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本作は内向的な文学少年・春日高男と、彼につきまとうクラスの変わり者・仲村佐和の奇妙な“共犯関係”を描いた変態狂騒劇。伊藤健太郎が春日、玉城が仲村を演じたほか、飯豊まりえ、秋田汐梨がキャストに名を連ねている。まだ原作マンガが連載中であった2013年6月の段階で、「惡の華」実写映画の監督に「井口昇監督はどうでしょう?」とTwitterで発言していた町山。この日は町山がMCを務め、映画や原作マンガの制作秘話についてフリートークが展開された。
もともと井口作品のファンだったという押見は「19歳のときに井口監督の『クルシメさん』を観ました。すごい感銘を受けて感動した。設定は突飛だけど中身は普遍的。自分の悩みをこういうふうに形にすればいいんだと思って、そこからファンになりました」と述懐。原作マンガを描くにあたり、井口の「わびしゃび」「恋する幼虫」といった作品群に影響を受けたという。
その後、井口は2011年の段階で押見に「惡の華」映画化を直談判。それから紆余曲折あり、ほかの監督の名前が挙がったこともあったそうだが、押見は「井口監督以外はすべてお断りしていました」と振り返る。そして「井口監督だったら絶対に間違いないと思っていた。テーマ的にも、キャラクターの仕草といったフィジカルな部分も原作通り」と改めて映画化への感慨を語った。
町山は中学生のセックスを描く原作の内容から、映画化に苦労もあったのではと推察。この発言に「意外とスイっといけましたね」と笑う井口は「なるべく原作に忠実に。中学生の設定は変えたくなかった。そうでないと意味が変わってしまう」と中学生の思春期を描くことにこだわったことに触れる。また企画が通った理由として、邦画界の変化を挙げ「実現できたのは、キラキラ映画が主流だった頃と状況が変わってきたからだと思います。SNSでは『なんで今頃?』という声もあるんですが、ようやく機が熟した。以前はメジャー映画としてこの内容は危険と思われる風潮があったんじゃないか」と分析した。
撮影は押見の地元である群馬・桐生市の全面協力のもと行われている。桐生での撮影を見学したという押見は「地元の方たちに『お前らクソムシだ!』と言っていて……」といたたまれない気持ちになった心境を告白。井口も「心が痛かった。『死ね死ね死ね』とか言ってますからね(笑)。でも桐生市の方々がすごい協力的で、逆に喜んでいただけてるみたいです」と振り返る。
ここで町山の呼び込みにより玉城が登壇すると、彼女の登場を知らされていなかった井口と押見は驚きの様子。玉城は町山の要望で「クソムシが」と笑顔を振りまき、「家からそのまま来ました! 今日はオール私服でメイクも自分です」と挨拶する。押見は玉城の演技について「完全に恋してしまいました。まったく(原作との)ズレを感じなかった。仲村さんのシーンすべてが最高。改めてマンガを読み直すと『なんてショボいんだ。マンガだめじゃん』と思ってしまいました」と絶賛した。
井口は「心から『クソムシが!』と言ってもらいました」と玉城の演技を称賛しつつ、撮影現場での演出について「まず僕が玉城さんの吐く仲村の言葉を浴びてみようと思って。それでグッと来たらOKを出していました」と明かす。特に仲村の「うんち」というセリフは何度も練習したそうで、玉城は「『ち』をもうちょっと強く、とか言われました」と笑い、井口も「『ち』をとにかくシャープに、どう考えて聞いても『うんち』って聞こえるように」とこだわりを語った。井口曰く、打ち合わせのときに玉城は「私に言えない日本語はありません」と宣言していたという。
最後に井口が「これからはあまりキラキラしてない映画が流行るかも」と今後の映画界の動向を予想すると、町山は「この映画もある意味、キラキラしてますよ。特に玉城さんが」と反応。玉城も「そうですよ。ちょっとずれたキラキラ。でもこっちが本物のキラキラ映画です」と述べ、イベントの幕を締めくくった。
「惡の華」は、9月27日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。
※記事初出時、写真のキャプションに誤りがありました。お詫びして訂正します。
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リンク
- 「惡の華」公式サイト
- 「惡の華」予告編
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早坂 伸 Shin Hayasaka @shin_hayasaka
『惡の華』試写会行きたかった。町山さんと井口昇監督、押見修造氏と玉城ティナさん。DVDの特典映像として撮影したかったな。。 https://t.co/dHMLjUHXCW