ペドロ・コスタと黒沢清のファンタジーとは

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ペドロ・コスタ黒沢清が12月3日、東京のアンスティチュ・フランセ東京で対談を行った。

左から黒沢清、ペドロ・コスタ。

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左から黒沢清、ペドロ・コスタ。

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コスタの初期作「」「溶岩の家」の上映後に実施されたトークイベント。この日「溶岩の家」を初めて観たという黒沢は「大変面白かった。ワンカットごとにワクワクする何かが含まれていて、次は何が起こるんだろう?と常に期待させる映画」と称賛し、「先日のフィルメックスで新作『ヴィタリナ(仮題)』を観て、『血』などほかの作品もいくつか観ているので、コスタ監督はこういう語り口なのかと思っていることはありました。でも『溶岩の家』を観て、全然違うじゃないかと。用意していたことが完全に崩れ去りました(笑)」と率直に語った。コスタは「溶岩の家」の制作を振り返りながら「私はホラーが大好きで。ジャック・ターナーの『私はゾンビと歩いた!』の影響があります」と明かす。撮影地の島には電気がなかったと言い「発電機を持って、電気技師も一緒に島へ行きました」と回想した。

黒沢は「溶岩の家」の色彩の魅力にも言及。「コスタ監督の映画とは思えないくらい明るい。太陽が降り注いでいて、カメラも奔放に動く。ドラマチックなロングショットもありますよね」と話すと、コスタは「火山の中にある村が舞台となっていますが、溶岩の塊など、自然そのものが持っている色がとても印象的だったんです。これだけ色鮮やかなら、白黒にしたりせず現実に従ったほうがいいと考えました」と意図を説明する。また本作を「自分が何に向いているのか、何が好きなのかを理解するために必要だった」と位置付け、「冒険映画を撮るような映画監督ではないことを自覚できました(笑)。好みは台所や廊下、寝室ということもね」と顔をほころばせた。

「ヴィタリナ(仮題)」

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1年掛けて制作したという「ヴィタリナ」。黒沢が「同業者として気になるのですが、1年を掛けて映画を作るというのはどんな日々なんでしょうか?」と質問すると、コスタは「毎日制作しているわけではなく、ほかのことと並行して進めています。数カ月掛けることで、その映画が何になるかをやっと理解でき、全体像としての脚本が見えてきます」と回答した。さらにコスタは「ヴィタリナ」にプロの俳優が参加しておらず、出演者が演技の素人であることに触れながら「撮影にはリスクがあります。プロの俳優ではないから突然いなくなることもあり得る。(撮影に)来てくれるだろうかという不安はありますが、一方で深い信頼関係があるからこそ映画を作れています」と裏側を語る。

続いてMCが「溶岩の家」のイネシュ・デ・メデイロシュと、黒沢の監督作「旅のおわり世界のはじまり」の前田敦子を話題に挙げ、「彼女たちが演じたキャラクターはどうして未知の世界へ体を投げ出すのか」と尋ねる。黒沢は「どうしてですかね。理屈で言うのは難しいですが、苦労しながらも何かを見つけて強くなっていくという人物を想像したときに、男性は思い浮かばないんです。自分が男だから、女性に対する過剰な憧れがあるのかもしれない。歳を取った男には到底成し遂げられないようなことができてしまうんではないかという幻想ですかね」と真摯に考えを伝える。それを聞いたコスタは「賛成です。私たちのファンタジーだと思います」とにこやかにうなずいた。

「ヴィタリナ」は2020年夏に東京・ユーロスペースで公開。黒沢が監督を務め、蒼井優が主演するドラマ「スパイの妻」は2020年春にNHK BS8Kで放送される。

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tAk @mifu75

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