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日本独自の文化である活動弁士は、まだ映画が“活動写真”と呼ばれていた頃に始まり、映画の上映中に傍らでその内容を解説した職業のこと。周防正行が監督、成田凌が主演を務めた本作では、サイレント映画が主流だった大正時代を舞台に、活動弁士を目指す青年・俊太郎の恋や奮闘がコミカルに描かれる。
現代における活動弁士の第一人者として活躍し、映画の監修も行った澤登は「活動写真の頃はお客さんが映画を体感できた時代。楽士の生演奏と弁士のしゃべりで映画を体の中に浸透させていった。そういう情景が描かれています」と本作をアピールする。成田の活弁指導を行った坂本は「音感もいいし、稽古も熱心。私がちょっと案内をしただけで、自分の語りを早々と獲得していた」と称賛。スターを気取る弁士役の高良健吾を指導した片岡は「稽古に行くのが憂鬱だった」と切り出し、その真意を「高良さんは稽古のたびにどんどん覚えてくる。次は何を教えたらいいかわからない。僕が5年で会得した技術を“健吾は5分”」と冗談交じりに明かした。
銀シャリの橋本直と鰻和弘は映画の感想を「もう見入ってしまった」「弁士は漫才より崇高な仕事」と口々にコメントする。この日は登壇陣が2分のメイキング映像に乗せてオリジナルの活弁を披露することになっており、鰻は「何か映像を観て話すことってあまりない……」と不安を口にしつつ、「ただ、ちょっといい出来になったんじゃないかなと。期待していいと思います!」となぜか自信満々。橋本はこの態度に釘を差しつつ、「弁士のニュースターが誕生するかもしれません」と期待を込めた。
活弁の題材となるのは、俊太郎が黒島結菜演じる初恋相手の梅子と久々に再会し、彼女の胸に付いた小さなクモを取り払ってあげる本編シーンと、メイキング映像を組み合わせたもの。メイキングには周防の演出のもと、黒島がクモを嫌がる素振りを練習する様子などが収録された。
トップバッターは“ヘリウムボイス”と呼ばれる声に大正琴とピアノの弾き語りで独自の芸風を確立した山崎。彼女は「私の名前は“黒黒島結菜”」と切り出し、黒島を大胆にアレンジした架空の人物設定でモノローグを進めていく。自ら「名女優」「かわいいでしょ」「あたしだけを見て!」と語るなど自信たっぷりの若手女優を作り上げ、クモを嫌がる場面では「お尻ふーりふり」とフェロモンをまきちらす。しかし本編では、嫌がる素振りがカットされていたため「監督! どうなってんのよ!」と毒づくオチがついた。
続く坂本は「時は2018年某月某日。冷え込み厳しきロケーションの夜。若きスターを取り囲む百戦錬磨のこれは周防組」とナレーション形式で正統派の活弁を披露。終盤は徐々にふざけ出し、成田と黒島が現場にいた坂本を愚痴る内容となった。
片岡は2人を映画を観に行くデート中の学生カップルに見立てた活弁を披露。しかしなぜか映画の撮影に巻き込まれ、芝居に本気になった黒島が「今日から女優になることにしたから」とデートを中断しようとするドタバタ風味の1編に。また澤登はメイキングを坂本龍馬と妻おりょうの新婚旅行を描いた架空の映画「おりょう馬の青春」の撮影風景として説明。男女の声色を自在に操り、観客を魅了した。
締めを飾る銀シャリの活弁は、鰻をメインのしゃべり手に据え、橋本は後ろでツッコミをささやく形に。「観たままをしっかりと伝える活弁」と前置きし、「ただいまの気温は草木も凍るマイナス1.5℃。夜はかなり冷え込みます」とスタートさせた。池に浮くどんぐりは「どんぐりは凍っています」と説明。その後は撮影隊が寒さを気付かい、成田と黒島も「寒い」しか言わない、ひたすら気温の話をする内容で観客の笑いを誘う。成田がクモを取ってあげる場面は「ここのツボを押すと体があったまるんだよ」と自由に展開。鰻は「さらに冷え込みます」と続け、人々はカイロを貼るか貼らないかのやり取りに終始。ラストはクモを新型のカイロに例え、オリジナルの世界観を見せつけた。
「カツベン!」は12月13日より全国ロードショー。
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