フランス映画「
第72回カンヌ国際映画祭審査員賞に輝き、第92回アカデミー賞国際長編映画賞にもノミネートされている「レ・ミゼラブル」。パリ郊外のモンフェルメイユを舞台にした本作では、犯罪防止班に配属された新人警官ステファンの目線で物語が展開していく。本作が長編デビュー作となる新鋭
映像制作集団の空族は「ラジ・リ監督の生まれ育った無情の街と人への愛情が、混迷を極めるこれからの時代への希望となる」と述べ、細田は「パリはおしゃれなんかじゃない。この映画が描く危険なパリに、ぞくぞくするような真実がある」とコメント。「映画の時制と自分の時制がシンクロする。こんな映画体験はちょっと記憶がない」と語る森は「ラストに僕は希望を持ちたい。無理にでも持ちたい」と文章を締めている。そのほかコメントは下記の通り。
「レ・ミゼラブル」は2月28日より東京・新宿武蔵野館、Bunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国でロードショー。
雨宮処凛(作家・活動家)コメント
ただただ圧倒された。
凶器のような、宝石のような映画だ。
雨宮塔子(フリーキャスター・エッセイスト)コメント
パリ郊外に暮らしてみて5ヶ月。人々のこの心の闇は他人事ではない。
少年の親だったら、警官の妻や恋人だったら…。
個々の登場人物に次第に感情移入していける監督の手腕に、今も悲しみが抜けない。
石川直樹(写真家)コメント
善悪の対立に収斂させず、複雑なものは複雑なまま提示する。その中から生まれる抜き差しならない“抵抗”は、観る者に刺さる。こういう作品を待ち望んでいた。
市毛良枝(俳優)コメント
ずっと親しんできたユゴーの「
尊厳とはなにかと、するどく突きつけられる。
内田樹(神戸女学院大学名誉教授)コメント
パリのバンリュー(郊外)はフランスで最も危険であると同時に最も“先端的”な場所である。
フランス社会の抱える本質的な弱さと希望がともにそこに可視化されているからである。
宇都宮健児(弁護士・反貧困ネットワーク代表世話人)コメント
衝撃的なラストシーンだ。
「友よよく覚えておけ、悪い草も悪い人間もない、育てる者が悪いだけだ」
というヴィクトル・ユゴーの言葉が胸に突きささってくる。
荻上チキ(評論家、TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」パーソナリティ)コメント
小さな侮辱が、大きな暴力につながっていく。
バリケードを作っても、民衆の歌はかき消される。
ラストシーンであなたは、何を願うだろうか。
小熊英二(社会学者)コメント
「移民」「差別」「イスラム原理主義」。そんなニュースの見出しを、観る以前の感触では読めなくなる。
世界の断面を鮮烈にデフォルメした、まさに映画にしかできない荒業。
空族(映像制作集団)コメント
子どもたちは悪を働かない。いつだって腐ったおとなたちへの怒りだけがある。
スプツニ子!(アーティスト / 東京藝術大学准教授)コメント
移民や貧困状況にある声が届きにくい人々に、
社会や政治が無関心でいる事で起こる悲劇を少しでも減らす為に、私たちは他人に共感する事を忘れてはならない。
この映画は私にそれを思い出させてくれる。
ブレイディみかこ(ライター)コメント
冒頭の歓喜とタイトルのアイロニーに震えた。
本作は答えなど与えてくれない。
ただ問いだけが火炎瓶のように投げられる。
細田守(映画監督)コメント
パリはおしゃれなんかじゃない。この映画が描く危険なパリに、ぞくぞくするような真実がある。
望月優大(ライター/ニッポン複雑紀行編集長)コメント
ラジ・リが描く人々は、互いにどれだけ違ったとしても、同じ一つのものを求めているように思えた。
それは、複雑に折り重なる秩序維持と相互監視の装置、その片隅に生まれては消えていく自由だ。
森達也(作家・映画監督・明治大学特任教授)コメント
映画の時制と自分の時制がシンクロする。こんな映画体験はちょっと記憶がない。
根っからの悪人など一人もいない。でも組織や集団に埋没することで人は変わる。
そしてこれ以上ないほどにミゼラブルな事態が起きる。
ラストに僕は希望を持ちたい。無理にでも持ちたい。
安田菜津紀(フォトジャーナリスト)コメント
この映画に、どんな言葉を添えても安易なものに思えてしまう。
それほどまでに、圧倒される。
多様とは、権力とは、憎しみとは、居場所とは…あらゆる問いがここに凝縮されている。
森達也(映画監督・作家) @MoriTatsuyaInfo
監督したラジ・リはドキュメンタリー出身で本作が長編デビュー作。その意味でも興味深い。
細田守ら「レ・ミゼラブル」にコメント寄稿、森達也「ラストに僕は希望を持ちたい」 https://t.co/4uitO6dvEF