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宮城・石巻が舞台の本作は、人生につまずき、どん底まで落ちた郁男を主人公とした物語。恋人の故郷である石巻に住み始めた郁男を香取が演じたほか、恋人である亜弓の娘・美波に恒松、美波の祖父で震災によって妻を亡くした勝美に吉澤、近隣に住む小野寺にリリーが扮している。
香取はまず「映画『凪待ち』が完成しまして、6月に公開されることになりました。すごくうれしく思っています。1人でも多くの方に観てほしい」と完成を報告。2018年6月から8月にかけて、石巻を中心に行われた撮影を「つらかったですねえ……」と言葉を絞り出すように述懐し、「人の優しさはこんなに痛いものなのかと思った撮影期間でした。優しい言葉をかけられれば、かけられるほどふがいなさを感じました。そんな時間でした」としみじみ語る。
現在20歳の恒松にとって、「凪待ち」は10代最後に撮影した作品となった。香取との共演を「私にとってはスター。そんな方とご一緒できるのが本当にうれしかった」と振り返りながら、「明るくて優しいお兄ちゃんのような、誰に対しても分け隔てなく接してくださる素敵な方。本当にいやすかった現場でした」と笑顔を振りまく。横の香取も「もっと言ってください」と頬をゆるませ、恒松との共演シーンについては「ちょっとホッとする瞬間」と位置付ける。そして「娘のようで友達のようでもありました。ほかの人の前では見せない郁男の顔を見せてます」と明かした。
香取がパーソナリティを務めるBayFMのラジオ番組「ShinTsuyo POWER SPLASH」で、20年以上前に構成作家をしていたリリーが、「最初は裏方としてお会いしていた香取さん。映画で接するのが申し訳ないというか照れくさい」と打ち明ける一幕も。「やっぱり『構成のリリーさんですよね?』という目があるわけですよ」とリリーが口にすると、香取はすかさず「ないですよ!」と笑いながら否定した。当時ラジオドラマをやっていた香取の様子を、リリーは「お忙しい中、初見の台本をその場で読みながら役の雰囲気を瞬時にまとうんです。本当にすごかった」と懐かしむ。さらに「20年以上経ち、『凪待ち』で改めて香取慎吾という人のすごさを目の当たりにした気分です。色っぽくて、毎日びっくりしていました」と称賛し、吉澤も「とてもナチュラルでいいなあと驚きました」とたたえた。
白石はこれまでの監督作を「エンタテインメント」と位置付け、「凪待ち」に関しては「暴力描写やえぐさはそこまで多くない。心の救済、そういったものを人間ドラマとして描きたかった。僕にとっても新しい挑戦の映画です」とコメント。以前企画していた作品で主演に香取の起用を考えていたそうだが、企画自体が流れてしまい、「凪待ち」で初タッグが実現した。白石は「初日の撮影からゾクゾクしっぱなし。それを通り越して、いちいち笑けてしまうぐらい香取さんがいい」と絶賛し、郁男がお金を借りる劇中シーンに言及する。「香取さんが生活に困って人からお金を借りることはそんなにないはず(笑)。でもその借りたあとの『すいません……』という言い方が、本当にどこかで見たことのあるリアリティ。芝居の作り方や色気、存在感が役所(広司)さんとか、それぐらいのレベルでした」と続けた。
香取は「今まで見たことのない香取慎吾が見れるかもしれない」と自身の新境地を保証しつつ、「でも誰もが狂気的な部分を持っている。香取慎吾として突拍子もないこと、新しいことをやったというより、自分の中では(人間の)すごく好きな部分をやっと演じることができたという思いが強い」と手応えを語る。マスコミからの「自分の中の狂気が監督に引き出されてしまった?」という質問に同意しつつ「今このタイミングということが、自分にとってありがたい」と話す場面も。そして最後に「今の石巻と郁男という再生しなければいけなくなった人間の姿が映っています。みんながみんな前向きになれることはないと思います。でも生きている限り、なんとか前を向いていないといけないときがある。そんな男の姿に、少しでも自分も前に進んでみようかと思ってくれる方がいてくれるといいな、と思います」と作品に込めた思いを強調した。
「凪待ち」は6月より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。脚本を手がけた加藤正人が自ら執筆した小説が4月27日に発売される。
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