「
「轢き殺された羊」 の
「男はつらいよ」シリーズなどで知られる
また「君が世界のはじまり」「聖の青春」の脚本を手がけた
第20回東京フィルメックスで最優秀作品賞に輝いた「羊飼いと風船」は、1月22日より東京・シネスイッチ銀座ほか全国で順次ロードショー。
山田洋次 コメント
優しくて厳しくて神秘的で、そしてそこはかとなくユーモラスな家族の姿を、
遙か遠い国のチベットの監督が鮮やかに描いた。
西川美和 コメント
大地や羊とともに生き、変わらない暮らしをする人たちは、
永久に変わらないままでいて欲しい──
こちら側が勝手に抱くロマンは、ゆるやかに冷水に沈められていく。
「変わらないでどう生きろというのか」という反発と
「変わった果てにいいことなんてあるのか」という懐疑がせめぎ合い、
映画を観終わってしばらくたっても、答えが出ない。青く広い空の沈黙が、苦しい。
実に、映画を観終わった後らしい苦しさ。
向井康介 コメント
その手触りは清水宏作品の風景と似ている。
写実的な朴訥さは一見優しさを孕んでいるが、
信仰と文化に挟まれて立ち往生するチベット人の懊悩が根底にはずっと流れている。
美しくも険しい映画だ。
市山尚三(東京フィルメックス ディレクター)コメント
チベットに豊饒な映画文化を築き上げたペマ・ツェテンの作品が遂に劇場公開される。
一つの家族を媒介にチベットの伝統文化と近代化の相克を見事に描いた
「羊飼いと風船」は、今最も見られるべき傑作だ。
渡辺一枝(作家)コメント
懐かしい草原の風景。
奇妙な風船で遊ぶ少年の姿をニンマリと見ていたら、
スクリーンには“チベットの今”が深く抉り出されていた。
少年の手から離れた赤い風船が、たゆたいながら青い空に吸い込まれていくのを
じっと見つめる彼らと共に、私もその先へ想いを馳せる。
松田青子(作家)コメント
伝統と信仰、新しい制度と習慣が混じり合う日々のなかで、
女性の体が負担を強いられることも
また“日常”になっていることについて、考えずにはいられない。
樋口毅宏(作家)コメント
「チベット映画って観たことない」という不安は、始まってものの数分で氷解した。
いつの時代もどこの国にもいる家族と、犠牲を強いられる性の物語だった。
人間と羊に違いはあるのか。
少なくとも、女と羊にはない。
ここ数年観た映画の中で、もっとも美しいラストシーン。「ROMA / ローマ」級の感動。
涙が溢れるのを止められなかった。
小池昌代(詩人 / 作家)コメント
空へ吸い込まれていく赤い風船を見たとき、
心が共に、天に釣り上げられ、気づくとわたしは泣いていました。
瀧井朝世(ライター)コメント
ユーモアも厳しさも、大らかさも切なさも詰まった生活賛歌。
小説家として監督として、優しく鋭い眼差しを持った
ペマ・ツェテンの描写力に感服。
ヨシダナギ(フォトグラファー)コメント
伝統と近代化、宗教と政策の交差。
そして、生と死が備えた、ある種のもどかしさ。
人はいつだって、なにかの狭間に生きている。
たかのてるこ(旅人 / エッセイスト)コメント
生きるとは、変わっていくこと。
変わっていく女(妻)と、変われない男(夫)。
この家族の未来を、心から応援したくなる!
新井敏記(SWITCH / Coyote編集長)コメント
異国の村のくらし
悲しくて優しい、異国のある村の羊飼いの一家に流れる時間を見つめていたい。
赤い風船がつなぐこんな静かな愛のかたちがあることを、ぼくは忘れていた。
林紗代香(TRANSIT編集長)コメント
「世界は変わったのに君たちは変わらないな」という台詞が心に残った。
長年積み上げてきた伝統的な暮らしや文化や価値観は、
時の流れに逆らうことは難しい。変わった人、変わろうとする人、変われない人。
儚く脆い人びとの心は、風船のように宙を舞い、どこへ流れてゆくのだろうか。
赤坂憲雄(民俗学者)コメント
生と死と、性のあわいに、風船が揺れる。だれもがもてあそばれる。
やがて壊れて、空の高みへ。羊と人と、性食の詩学のかなたへ。
池谷和信(国立民族学博物館教授)コメント
日本とチベットでは、生き物と人、人と人とのかかわり方が大きく違う。
しかし、変わりゆく社会のなかでそれらを繋げ、
維持していく難しさや大切さは、文化を越えて我々に伝わってくる。
横川シネマ @yokogawacinema
【羊飼いと風船】本日22日より、広島上映が始まりました。1週目(22-28日)は14:10開演です。是非。
西川美和ら「羊飼いと風船」にコメント、山田洋次は「優しくて厳しくて神秘的」(コメントあり) https://t.co/TxKCeCl3Ff