“生と性と愛”をテーマにしたダークファンタジー「
初セックスで性器に歯が生えてしまい、局部を食いちぎる形で恋人を殺してしまった女子高生・遥香を主人公とした本作。不安と孤独にむしばまれながらも、ある男性に彼女が惹かれていくさまが描かれる。前枝が遥香、小島が遥香と出会い恋をする裕介、水井が裕介の姉・みどり、中村が遥香に最初に殺されてしまう彼氏の洋一を演じた。
岡部が石井の作品で助監督として働いてた縁から今回のトークショーが実現。石井はまず本作の感想を「きっちり横暴で傲慢」と独特の表現で述べ、「批判ではなく、それが商業映画ではできない、自主映画の価値。岡部さんがやりたいことをそのままやった。俳優たちが生き生きとしていて、シネコンでは観られないような特別なものを目撃した気持ちになりました」と称賛する。
企画の初期段階から脚本の相談を受けていた石井は、岡部が一念発起して映画を撮り始めたことを回想しつつ「岡部さんにとって『歯まん』とは何だったかのという話を聞かせてください」と改めて質問する。最初は猟奇ホラーの様相を呈した物語だったが、石井の「もっとやりたいことをやったらいい」というアドバイスを受け、より遥香の“情念”に焦点を当てたラブストーリーに変更したと明かす岡部。それから脚本を練り直し、創作の根本に「コンプレックスを持っている人をモンスターとして描きたい」という思いがあったことに気付いたという。岡部は「コンプレックスは誰しも少しづつ抱えてるもの。それを受け入れて乗り越える物語を描きたかった」と述べながら、性描写をふんだんに取り入れた理由については「すごく愛情に飢えていたというか。人を殺したいほど愛する、殺されてもいいほど誰かを愛する、そういった究極的な愛に憧れていたんです」とコメントした。
石井はヴァンパイアを引き合いに出しながら「あれも愛みたいなもの。誰かを強烈に思うことで、その人の命を奪ってしまう怪物」と、性行為の果てに男性を殺してしまう遥香との類似を指摘し「それがなぜ下(性器)にいったのか(笑)」と尋ねる。これに岡部は「美しく描くならヴァンパイアだったんですが、自分が裸になって恥ずかしいところをさらさないと、誰かに楽しんでもらえないと思った。愛を描くなら性は必要不可欠だった」と説明。そして石井は「愛というものはやんわり(相手を)殺していくもの。結局はそれは自分の人生に(他人を)引きずり込む。考えようによっては、その人の何かをゆっくり殺していくことなのかも」と“歯まん”というモチーフに納得した様子を見せた。
「歯まん」は、3月2日よりUPLINK渋谷ほか全国で順次ロードショー。
※「歯まん」はR18+指定作品
前枝野乃加の映画作品
リンク
- 「歯まん」公式サイト
- 「歯まん」予告編
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