本上映は、第31回東京国際映画祭の「国際交流基金アジアセンター presents CROSSCUT ASIA #05 ラララ 東南アジア」内で行われたもの。ミュージシャン、俳優、プロデューサー、監督をこなすピート・テオが関わった映像作品が紹介され、2009年に死去したヤスミン・アフマドの遺作「Chocolate」を含む短編集「15Malaysia」などがスクリーンにかけられた。
ピート・テオが同映画祭に参加するのは9年ぶり。当時「タレンタイム~優しい歌」の上映のため2人で来日する予定だったが、彼女の不幸を受けて追悼イベントへの参加となった。その際、「タレンタイム~優しい歌」でも使用されている楽曲「I Go」を演奏するはずだった彼は、悲しみのあまり歌えず急遽演目を変更した。本日の上映では「I Go」のミュージックビデオもラインナップに含まれており、進行を務めた石坂健治から「今も『I Go』を歌うのは厳しい?」と聞かれると、ピート・テオは「一度だけマレーシアでのライブで歌いましたが、最後まで歌い切れませんでした。だから今でも歌わないんです」と打ち明ける。
もともと「I Go」は韓国でシングルリリースするために書き下ろされた曲。それを気に入ったヤスミン・アフマドが「タレンタイム~優しい歌」に使いたいとピート・テオに電話し、そのまま映画全体の音楽も彼が手がけることに。彼は「ヤスミンと話すたび『I Go』はどういう気持ちで書いたのか聞かれていました。でも音楽を作る身としては特定の理由がない場合もあるんです」と述懐。
特に彼女はある1行の歌詞に取り憑かれたように興味を持っていたようで、ピート・テオは「僕とヤスミンは長年友人だったけど、面と向かって会う機会は少なかった。彼女は出張が多かったし、僕もよくツアーに出ていたから、テキストを送り合ううえで成り立っていた友情なんです」と振り返る。「でも『I Go』ができる直前に『Chocolate』などを共同制作した彼女は、ともに戦う盟友という意識でした。彼女が亡くなってから思ったのは、(『I Go』は)もしかしたら彼女のために書いたのかもしれない」と続けた。
観客から「韓国語で『アイゴー』には『Oh My God』という意味があります」と指摘を受けると、ピート・テオは「確かにそれは知らされていました」とうなずきながら「自分の中では『どこかへ行く』ということをモチーフにしたかった。でも人が逝くのか、残された人がどこかへ向かうのか、どちらの『Go』か自分の中ではっきり決めているわけではありません」と歌詞に込めた思いを述べる。音楽に関する質問に、彼が「『I Go』は5分で書き上げました」と答えると会場からは驚嘆の声が上がった。
「ピート・テオ特集」は、明日10月30日にも東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで上映される。また彼が俳優として出演した「自由行」は11月17日に開幕する第19回東京フィルメックスのコンペティション部門に出品される。
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- 第31回東京国際映画祭(2018)公式サイト
- ピート・テオ特集 | 第31回東京国際映画祭
- ピート・テオ特集 予告編
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コンペティションで上映されるイン・リャン監督の『自由行』にピート・テオさんも出演しています>ピート・テオが楽曲「I Go」に込めた思い明かす「ヤスミンのために書いたのかも」 - 映画ナタリー https://t.co/kuJU1DUI9W