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本作の主人公は、トランスジェンダーとして体と心の葛藤を抱えながら生きる凪沙。彼女が親からの愛を受けずに育った中学生・桜田一果と出会い、母性に目覚めるさまが描かれる。海外メディアから会見開催を望む声が多数あり、このたび凪沙役の草なぎと内田が登壇する運びとなった。
「トランスジェンダー女性を演じるということは難しいと思いました」と切り出した草なぎ。「でも、脚本に感じたことのない温かい気持ちが込められていて、この素晴らしい作品に参加したい、早く触れてみたいという気持ちになりました」とオファーを受けた理由を真摯に語る。そして「台本を読んだときに泣いてしまったんです。自分ではどういう意味の涙かはわからなかったけれど、素敵な涙だと思った。そんなエネルギーを役に乗せたいと演じました」と思いを口にした。
草なぎにオファーした理由を問われた内田は「トランスジェンダーの役者さん、シスジェンダーの役者さん、あらゆる可能性を考えました。ただ今回は広くたくさんの方に観ていただきたいという気持ちが強かった。演技もできて、国民に広く認知されているということで草なぎさんにお願いしました」と述べ、「トランスジェンダーの俳優がトランスジェンダーを演じるべきという世界中の流れがあります。日本も最終的にそうなるべきです。でも、日本はそのスタートラインにすら立っていない」とコメント。続けて「今回トランスジェンダーの役者である真田怜臣さんに出演してもらいました。真田さんが草なぎさんと一緒に演技をする中で感化されていくのが現場でわかった。これから役者としてのキャリアを積んでいこうとしている俳優にとって、草なぎさんのような実力のある役者さんと一緒に仕事をするのはとても重要なことだと思いました。今後はトランスジェンダーの役者がもっと増えることが望ましいと思っています」と述懐した。
撮影に入る前に内田から役作りのために資料を渡されたという草なぎ。「トランスジェンダーの方のドキュメンタリーを観たり、監督がまとめてくださった資料を読んで役作りをしました。監督がトランスジェンダーの方とミーティングをする機会を設けてくれたのも大きかったです」と回想。母親になりたいと願う凪沙を演じるうえで、どのように役作りしたのかと記者から質問が飛ぶと、草なぎは「映画の中で凪沙というキャラクターは徐々に母性に目覚めていく。難しいところではありましたが、何かを愛し、育てる気持ちはジェンダーレスの世界。男性も女性も関係ないと思っています」と力を込めて語る。
公開後に、さまざまな意見が寄せられているという本作。内田は「とてもいいことだと思っています。一部の先進的な都市部では別かもしれませんが、地方都市に行けば、LGBTやトランスジェンダーの方に理解がない状況がある。この映画は多くの若い人が観てくれているんです。彼らが何かを考えるきっかけになってくれれば」と言及した。
会見中盤にはトランスジェンダーやLGBTに対して誤解を煽るような発言が政治家から飛び出たことに対し、内田が意見を求められる場面も。東京都足立区議員の性的マイノリティを傷付ける発言に触れつつ、内田は「言葉にならないぐらい許しがたい。1人の映画監督としても大きな声で抗議したい」と語気を強め、「議員のインタビューを読んだのですが、無知なんです。何も知らない。ああいう政治家がいきなりいなくなることはないが、この作品を観た若い人たちが『あの政治家、おかしいこと言ってるんじゃない?』と思ってくれれば」と作品に思いを託す。
最後に草なぎは「この映画を世界中の皆さんに観ていただきたい。何かを考えるきっかけになればいいなと思っているんです。そして、いい映画に出演できたことがとてもうれしい。この感動を1人でも多くの人に届けられればと思っています」と呼びかけ、イベントの幕を引いた。
「ミッドナイトスワン」は、全国で公開中。
※草なぎ剛のなぎは弓へんに前の旧字体、その下に刀が正式表記
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