「アニメのホヤを食べさせたい」と銘打たれたこのイベントでは、同映画祭のメインビジュアルも手がける久野が過去作を紹介しながら自身のキャリアを振り返った。まず、大学の卒業制作作品で「今も名刺代わりになっている」という「Airy Me」を上映。続けて同作がきっかけとなり、ロトスコープアニメーションディレクターとして参加した岩井俊二の監督作「花とアリス殺人事件」での制作現場を回想する。3DCGはプロのスタッフが担当したものの、手描きアニメ部分には岩井がSNSで集めた国内外の未経験者も多かったという。納品直前には会社に泊まり込みで作業することも増えたと明かした久野は「岩井さんは自ら人物の顔を描き直していましたね。みんなほぼ徹夜の状態で作っていました」と語った。また女優がゴミを捨てるアドリブの演技に興味を抱き「こちらの演出もなく、演技ができない動きがかわいらしいなと思い、作り手の意図しない動きをアニメ化しようと考えました」と述懐。その発想はNHK「テクネ 映像の教室」で披露した「ROTO SPREAD」などで生かされたという。
その後テレビアニメ「宝石の国」や石田祐康の監督作「ペンギン・ハイウェイ」に参加し、「映画クレヨンしんちゃん 襲来!! 宇宙人シリリ」にてキャラクターデザインを務めた。当時を振り返った久野は「本作は映画クレヨンしんちゃんの25作目で、アニメーターでもマンガ家でもないスタッフをということで私の名前が挙がったようです。初めてキャラクターデザインの仕事をしました」と語る。シリリの父・チチシリのデザインについて「しんちゃんに浣腸されるシーンがあるので、脚を短くしてくれと言われました」と明かすと、観客から笑い声が起きた。
イベントタイトルとなっている「アニメのホヤ」という言葉は、同映画祭のディレクターを務める土居伸彰との対談の中で生まれた。タイトルの意図について久野は「なぜホヤかというと、見たことがない人はホヤを食べられないんじゃないかと思ったんです。アニメは、どこまでもコントロールできてすごく細かく作れるので、観る方も細かく観ることが多くなるメディアだと思います。ただそうしているとお客さんの幅が狭まり、アニメ文化も狭くなる」と述懐。続けて「私みたいに、別にテレビアニメ的なものがすごくうまいわけではない立場の人や違う畑の人が、子供やたくさんの人が触れやすい場所でアニメを作るというのは、日本のアニメの幅が広がっていくことにつながると思います。自分自身の作品がホヤのようにちょっと変な作品であっても作り続けたいですし、そういう仕事はなるべく引き受けていきたいと考えています」と述べ、イベントを締めくくった。
なお第5回 新千歳空港国際アニメーション映画祭は11月5日まで開催される。
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