2019年7月某日に都内のダイニングバーで撮影されたのは、永田が自身の劇団「おろか」の元メンバー・青山に誘われて参加する飲み会のシーン。機嫌よく話す傲慢な評論家に永田が皮肉をぶつけ、場を凍らせる場面だ。
現場には山崎、青山役の
原作を読んだ際の印象を「『知ってるな、この男女間の感じ』と思った」と振り返る行定。「クリエイターが、自分が一番心を開いている人に当たったり、相手のやることなすこと全部に苛立ったり。相手は自分を支えてくれようとしているのにね。普通の人から見ると、どうしようもない男に見えると思うんです。そしてそんな男を支える女も、ある意味どうしようもない」と述べ、「若いのに自分の才能を信じられない。そのことを認めたくない男と、彼を支えきれなくて壊れていく女の話。そういう物語ですね」と分析する。
そして映画化については「これほど原作と同じにしよう、再現しようと思ったことは、あまりないです」と述懐。「『劇場』ってタイトルですからね、下北沢の小劇場楽園、OFF・OFFシアター、駅前劇場を完全にセットで再現しています。たくさんの小劇場の人たちと会いましたし、彼らの芝居を観て、映画にも出てもらいました」と述べつつ「ただ、映画的な解釈はあります。それは又吉さんも理解したうえでゴーが出ました。小説に書かれていない部分をこっちが解釈していくという作業を通して、プレッシャーは感じていましたね」と明かした。
行定は山崎を「とにかくピュアな男」、松岡を「天才肌なところがある」と評し、「山崎は重ねれば重ねるほどよくなっていくタイプだし、松岡は最初のテイクでとんでもないことをやらかしたりする。だからどこをOKラインとすればいいのか、なかなかわからない(笑)。ある種真逆ではあるんですけど、2人とも感性が素晴らしいんですよ」と称賛。「『ピンクとグレー』を撮っていた頃、菅田将暉に『同時代の俳優では誰が気になってるの?』と聞いたら『山崎賢人ですかね。あいつの1本の映画に対する向き合い方はすごいですよ』と言っていました。この永田という役にも、真正面からちゃんと向き合ってますね」と続ける。
撮影現場を訪れた又吉は、小説とは少し異なる映画のラストシーンを気に入っていたという。行定は「『火花』にしてもそうだけど、自分自身の原体験がもとになっているようなお話だから、映像化されることについて又吉さんは少し抵抗感があったと思うんですよ。でもだからこそ、小説とは違う見せ方を気に入ってくださった。この前も現場にちょっと遊びに来られて『見れてよかったです』とおっしゃってましたね」と話した。
「劇場」は4月17日に全国で公開。
※山崎賢人の「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記
※「劇場」は、新型コロナウイルスによる感染症の拡大を受けて公開延期となりました。最新の情報は公式サイトをご確認ください
リブロ ★ブックサンタ受付中 9/22~12/25★ @libro_jp
【制作現場レポート】山崎賢人はとにかくピュアな男、「劇場」の監督・行定勲が撮影振り返る https://t.co/jCkQoOwbbR
原作:又吉直樹(新潮文庫)