中島美嘉の同名曲を映像化した本作は、ガラス工芸家志望の青年・悠輔と、余命宣告を受けた女性・美雪の期間限定の恋を描くラブストーリー。本編の約半分がフィンランドで撮影されており、2018年2月と6月の2度にわたってロケが行われた。
“日本から一番近いヨーロッパの都市”とも呼ばれるヘルシンキは、フィンエアー直行便で約9時間30分の距離。ロケハンも含めて6度以上もヘルシンキを訪れている橋本は当初、行き交う車が歩行者を優先してくれることに驚いたそうで「なんて紳士的な人々なんだと思いました。日本人の若い女性が1人で旅行に来ても安全な街という意味で、美雪がここにやってくるのもイメージしやすかった」と振り返る。
冬には、20世紀初頭のアールヌーヴォー建築が印象的なヴィンテージホテル「グロ・ホテル・アート」にて撮影を実施。物語の後半、夏にヘルシンキ旅行へやって来た2人が同ホテルに宿泊する場面だが、時系列に反してクランクインの約3日後に撮影することとなった。メインロビーにある階段を見た橋本たちが「ここから中条さんがきれいな格好で降りてきたらいいよね」と考えたことから、ドレスアップして降りてきた美雪に悠輔が目を奪われるシーンが生み出された。同シーンは「ローマの休日」でオードリー・ヘプバーンが演じたアン王女をイメージしたそう。中学時代はレンタルビデオ店のクラシックコーナーの常連で、自分にとってのアイドルはヘプバーンやグレース・ケリーだったという橋本は「中条さんとも、本作とヘプバーン主演の『昼下りの情事』は“嘘から始まった恋が本物になる”という意味では似ていると話していました」と明かした。
同ホテルメイン棟2階の廊下では、観光を楽しんだ2人が、別々の部屋に戻っていくシーンを撮影。別れ惜しい悠輔は美雪の部屋をノックしようと扉の前で躊躇するのだが、実はこの描写は脚本にはなかったもの。ヘルシンキでの2人の雰囲気を見て、橋本が追加したくなった場面だという。出会いのシーンよりも先に撮影することとなった同場面に関して橋本は「2人の思いが強くなっているが、お互いに口に出せないという、無言の芝居が多い重要な部分。お二人がすごく集中してくれたので撮ることができました。いきなり冬のフィンランドに放り込まれたことが『ここまで来たらやるしかない』という思いにさせてくれたのかも」と回想した。美雪が泊まった部屋は現在使われていないが、悠輔が宿泊した部屋“401”は、一般客も利用可能だ。
そして夏のロケでは、2人のヘルシンキ旅行のシーンの数々を撮影。橋本が「美雪と悠輔、2人の人生で一番美しい思い出を描きたかったので、フィンランドで一番美しい場所を選んだ」と語る通り、ヘルシンキの名所を数多く巡っている。2人が初めて手をつなぐシーンは、ヘルシンキでもっとも歴史ある通り「トリ・クオーター」、ドレスアップした2人が夜の公園でデートするシーンは、水面に映る街の景色も見事な「トコイ海岸」がロケ地となった。2人がデートで訪れる書店「ニデ・キルヤカウッパ」や文房具店「ペーパー・ショップ」など、デザイン性の優れた商品がそろう「フレデリック通り」は、日本人女性にも人気のスポットだ。美雪たちが朝市で買い物する「マーケット広場」は、「かもめ食堂」のロケ地としても知られる。また同広場の前の道では、2人がトラム(路面電車)で街を巡るカットを撮影。朝4時からクレーンをセットし、貸し切りのトラムを走らせるという大がかりなロケを敢行した。
橋本が映画の中に盛り込んでいるのは、ヘルシンキならではの広い空や、黄色・ピンク・若草色といったかわいらしいカラーの建物たち。美雪と悠輔が別れのキスをする「テルヴァサーリ」では、対岸に並ぶカラフルな建物の景色を楽しめる。現在は目立った観光スポットではないが、2人のデート気分を味わえること必至の同地について橋本は「この映画がヒットしてくれたら、日本の皆さんが“聖地”と言って来てくれるようになるかも」と期待をのぞかせた。
ヘルシンキは、夏と冬で雰囲気が一変。日照時間も長く暖かい夏に対して、冬は一面雪景色となる。スタッフは冬にもロケハンを行っていたものの、街でのデートシーンは夏編のみだったため、泣く泣く劇中に盛り込めなかったスポットも多いという。冬ならではの見どころとしては、ヘルシンキ中央駅付近に広がるアイススケート場や、サウナ好きのフィンランド人ならではの屋外冷水プールなどがある。またフィンエアーではデザインブランド・マリメッコのアメニティや、ムーミンのキッズ用アメニティ、有名シェフ監修の機内ディナーなども用意されているので、気になる人はフィンエアーやVisit Finlandの公式サイトで確認を。
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