第31回東京国際映画祭コンペティション部門に出品されたトルコ映画「シレンズ・コール」のQ&Aが、東京・EX THEATER ROPPONGIで10月27日に行われ、監督を務めたラミン・マタン、キャストのエズギ・チェリキ、プロデューサーのエミネ・ユルドゥルムが登壇した。
本作はデニズ・ジェリオウル演じる主人公の男タフシンが、トルコ・イスタンブールの大都会から逃げ出そうと街中を駆け回るブラックコメディ。マタンは実際にイスタンブールで暮らしていて、本作の着想を得たという。「特にこの数年は街のどこを見ても建設中でクレイジーな状態。無計画で、私たちの生活やインフラを考慮せず進められている。そうした地獄のような状態の中で映画を作ったら面白いかと」と述べ、「(主人公に起こることは)イスタンブールに住む人たちが体験していること。悲劇や怒りを覚えることでもあるけど、ストーリーとして見せることで面白おかしく伝えられる。そういうものが作りたかった」と制作の経緯を説明した。
スラップスティックや風刺といった要素が含まれる本作について、観客から「モンティ・パイソンの影響を受けているのでは?」と指摘が。マタンは「子供の頃からモンティ・パイソンを観て育ったので潜在的に影響を受けていたのかも」と言いつつ「意識的に考えていたのはジャック・タチ。『プレイタイム』のビルの羅列や車の渋滞をイメージした」と明かす。
劇中では音程の外れた「トルコ行進曲」が印象的に使用されており、マタンは「『トルコ行進曲』は輪舞(ロンド)。あちこちグルグル回っているという意味で使用した。主人公は人生の中で自分を見失い、社会の迷いの渦に巻き込まれている」と言及する。そして「彼のような人はイスタンブールに多く存在する。イスタンブールのバーに行くと、6卓あるテーブルのうち5卓で『ここから抜け出したいよね』という話がされていると思う(笑)」と街の現状に触れた。
チェリキが演じたシレンはイスタンブールを離れてトルコ南部で穏やかな生活を送り、ストレスフルなタフシンに大きな影響を与える役どころ。チェリキは「イスタンブールから逃れたいと思っている人は多いけれど、実際に行動を起こす人はいない。そういう意味でシレンは特別な人」と役について説明し、「彼女はファンタジーを追い求めているのでなく、理想や夢を追求している。そこがシレンについて私が一番気に入ってるところ」と語った。
「シレンズ・コール」は10月30日にも東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで上映される。
第31回東京国際映画祭コンペティション部門の会見レポートはこちらから
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リンク
- 第31回東京国際映画祭(2018)公式サイト
- 「シレンズ・コール」| 第31回東京国際映画祭
- 「シレンズ・コール」予告編
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