本広克行が「Cinema Lab」立ち上げの経緯語る、押井守は「監督が試される企画」

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映画実験レーベル「Cinema Lab(シネマラボ)」のキックオフ会見が本日10月5日に東京・スペースFS汐留で行われ、本広克行押井守小中和哉上田慎一郎が登壇した。

本広克行

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かつて実験的、芸術的な映画の製作・配給を行ったATG(日本アート・シアター・ギルド)に影響を受け、“監督絶対主義”を掲げて発足した同レーベル。「限られた予算」を唯一の条件に、映画監督が自ら企画開発、脚本、キャスティング、ロケーション、演出など、クリエイティブの責任を担い映画を制作していく。第1弾作品として、押井の原案を本広が映画化した「ビューティフルドリーマー」が11月6日に封切られる。

立ち上げの経緯を問われた本広は、大林宣彦、山田洋次たちが参加した監督会の存在を紹介する。「昔はもっと自由に作れる現場があって、ATGという素晴らしい枠があったんだよとおっしゃっていて、いろいろお話を聞いていたんです。その会に小中さんもいらしたので、『なんとかならないかな』というお話をしましたよね?」と確認。小中は「そうですね、僕もやりたい企画があるからシリーズにして押井さんも巻き込んじゃおう、ということでしたね」と振り返った。本広は「今若者たちが作る映画がすごく面白いんです。MOOSIC LABは手弁当な制作費なのにすごく面白いし、メジャーな作品は何億もかかっているものが多い。でもその中間がなければ、上田くんのような監督も次に行きづらいんじゃないかと思って、このレーベルを絶対立ち上げなければと考えたんです」と述懐する。

押井守

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押井は本広との会話を回想し、「単館やそれに近い感じで、回収が可能な枠ってどれぐらいなんだろうという話をした記憶があります。有名な役者さんをいっぱい並べられないならオーディションやワークショップで自分たちで役者を作っていこうという趣旨だったかと」と語る。続けて「監督が自分の知恵でどこまでがんばれるか。ある意味監督が試される企画で、面白いんじゃないかと思ったことが始まりですね。なんでもかんでも自由にやっちゃうと得意技大会になっちゃうので、縛りが欲しいという話もしました」と述べた。また「考えてみたら、僕は今までちゃんとしたドラマを普通に作るということをしてこなかったので、それをやってみようかと。こういう企画をやる以上、監督自身の資質に対する挑戦も必要だと思いました」とレーベルの意義を語っている。

小中和哉

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小中は「ここにいる監督はみんな自主映画の出身で、低予算でいいものを作る自負はあるけど、十分に公開できなかったという悔しさを味わったことがあると思うんです。だから、バラバラで作っているよりは監督が共同戦線を張って、レーベルを作らないと限界だなと思ったんです」とコメント。今回は自身の監督作「星空のむこうの国」のセルフリメイクに挑戦すると明かし、「初心を思い出すというか、自分が一番やりたいと思って実現した最初の作品にチャレンジして、今の自分に何ができるのか確かめたいと思っています」と意気込みを語った。

上田慎一郎

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「カメラを止めるな!」公開前に、レーベルへの参加を打診されていたという上田。「当時は商業映画の不自由さも知らずに二つ返事でやりますと言いました。そのあとありがたいことにいろんな商業映画の企画を進めていくんですが、いろんな人の事情が飛び交う中で制作をしていくのがいかに大変かを知りまして。日本映画界で、純度を守って作品を作っていくのが難しいんだなと思いました」と心境を吐露する。レーベル内で発表する監督作「ポプラン」は9月にクランクアップを迎えたといい、「普段はお客さんのことをけっこう考えるタイプだと思うんですけど、今回は自分のしたいことプラスしたくないと思っていたことを試しながら撮った作品。まったくイメージの異なる映画になると思います」と注目ポイントを紹介した。

レーベルの未来について、本広は「ATGのようにたくさんの人に愛される企画になればいいなと思います」と思いを馳せ、押井は「ある程度成功しないとまずいなと思いつつも、監督がやりたいことをやらないと意味がないという葛藤もあります。特に本広くんは言い出しっぺの1人でもあるわけですから、いい形で成功してほしい」と「ビューティフルドリーマー」に期待を寄せる。押井が「そうじゃないと、後が控えてるんだけど、という話になるから」と続けると、本広は「押井さんの脚本ですけどね」とチクリ。押井は「そうなんだけど!」と苦笑し「あとは上田くんみたいな若い監督ががんばってくれないと年寄りはスカッとできないから。しっかり働いて稼いでくんないと困るんだけど」と水を向ける。上田が「がんばります」と背筋を正していると、押井は「年金と一緒ですよ。期待したいなと思います」とあっけらかんと述べ、観客を笑わせた。

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