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第31回東京国際映画祭の特集上映「アニメーション監督 湯浅政明の世界」の1本として上映された本作は、京都を舞台に、クラブの後輩である“黒髪の乙女”に思いを寄せる主人公“先輩”の姿と、個性豊かな登場人物が起こす珍事件を描く青春恋愛劇。イベントは本特集のプログラミングアドバイザーの氷川竜介が司会を務めて進行した。
イベントには外国人の観客も多く見られ、森見は「普段日本語で小説を書いているのであまり海外を意識していないんですが、こうしてアニメという形になって海外の方にも観ていただけて、新鮮でうれしいです」と語る。湯浅は「(海外も日本も)変わらないと思っていて。自分や日本の観客が楽しめれば、海外の人も楽しんでいただけるはずと思って作っていますね。翻訳する人が大変だったかもしれないんですが、森見さんの文体がどこまで伝わっているかわからないところもあります」と苦笑交じりに述べた。
本作や、湯浅が監督を務めたテレビアニメ「四畳半神話大系」など京都を舞台にした作品が多い森見。京都をモチーフに選ぶ理由を問われると「もともとは自分が暮らしていた身近な空間から物語を展開していったんですが、だんだん周囲の人も京都に幻想を抱いているということがわかりまして。自分が不思議なものを小説で書いたとしても読者が『京都ならこういうこともあるかもしれない』とリアリティの基準がゆるくなるので、僕にとっては大変仕事がやりやすいんです」と解説する。湯浅も「僕も京都に行くとこういうことがありそうな気がすると思う空気がありますね。すぐそこに魑魅魍魎がいてもおかしくないという雰囲気があります」と同意した。
続いて湯浅は本作を初めて森見に見せた試写会を思い返す。湯浅が本作のクライマックスに原作とは異なるアレンジを加えたことに触れながら「森見さんはとても正直な方なんですが、作った側としては承認を得たいので『どうでしたか?』って聞いたら『うーん……』みたいな」と苦笑いを浮かべる。森見は「すみません!」と謝りながら「もともと『原作はこうだけど、湯浅さんがこう膨らませてくれたからこの作品はこれでいい』というような心の調整期間が必要なんです。『面白い!』と言えばよかったのに、すぐに感想を求められて単純に黙ってしまったから、原作者がムっとして帰ったみたいな雰囲気になってしまって。『夜は短し歩けよ乙女』に限らず、どの映像作品でも心の調整期間が必要なんです!」と釈明する。湯浅が「ショックでした……」といたずらっぽく落ち込むと観客から笑い声が上がった。
最後に湯浅は、森見が自作を「長男、長女」と子供のように呼ぶことに触れ「『夜は短し歩けよ乙女』はご長女。その作品をアニメ化するということはご長女をいただくような気持ちでした」と明かす。森見が「なかなか嫁にやりたくないっていう気持ちです」と笑うと、湯浅は「なので、義理のお父さんみたいな気持ちで、様子を窺いながら作らせていただく気分でした」と述べた。
期間中は「夜明け告げるルーのうた」「マインド・ゲーム」や、湯浅の自選短編集も上映。第31回東京国際映画祭は11月3日まで開催される。
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