「
「レディ・バード」「ミッドサマー」の制作スタジオA24と「スイス・アーミー・マン」のシャイナートが再びタッグを組んだ本作は、アメリカの片田舎で起きたある事件の顛末を描くダークコメディ。劇中では、売れないバンド仲間のジーク、アール、ディックがガレージでバカ騒ぎをしていたところ、ある原因によってディックが突然死んでしまう。殺人事件として警察の捜査が進む中、唯一真相を知るジークとアールは彼の死因をひた隠しにし、痕跡を必死でもみ消そうとする。
シャイナートは、
「ファーゴ」は、コーエン兄弟の出身地ミネソタ州ミネアポリスを舞台としたクライムサスペンス。シャイナートは「敬愛するコーエン兄弟が出身地を舞台にして『ファーゴ』を撮っていたから、僕も故郷のアラバマ州を舞台にすることに決めたんだ。脚本家のビリー(・チュー)と『ファーゴ』のことはたくさん話したけど、狭い町の小さなコミュニティの混乱をシニカルさたっぷりに描いているところや、大真面目な登場人物の思いとは逆に話が転がっていくこと、気の抜けたキャラクターたちの造形など、インスパイアされた点は数多くあるよ」と解説し、さらに「南部版ファーゴと呼んでもらってもいいけど、あの作品でさえ起こらなかったことを描いているから驚くと思うよ」と自作への自信をのぞかせる。
そして「ブレイキング・バッド」で描かれるのは、末期の肺がんと宣告された高校の科学教師ウォルターが、ドラッグの製造・販売に手を染める物語。シャイナートは「ウォルターは大切な家族を守りたいがゆえに、家族に言えない悪事を働いてしまうけど、守るどころか家族まで巻き込んでしまう。“人に言えない秘密が周りにどんな影響を与えるか”というテーマは同じなんだ。ジークもウォルターと同じように、家族のためにディックの死をひた隠しにする。だけどやっぱり周囲を巻き込んで、事は悪い方向に進んでいくんだ。まあ、ディックの死を隠したい理由は、家族を守るためだけじゃないけどね」と、自作との相違点を語った。
タランティーノからの影響について、シャイナートは「深刻なシーンにもユーモアを盛り込むという手法だよ。人は切羽詰まった状況に置かれると、その状況を映画に例えたりするだろ? リアリティを持たせるために、彼の作品の要素を入れようと思ったんだ」と述べる。続けて「オープニング後に血にまみれた後部座席を映すのは『レザボア・ドッグス』と同じ構成。その血だらけの車内を清掃するときに『パルプ・フィクション』の掃除屋の話をするのは、具体的なオマージュだ」と例を挙げた。
シャイナートが最後に言及したのは、ハメを外した男たちのドタバタを描くコメディ「ハングオーバー!」シリーズ。「この作品は、大好きな『ハングオーバー!』シリーズへの僕なりのアンサーでもあるんだ。共通点は、いつまでたっても精神的に子供なままの大人たちが、ハメを外してやらかしてしまうこと。そして、結託して秘密を守ること。秘密を抱えた代償や心理的影響、それが大事に発展していくさま、この作品ではよりリアルかつドラマティックに描いたつもりだよ」と話した。
「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」は8月7日に東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか全国で公開。
映画ナタリー @eiga_natalie
「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」、「ファーゴ」やタランティーノの影響とは(コメントあり)
https://t.co/21wmyIz7sK
#A24 https://t.co/bXFmfggml6