「パッチギ!」「黄金を抱いて翔べ」などを手がけてきた
物語の舞台は戦後日本。敗戦直後の動乱期から高度経済成長期、オイルショック、バブルの狂騒と崩壊まで激しく変転を続けた昭和の時代を生き抜いたヤクザ者たちの群像劇が描かれる。主人公は極貧ゆえに社会から頭を抑え付けられ、飢えや冷たいまなざしにさらされながらも、何にも頼らずまっすぐ生きてきた男。やがて彼は同じような境遇のはみ出し者たちを束ね、命懸けで裏社会を駆け上がっていく。
物語の主役のアウトサイダーを演じるのは
社会のあぶれ者、はみ出し者たちの物語を描き続けてきた井筒。「本作ではアウトロー社会という、世間の良識から排除されたネガ画像をあえて描くことで、僕なりの昭和史を逆照射してみたいという思いもありました。ことの是非を語るのではなく、ただ、こんなふうに無頼な生き方を通した男たちがいたということを、現代の若者に見せたいと思ったんです」とコメントをつづっている。
※「無頼」はR15+指定作品
※「無頼」は、新型コロナウイルスによる感染症の拡大を受けて公開延期となりました。最新の情報は公式サイトをご確認ください。
井筒和幸 コメント
改めて振り返ってみると、社会のあぶれ者、はみ出し者ばかり描いてきました。デビュー作の「ガキ帝国」では1968年、大阪ミナミを闊歩する少年院上がりの不良少年たちを。「犬死にせしもの」では終戦直後、陸軍の復員兵上がりの無法者たちを。「岸和田少年愚連隊」では1976年、大阪の田舎町にくすぶる格差教育の落ちこぼれの不良少年どもを。「パッチギ!」では1968年、京都ゼロ番地に生きる在日朝鮮人の高校生たちを。「ヒーローショー」では2010年、都市部を彷徨うまさに平成の「失われた世代」のはぐれ者たちを。そして「黄金を抱いて翔べ」では金塊強奪の夢に命を賭けた虚無的な流れ者たちを──。時代や設定こそ違えど、登場人物たちは誰もが社会から無用とされ、貧困と差別、汚辱に暴力で抗ってきた「寄る辺なき者たち」だと言えます。今回の「無頼」でもやはりスクリーンを彩るのは、欲望の昭和を徒手空拳で生き抜いた、文字どおり無頼の徒たちです。
時代は昭和から平成、令和へと移っても、貧困や差別、孤立は何も変わっていません。本作ではアウトロー社会という、世間の良識から排除されたネガ画像をあえて描くことで、僕なりの昭和史を逆照射してみたいという思いもありました。ことの是非を語るのではなく、ただ、こんなふうに無頼な生き方を通した男たちがいたということを、現代の若者に見せたいと思ったんです。そして、自分を抑えつけるあらゆる抑圧に対して一歩も引かなかった彼らの人生を通じて、“くじけるな、寄る辺なきこの世界を生き抜け”と励ましてあげたい。それがこのシャシンに込めた、映画作家としての僕の願いです。
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