第42回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)のコンペティション、PFFアワード2020の表彰式が本日9月25日、東京・国立映画アーカイブで行われた。
PFFアワードは佐藤信介、黒沢清、園子温、塚本晋也、李相日ら多数の映画監督を輩出してきた自主製作映画のコンペティション。PFFアワード2020には、480本の応募作の中から17作品が入選している。表彰式には、最終審査員である映画監督の
このたびグランプリに輝いたのは、
準グランプリとなったのは、24歳の寺西涼が監督した「屋根裏の巳已己(みいこ)」。主人公・ショウが繰り返し夢に現れる幼なじみミーコと再会することから怪奇な物語が展開する。齊藤は「完全なる一目惚れでした。監督の中にしかない時間を映画を通じて分けていただいた。すごいフィルムメーカーがいると感銘を受けました」と賛辞を贈る。齊藤の言葉に「刺さってくださったことがとてもうれしいです」と笑顔を見せた寺西は「僕はたぶん、監督としてまだスタート地点にギリギリに立てている段階だと思うので。賞金の使い方も考えながらまた面白い映画を撮っていきたいです」と意欲を述べた。
審査員特別賞は、「死にたい」という苦しみを共有する少女たちを映し出した守田悠人の「頭痛が痛い」、監督の関麻衣子が不安定な父と3人の母親に向き合ったドキュメンタリー「MOTHERS」、野村陽介が監督と主演を兼任し、芸術や宗教観の中で苦悩する美大生の姿を描く「未亡人」が受賞。またエンタテインメント賞(ホリプロ賞)には、千阪拓也による16mmフィルムで撮られた10分の短編「こちら放送室よりトム少佐へ」、映画ファン賞(ぴあニスト賞)にはコラージュを用いたhaienaの「LUGINSKY」、観客賞には今回最年少となる18歳の稲田百音が監督した「アスタースクールデイズ」が選ばれた。
表彰式のあとには、最終審査員たちによる総評も行われた。大森は「わかり合えない他者とどうやって向き合っていくのかというのが、僕の映画作りの原点にあります。今回は“死”というもっともわからないものに関する映画が多かった。あとはやはり自分と違う非対称のものに向き合った映画が多かったので17作品のレベルの高さを感じました」と言及。齊藤は「審査をする中で自分の中で発酵していく作品が多く、個人的にも貴重な時間をいただきました」と振り返り、遠上恵未の「遠上恵未(24)」、小池茅の「フィン」、千阪拓也の「こちら放送室よりトム少佐へ」をピックアップして感想を伝える。そして「グランプリじゃなかった方も大いなるきっかけを持って帰って、次の座標に向かっていってほしいと思います」とエールを贈った。
古厩は「1人ぼっちで作っている映画が多かった」という評価をしつつ、「映画を作るにはコミュニケーションがないといけないんですよ。でも、同時に映画にはどこか不健全で監督の手遊びのような部分も不可分であって。今回観ながらそのことを改めて思い出しました」とコメント。「ものすごく新しい体験をした」という樋口は「映画というものが遠くにあるのではなく、自分の足元から自然と映画になっていく。そんな新しい映画を若い子が作り出してきたという印象を受けました」と若い世代の作品を驚きを持って迎えた。
グランプリ作品「へんしんっ!」は、10月31日に開幕する第33回東京国際映画祭で上映。またPFFアワード2020入選全17作品は、配信プラットフォーム・DOKUSO映画館とuP!!!にて10月31日まで配信される。第42回ぴあフィルムフェスティバルは明日9月25日まで国立映画アーカイブで開催中。
PFFアワード2020受賞結果
グランプリ
石田智哉「へんしんっ!」
準グランプリ
寺西涼「屋根裏の巳已己」
審査員特別賞
関麻衣子「MOTHERS」
守田悠人「頭痛が痛い」
野村陽介「未亡人」
エンタテインメント賞(ホリプロ賞)
千阪拓也「こちら放送室よりトム少佐へ」
映画ファン賞(ぴあニスト賞)
haiena「LUGINSKY」
観客賞
稲田百音「アスタースクールデイズ」
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PFFアワード最高賞は石田智哉の「へんしんっ!」、齊藤工は準グランプリに一目惚れ(写真29枚) https://t.co/c7ZyVlKM54