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本作は、米国の女性作家ジョイス・キャロル・オーツの短編小説を大胆に翻案した心理サスペンス。主人公クロエが、中身は正反対である双子の精神科分析医・ポールとルイとの禁断の関係にのめり込んでいく姿を官能的に描き出す。マリーヌ・ヴァクトがクロエを演じ、クロエと心理的にも肉体的にも激しい駆け引きを行うポールとルイにジェレミー・レニエが扮した。
ステージに上がったオゾンは「この映画を観たあとで、混乱状態でないといいんですが……」と観客を気遣い、「この中に双子の方はいらっしゃいますか?」と呼びかけて笑いを誘う。製作のきっかけを聞かれると「もともと双子に興味があったことに加え、原作との出会いがきっかけになりました。キャロル・オーツは別の名義を使って小説も書いているんです。彼女が別名義(ロザモンド・スミス)で書いた『Lives of the Twins』という小説を発見して、映画にしたいと思いました」と答えた。
また原作からの変更点について、オゾンは「例えば精神分析の方法など、もともとアメリカ風だった描写をすべてフランス風にしています。それから物語のラストも、文学だと成立するものの映画表現には向かなかったので、キャロル・オーツを裏切って変更させてもらいました」と説明。司会に「フランス風とは?」と問われると、少し答えに迷いつつ「私はフランス人なので、脚色するうちに自然とフランス風になりました。果たしてアメリカよりもフランスのほうが、精神分析医が患者と肉体関係を持つ確率が高いのかどうかは、私にはわかりません。でも、やらないほうがいいと思います(笑)」とジョークで返した。
ポールとルイの描き方に関しては「身体的にも違いを出しています。例えば髪型や声の質。ルイのほうが低い声で演じてもらいました。また映画が進むにつれて、どちらがポールでどちらがルイなのか、混乱を生むような仕掛けになっています」とこだわりを明かす。また本作で描きたかったセクシャリティのテーマは“不満足”だそうで「クロエは恋人のポールとの間に愛情はあるけど、彼女の妄想の部分が満たされておらず、もっと荒々しいものを求める。そういった二面性、セックスと心の乖離という問題を描きたかった」と解説。また現実世界と妄想世界が入り交じるような描写に関して「現実に不満を抱いているクロエは、妄想世界の中で『自分は誰なのか?』といった問いの答えを探します。あえて夢を現実のように、現実を夢のように撮っています」と狙いを語った。
Q&Aコーナーでは観客から、ハイペースで作品を生み出せる理由について質問が。オゾンは「映画を作るのが苦しいという監督もいますが、私は映画作りに喜びを感じているんです。私は映画を作っていないときのほうが苦しい」と答える。また自身の作品を分析することは少ないそうで「まず、私自身を驚かせたい。毎回違うことを実験したい、という欲望や勘に従って作っています」と話した。
最後に劇中に登場する2匹の猫について質問されたオゾンは、それらを登場させた5つの理由を解説。自身は猫は苦手だという裏話も披露しつつ「まず原作に出てきたこと。次に、猫は“シネジェニック”で画面映えする動物であること。そしてマリーヌの顔が猫に似ていること。それから、フランス語で雌猫を“chatte”と言うのですが、この言葉は英語の“pussy”と同じように“女性器”を意味する俗語でもあるので、(メタファーとして)登場させました。最後に、猫って画にすると賢そうに映るんですよ。犬はちょっとバカっぽく映るんですが(笑)」と笑いを起こした。
「2重螺旋の恋人」は、8月4日に東京・ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開。
※「2重螺旋の恋人」はR18+指定作品
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- 「2重螺旋の恋人」公式サイト
- 「2重螺旋の恋人」予告編
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甘木 @mutumigoe
「2重螺旋の恋人」は、8月4日に東京・ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開。
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