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本作は、村上春樹の短編小説「納屋を焼く」を大胆にアレンジしたサスペンス。小説家を目指しながらアルバイトを転々とする主人公ジョンス、彼の幼なじみの女性ヘミ、謎めいた男性ベンの不穏な関係性が描かれている。「ベテラン」のユ・アインがジョンス、新人のチョン・ジョンソがヘミ、ドラマ「ウォーキング・デッド」のスティーヴン・ユァンがベンを演じた。
カンヌ国際映画祭で高い評価を受け、国際批評家連盟賞を受賞した本作。イ・チャンドンは「昨今、シンプルでとても観やすい映画が増えています。観客がそういう映画を望んでいるし、作り手もそのような作品を作るようになっていますね。でも私はそういった流れに逆行したい。映画を通して、人生とは、世界とは何かと考えてほしいのです」と語り、「専門家の評価はあまり気にしませんが、カンヌで評判がよかったことには安心しました。日本の観客の皆さんがどんなふうに受け止めてくださるのか、期待しています」と続けた。
韓国での村上の人気について、イ・チャンドンは「『春樹』と名前で呼ばれています。これはただの愛称とかそういうものを超えています。村上さんは1つの現象になっていると言っていい。固有名詞というよりは一般名詞なのです」と説明。「彼の小説は表向きにはとても洗練された自由なものに見えますが、それだけではない。複雑であいまいな世界に対応するために、必然的に生まれてきた文学です」と語る。また、日本の俳優について聞かれると、同じく村上の小説を原作とする「ハナレイ・ベイ」を鑑賞したことを明かし、「日本には素晴らしい俳優がたくさんいます。
質疑応答では、記者から「女性の描かれ方が印象的だった」という意見も。イ・チャンドンは「ベンとジョンスに共通しているのは虚無感ですが、そんな2人の間にヘミはいる。ヘミ自身は生活が苦しくカード破産もしていますが、3人の中で彼女だけが、主体的に人生の意味や美しさを探しています。観客には、彼女が何を求めているのかということや、彼女がどんな女性なのかと考えてみてほしい」と述べ、「映画的なイメージとして強い表現が必要だと思ったので、ヘミが夕陽を見ながらダンスするシーンを入れました」と話した。
会見の後半には、「ハナレイ・ベイ」で主演を務めた吉田羊が登壇。イ・チャンドンの監督作「オアシス」が好きだという吉田は「昨夜は眠れなかった」とほほえみ、「バーニング 劇場版」について「監督の大胆な解釈が、もしかしたら村上さんにとっての正解なんじゃないかと思わされました。監督がどんなふうに演出されているのか、見てみたいです」と述べる。
これに対してイ・チャンドンは「現場で私が演出している姿を見たらがっかりするかも(笑)」と答え、「私は全面的に俳優を信じています。監督の一番大きな役割はキャスティングだと思う。俳優を役に当てはめるのではなく、シナリオに書かれている人物を現実から探してきて映画の中に連れてくるというのが私のスタンスです。俳優と話はしますが、現場ではお任せすることが多いですね。吉田さんともぜひご一緒できれば」とコメント。吉田は喜びつつ「今の話を聞いて、怖くなってきました。俳優自体に力がないといけないですから」と笑った。
「バーニング 劇場版」は2月1日より東京・TOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。
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