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オダギリが長編初監督を務めた本作は、1人の少女との出会いを機に人生を狂わせていく船頭・トイチの物語。映画製作にもともと興味を持っていたというオダギリは、「俳優という立場を利用する形で甘えて映画を撮るのはあまりいいことではないと思っていたんです」とメガホンを取ってこなかった理由を明かす。にもかかわらず本作に挑んだ経緯について「健康診断を受けたときにあまりよくない結果が出まして……」と吐露。「大げさな話として、残された自分の時間を改めて考えたんです。その時間に何をするべきか考えたら、自分は本当は映画を撮りたかったのに、変なプライドでやりたい気持ちを閉じこめていたなと思って」と真剣に語った。
撮影監督を務めたクリストファー・ドイルについて質問されると、オダギリは「僕がやりたいことや、映画を通して表現したかったことをすべてクリスが実現してくれたと思っている」と称賛。「『ジョーはとにかく俳優に芝居を付けろ、アートの部分や画作りを考えろ』『お前がやりたいことを全部教えてくれ。それをどうやって実現するかを考えるのが俺たちの仕事だから』と最初に言われましたね」と振り返る。そして「クリスはただの酔っぱらいじゃないなと思いました」と愛ある一言を付け足して会場の笑いを誘った。
本作の音楽について聞かれた際、中学生の頃にドラムを始めたことを明かしたオダギリ。「曲を作ることも大好きで、いまだにやっています。どこかでミュージシャンへの憧れを持っている俳優なんですよね。なので、音楽や音に関しては人一倍こだわりを持っているとは思います」と述べ、「5.1chサラウンドをいかに有効的に使うか考えて作っていったので、劇場で観ないとこのよさは伝わらないですね」と断言する。また、「たぶんネット配信もあると思うんですけど、ネットでは観なくていいです」とほほえみ、その徹底したこだわりぶりを垣間見せた。
「尊敬する先輩方」と表現する柄本明や橋爪功たちへの演出については「芝居を付けるというのは避けました。ちょっと生意気かなと思って」と述懐。「俳優は役を深めることが仕事なので、いちいち監督が説明するのは野暮なことだと思ってるんです」と続け、「信頼して呼んだ方々に、『その感情は違います』とか『ニュアンスが違います』とかというのは……野暮です」と繰り返す。また自身が役者だからこそ役者の気持ちがわかると前置きし、「どうやったら心の底から湧き上がるものを引き出せるのかがわかります」と演出への自信をのぞかせていた。
「ある船頭の話」は9月13日に東京・新宿武蔵野館ほか全国で公開。
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オダギリジョーの映画作品
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三沢貴志 @miswtk4
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