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本作は“ボサノヴァの神様”と称されながら、2008年のライブを最後に公の場から姿を消したブラジルのミュージシャン、ジョアン・ジルベルトの行方を追うドキュメンタリー。ドイツ人ジャーナリストのマーク・フィッシャーが著した「オバララ ジョアン・ジルベルトを探して」に強く共鳴したガショが、フィッシャーの遺志を継ぎジルベルトゆかりの人々や土地を訪ね歩くさまが捉えられている。
本作以外にもブラジル音楽にまつわるドキュメンタリーを製作してきたガショ。今回ジルベルトを取り上げた理由を「ブラジル音楽の豊潤さ、素晴らしさを説明するにはこの人しかいないんじゃないかと思いました」と話す。ブラジルにおける本作以前の取材を振り返り、「会う人会う人に『ジョアン・ジルベルトに会わないのか?』と言われました。彼を描かないとブラジル音楽は語れないと実感しましたね」と述べた。ブラジル音楽を取り扱うCDショップを営む伊藤は、ガショがブラジル・バイーア出身のミュージシャンを題材にし続ける理由を尋ねる。ガショは「バイーアは多くのミュージシャンの出身地。サンバ発祥の地であり、アフリカからの移民が住んだ歴史的に重要な土地でもあります」と前置きをし、「奴隷であった黒人の方々がサンバを生み出していった、ブラジル音楽を語るうえで非常に重要なところなんです」と歴史との関連性も交えて答えた。
ガショは取材を通してジルベルトの2番目の妻・ミウシャと親しくなったと言い、ミウシャと会っている最中にジルベルトからミウシャ宛に電話がきたこともあったと明かす。「僕の目の前で話してるんです。本当に身近に存在してるんだと思わされました。私にとって神様のような人で、音楽を語るうえでこれほど完璧な人はいない。1粒の種をまいて巨大な木に育てるような奇跡の力を持ってる人です」と敬意を表した。
ボサノヴァについては「自分と向き合う音楽だと考えています」とコメント。本作の製作をするきっかけとなった本を著したフィッシャーを挙げ、「彼はボサノヴァを追いかける旅の中で自分を見つけた。残念ながら本が出版される前に自殺してしまったらしいが、それも関係しているかもしれない」と述懐した。ジルベルトのステージを体験したことがないというガショに対し、伊藤が「その事実がむしろ映画を作るパワーになったのでは?」と投げかけると「どうかな……? 僕はドビュッシーもモーツァルトも大好きだけど、ステージで観たことはもちろんないよ!」と返し会場の笑いを誘う。「どうやって会いに行くかというプロセスのシーンを映画に盛り込んでいます。ボサノヴァが誕生したという伝説のバスルームも映っているので、私の旅を楽しんでください」と笑顔を見せた。
「ジョアン・ジルベルトを探して」は、8月24日より東京・新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国で順次ロードショー。なお、ジルベルトは2019年7月6日に死去したことが報じられている。
ジョルジュ・ガショの映画作品
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リンク
- 「ジョアン・ジルベルトを探して」公式サイト
- 「ジョアン・ジルベルトを探して」 (@joaosagashite) | Twitter
- 「ジョアン・ジルベルトを探して」予告編
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椿原 敦一郎 @teamokuyama
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