第71回カンヌ国際映画祭でパルムドールを獲得した「
本日のイベントは監督や俳優、脚本家など映像制作に携わる人物をゲストに招き、制作にまつわるさまざまなことをトークセッション形式で学ぶ「マスターズ・オブ・シネマ」の一環。前半は松岡のフィルモグラフィを振り返った。松岡は「不遇の子役時代を過ごしまして」と笑いながら切り出し、「是枝監督の子役への指導ってとてつもなく愛にあふれてるんですよ。だから、子役時代に是枝さんに出会っていたらとてつもない女優になってたと思う」と語る。是枝から「今、もうとてつもない女優になってますよ」と称賛された松岡は「またあー!」と照れた様子を見せた。
是枝は松岡に、第27回日本映画プロフェッショナル大賞で主演女優賞を獲得した「勝手にふるえてろ」と「万引き家族」での演技プランの違いを尋ねる。松岡は「ここでこう撮られているときはこういう目線が効果的だ、みたいな子役時代から持っていた芝居のジンクスの最終形態が『勝手にふるえてろ』です。『万引き家族』ではそれをやったら1回もOKが出ないんですよ」と明かした。是枝が「そうだっけ? なんで?」と苦笑交じりに聞くと、松岡は「ちょっとでも作為的な何かをするとOKが出ない。じゃあ全部捨てるしかないと思って、今までの経験を全部捨てて、その場にいる私本体で演じるとOKが出たんです」と回想する。
「万引き家族」で素のままの演技を求められたこともあり、撮影後に出演した三谷幸喜作・演出の舞台「江戸は燃えているか」では、作風がコメディだったため「舵切りすぎちゃってショートした」と語る松岡。観劇した是枝は「テクニックという言葉は軽いかもしれないけど、こういうのも上手なんだね」と賛辞を贈る。そのコメントを受け、松岡は「『これやりたい、あれやりたい』って思いながら現場に恵まれなかった時代から、三谷さんや是枝さんとお仕事がしたいとずっと思っていて。それが叶って私の人生のチャプター1が終わったなと思いました」と感慨をにじませた。
続いて「万引き家族」での撮影エピソードに話が及ぶ。是枝は「各世代で1番うまい役者を集めることがコンセプトだった」と明かし、松岡に「リリー(・フランキー)さんは、樹木希林さん、安藤サクラさん、松岡さんのことを“化け物”って言ってたけど、どう?」と質問。松岡は樹木と安藤を「ドラゴンと恐竜」と例え、自身を「トカゲ」と形容する。同作での安藤の演技を「誤解を恐れずに言えば、全女優にとって“絶望的な存在”。『嘘でしょ』っていうぐらい、素晴らしい演技をされています」と述べた。園子温の監督作「愛のむきだし」でも安藤と共演していた松岡は、「安藤さんとは約10歳離れているんですが、10年後サクラさんのレベルに達しているのかなって……。(カンヌ)の赤いじゅうたんを歩いたとき、『この人と同じ笑顔で歩けない』って思ったのが本当のところです」と述懐。しかし「10年、20年かかるかわかりませんが、サクラさんと同じ笑顔でカンヌのレッドカーペットを歩きたいなと思いました」と前向きに話した。
講義後半では学生から松岡への質問コーナーが設けられた。松岡が「人生のチャプター1が終わった」と言ったことにちなみ、学生から「チャプター2の目標は?」という質問が飛ぶ。松岡は少し考えたあと、「人として豊かになること」と回答。安藤や樹木の演技を例に挙げ「人としての年輪が分厚くないとあのお芝居は絶対できない。そうなるためにいろんなことをインプットして、第二次成長期のつもりで臨みたいです」と笑顔を見せた。
マスコミ向けのフォトセッションが終わったあと、松岡は「是枝監督、パルムドールおめでとうございます!」と拍手。受講者からも盛大な拍手を送られた是枝は、笑顔を見せながら頭を下げる。松岡と是枝は壇上で抱き合い、ハイタッチをして会場をあとにした。
「万引き家族」は6月8日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国で公開。本日6月2日と明日6月3日には、先行上映が行われる。
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- 「万引き家族」公式サイト
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安藤サクラの演技力の事を「全女優にとって絶望的な存在」という表現で激賞している松岡茉優。この二人の組み合わせだけでも是枝監督やりやがったな!と思う。マジありがとう。
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