただいて、横に座ったんですが、名前言っただけで2時間ぐらい過ぎちゃいました」と振り返り、野田は「“山田洋次と小林稔侍と食事”っていうすごい状況でしたね(笑)。稔侍さんはやわらかくて温かくて、この雰囲気に近付きたいなと思いました」と回想。小林は「とある場面での、若いテラシンの最初のリアクションを知りたくて、ラッシュを観させていただいたんです。それを観て『あ! 気持ちは僕と同じだな』と安心しました」とコメントした。
撮影当時を振り返るのは山田組初参加の寺島。彼女が「夕日のシーンを撮影したあと、よりきれいな夕日が出て監督が子供のように悔しがってたんです。私の映画愛はまだまだ足りないなと思いました」と思い返すと、菅田は「山田組は撮影のシステムが執念の塊みたいなんです。監督が考えるのを1時間ぐらい待っていることもありました」と明かす。
最後に山田は「コロナの時代が通り過ぎてしまうと、観客は映画を配信で観るようになってしまうのではないか? でもこの作品の中でもたっぷり語られていますが、フィルムを回して映画を上映する歴史を生きてきた人間からは『映画館よ、永遠なれ』と言いたい。映画は大勢の見知らぬ人と観て、ときに掛け声を掛けたり、拍手したり、そういうことであり続けたいです」と言葉に力を込め、菅田は「うまく言葉にできないんですが、1年を経て、いろんなことを経て、映画館で観るべき映画になっていると思います」と伝え、イベントの幕を閉じた。
「キネマの神様」は、8月6日よりロードショー。なお本イベントでは、“完成までの物語”と題された本作の特別映像が解禁に。志村の死去、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言など、本作が乗り越えてきた困難が映し出されており、現在YouTubeで公開中だ。
高知県映画上映団体ネットワーク(35mm) @einee_kochi
「キネマの神様」菅田将暉が沢田研二の魅力語る、山田洋次は「映画館よ、永遠なれ」(写真15枚) https://t.co/9bR6jWF3tX