バブル景気の時代に“アダルトビデオの帝王”と称され、これまでに3000本以上のAVを制作、そして前科7犯、借金50億円、米国司法当局から懲役370年を求刑されるなど、破天荒なエピソードにこと欠かない村西。その半生を記した本橋信宏によるノンフィクション「全裸監督 村西とおる伝」をドラマ化した本作では、村西を中心に創成期のAV業界とそこに生きる人々の姿が事実にもとづいて描かれる。
オファーを受けた際に本書を読んだという山田は「とても面白い、興味深い人生だと思いました」と村西の第一印象を明かす。その過激な内容から「地上波のドラマはもちろん、映画でもなかなか難しい題材。Netflixでこれを映像化するなら、かなり刺激的な作品にできる」と考え、出演を決めた。
2018年12月、川崎のとある体育館に設営されていたのは、日本最大の歓楽街として知られる歌舞伎町の一角。村西が設立したビデオ会社がかつて事務所を構えていた場所で、現場には1980年代当時の雰囲気が漂う。卑猥な言葉の看板やきらびやかなネオンが至るところから顔を出し、ノーパン喫茶、トルコ風呂、のぞき部屋など昭和の匂いを感じさせる風俗店が立ち並ぶ。濡れた路面やポイ捨てされた吸い殻、ボロボロになったチラシなど、セットの汚しも徹底されていた。
「自分の知らないものを作りたくない」とセットだけでなく作品作り全体へのこだわりを語るのは、同時代を知る1967年生まれの総監督・
この日撮影されていたのは、村西の運命を変え、やがて2人で社会の常識をもひっくり返すことになる恵美との初対面シーンだ。母親の過剰な束縛に本来の自分を押し殺してきた女子大生の恵美は、のちに黒木香という名で一世を風靡した人物。そんな恵美を、「世界でいちばん長い写真」「一週間フレンズ。」などに出演してきた新星・
撮影には山田と森田のほか、
「昭和」が舞台でありながら、演じるうえで生きる時代のことはまったく意識していないと断言する山田。「その人の行動や思考はすでに台本上にあるもの。ここに書かれている村西とおるをそのまま演じれば、勝手に時代感やエネルギッシュな雰囲気は付いて来る。『昭和だからこういうふうに演じる』とは考えてないですね」と役作りについて明かす。さらに「村西さんのいろんなことがあった人生の中で、描けるのはごくわずか。だから展開がすごく早い。警察に捕まったと思ったら、数シーン後にはもう出所していたり。演じる側としては、波が激しくて大変です」と苦労もにじませた。
かつて英会話教材やテレビゲームの営業マンとして働き、財を成した時期もある村西。本人とも撮影前に会ったという山田は「しゃべる相手と話す内容で変わる方。常にお芝居をされている印象だった。僕も、例えば何かモノを売るときにバチっと切り替わる部分は意識して演じています」と分析しながらも、「ご本人はそこまで意識せず、この脚本で生きている村西さんを僕なりに解釈しています」と続けた。
村西の相棒的存在・荒井トシ役の満島と、村西が裏社会で躍進するきっかけを作った出版社社長・川田研二役の玉山は“表現者”としての村西に注目。「毎日生きてるって感じで、目がギラギラしてます」と冗談交じりに述べる満島は「モノを作るときの、この時代の人間の熱量。カメラが回ってる回ってないは関係なく、生活がエネルギッシュになって、ずっと高揚しています」と興奮気味だ。
一方の玉山は「日本が世界に誇る輸出品の1つはアダルトビデオ」というプロデューサーの言葉を紹介しながら、「今の作り手の多くが感じてしまっている、ここから先、この一線は越えてはいけないという、はがゆい思い。でも村西さんの生き方は、その背中をドンっと押してくれる。少し強すぎるくらいに(笑)。でもそれが僕たちの閉塞感を打破してくれるし、好奇心を掻き立ててくれる」と力説した。
「全裸監督」は8月8日よりNetflixにて全世界独占配信。「ニセコイ」の河合勇人、「獣道」の内田英治も監督として参加している。
※動画は現在非公開です。
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