開館34年目にして初のロビーリニューアルが行われたキネカ大森。「もぎりさん」は、そのリニューアル前の劇場を舞台に、映画、映画館、映画好きの人々の素敵な関係を描いた作品だ。キネカ大森に限らず「街の小さな映画館が元気になるように!」と願いが込められている。「
キネカ大森は1984年に日本初のシネマコンプレックスとしてオープンした映画館。「もぎりさん」が生まれるきっかけとなったのは、リニューアルを前にロビーの風景を記念に残しておきたいという製作陣の思いから。そこで主演を務めることになったのが、大森在住で同館の常連である片桐だった。かつての銀座文化劇場(現・シネスイッチ銀座)でもぎりのアルバイトを7年していた経験を持ち、エッセイ「もぎりよ今夜も有難う」を執筆するなど映画館好きとして知られる片桐。「こんなに光栄なことはない」と主演を喜びつつも「自分をたくさん観ることになるとは思わなかった。なかなか映画に対して冷静な判断ができない」と笑顔で心境を明かした。
「もぎりさん」というタイトルは大九が考案した。「たまたま大森に住んでるからキネカ大森だけ贔屓されちゃって(笑)。でもはいりさんは日本の映画館の宝。そういう意味で日本中で共有してもらえる『もぎりさん』に」と由来を語る。続いて片桐とキネカ大森の縁の深さを証明するエピソードも飛び出した。「ハローグッバイ」が同館で上映される際、キャストでないにもかかわらず、大森の街中で映画の宣伝をしていたという片桐。「もたい(まさこ)さんと一緒にキネカでトークショーをすることになったんです。立派な俳優さんがここに来ることってなかなかないから、空席があるといけないと思って(笑)。肉寿司の店がオープンするんで来ていた、ちんどん屋さんと一緒に宣伝して街を回りました」と笑い交じりに振り返る。
全6話の撮影は映画館の営業終了後から翌朝のオープンまで、まるまる一晩かけて行われた。1話から6話の順撮りで出ずっぱりだったという片桐は「座ることも、ほとんど水を飲むこともない12時間」と述懐。しかしあまり疲れはなかったそうで「俳優って待ち時間がつらい。いつ来るとも知れない出番を待つのが一番疲れるんだなと思いました」と実感を明かす。そして「撮影が終わってからも幸いその日は仕事がなくて、半日ぐらい寝てからまたキネカ大森に映画を観に行きました(笑)」とその映画愛で観客を驚かせていた。
「行商みたいに『もぎりさん』を担いで全国の映画館を回って、スクリーンにかけてほしい。今の夢は流しのもぎり」と話す片桐。シリーズ化の話も持ち上がっているそうで、菊地は「地方にも単館系の劇場はたくさんある。尾道の仲良くしてる映画館の方から『うちでもできませんかね』と相談も受けてて。もぎりさんが全国の映画館で働く番外編もいいんじゃないか」と展望を語った。
キネカ大森では7月20日まで「勝手にふるえてろ」と「ハローグッバイ」の2本立て上映を実施。「もぎりさん」は月替わりで1話ずつ、各上映回で併映される。スタンプラリーで全6話をコンプリートした人には、特製ステッカーと名画座招待券1枚をプレゼント。抽選で1名に同館の名画座上映作品の決定権が贈られる。スタンプラリーカードは、7月末まで配布予定だ。なお大九が監督を務めた「美人が婚活してみたら」は2019年に公開。また菊地の監督作「体操しようよ」は11月19日より全国で公開される。
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片桐はいりの映画作品
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てれびのスキマ/戸部田 誠 @u5u
片桐「行商みたいに『もぎりさん』を担いで全国の映画館を回って、スクリーンにかけてほしい。今の夢は流しのもぎり」/片桐はいりの夢は「流しのもぎり」、キネカ大森で大九明子&菊地健雄とトーク - 映画ナタリー https://t.co/PP3cFuoIV7