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黒沢がオリジナル脚本を執筆し、ウズベキスタンで1カ月にわたるオールロケ撮影に挑んだ本作。“伝説の怪魚”を探すためウズベキスタンを訪れたテレビ番組のリポーター・葉子の成長が描かれる。葉子を前田が演じ、番組クルーでカメラマンの岩尾に加瀬、ADの佐々木に柄本が扮した。先日ひざの靭帯を負傷したと報じられていた前田は、MCにけがの経過を心配されると「いい感じなんですけど、ご迷惑をおかけしました」と苦笑する。ウズベキスタンの印象については「実は名前も知らなかったんですが、行ってみたらすべてが楽しくて、いい思い出しかありません」と楽し気に振り返った。
黒沢は完成作を観た知人の感想を紹介。「20代の頃の作品に似ていると言われ、半分はすごくうれしく、半分はショックでした(笑)。ですから、新人監督のような気持ちでここに立っています。新人なのにこんなにがんばっているんだと寛容な気持ちで観てください」と呼びかけ、観客の笑いを誘う。脚本執筆時から、葉子に前田を重ね合わせていたと明かし「僕は通常、最初から俳優を決めて本を書くことはめったにないんですが、最初の段階から『できたら前田さんに』と思っていました。歌も歌ってもらおうと思っていたので、断られたらどうしようと思うくらい、前田さんでイメージしちゃっていました」と述べた。
これまでの黒沢作品では「変な役ばっかりだった」という加瀬は、「最初は監督が書かれた脚本じゃないと思うぐらいいつもと違っていて、自分の役も初めて真っ当な人で(笑)。今までの監督の作品とは違う印象を受けました」と述懐。黒沢は「これまでそんなに変でしたかね?」と首をひねりながら「いろんな人が出てくる映画ですが、その中でも一番真っ当な人を演じてもらいました」と補足した。
黒沢組初参加となった柄本は、MCから「ご家族が全員黒沢監督のファンだそうですが、オファーを受けて一番初めにどなたにご報告されましたか?」と質問されると、兄・柄本佑とのあるエピソードを明かす。「兄ちゃんの家に行って、かばんから台本を出して読んで、兄ちゃんの前にポンと出すんです。すると兄ちゃんが『え……、黒沢監督?』って言ってから向こうも台本を出してきて、そしたら僕が『あ、荒井(晴彦)監督?』って言う。この現場やりますっていう名刺バトルみたいなことをちょくちょくやっています」と身振りを交えながら説明すると、会場から笑い声が上がった。
続けてMCから、前田が現地の男性に求婚されたことを明かされると、観客から驚きの声が上がる。前田は「みんなでごはんを食べているときに、1人で外に出たらおじさんに話しかけられたんですけど、何を言っているのかわからなかったので(言葉のわかる)人を呼んだんです。そしたら『結婚してくださいって言ってるよ』って。でも女性のキャストはけっこうみんな求婚されていましたよ!」と語った。黒沢は「その現場見ました。でもそのときいろんなことに気を取られていたので、そういうこともあるんだなと自然に受け止めていました」とあっさり答える。加瀬は「僕は無責任に『いいんじゃない?』って(笑)」と語り、柄本も「絡まれているなあと思いながら席を立たずに見てました。まあ大丈夫かなって」と苦笑し、男性陣の反応に前田は「厳しい世界だな、明日からがんばろう……と思いました」としょんぼりしていた。
「旅のおわり世界のはじまり」は、6月14日より東京・テアトル新宿、ユーロスペースほか全国でロードショー。
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