第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にて監督作「
パルムドールのトロフィーが入ったケースを抱えて登場した是枝。報道陣に目を向けながら「夜遅くに雨の中ありがとうございます」とねぎらいの言葉をかける。家に帰ってからやりたいことを尋ねられると「LINEとメールが山のように溜まっていまして、『ありがとう』の返事すらできてない方がたくさんいるんです。今年はずっと撮影をしていて年賀状すら出せていないので、お礼ぐらいはそれぞれの方に一言ずつでも返したいと思います」と胸中を明かした。
映画祭での公式上映後、約9分間のスタンディングオベーションが巻き起こった「万引き家族」。是枝は「テレビディレクターのさがと言いますか、観察してしまうんです。スタンディングオベーションが終わらない中で『なんだこいつ、まだ拍手が欲しいのか』と思ってそうな人を探してしまうみたいな」と自身の性格をありのまま話し、集まった人々の笑いを誘った。パルムドールを獲ったからといって大きく意識が変わることはないと述べ、「根っこは変わりません。今までと同じスタンスで映画とテレビに関わっていきたいと思っています」と展望を伝える。
パルムドールを獲得した理由を分析するよう求められた是枝は、困ったような表情を浮かべながら「こんなふうに褒められたと自分のことをしゃべることになるんですが大丈夫ですか?(笑) そこだけ切り取られて『こいつ自慢気に話してる』と思われたら嫌なんですが」と前置きし、授賞式後に行われた公式ディナーでの出来事を語り出す。コンペティション部門の審査員長を務めたケイト・ブランシェットとの会話を回想し、「安藤サクラさんの芝居について熱く語っていました。特に泣くシーンがすごいと。『もし審査員の私たちが今後あの泣き方をしたら、安藤サクラさんのまねをしたと思ってください』とおっしゃってました」とコメント。また以前から面識があるという審査員のチャン・チェンからは、劇中の家族が縁側で花火を見上げるシーンを褒められたという。是枝は「コンペの監督と審査員というよりは、心を動かされたという感想をみんなが順繰りに聞かせてくれる、とてもいい時間でした」とカンヌでの体験を振り返る。
是枝はフランス・カンヌを発ったあと、新作の打ち合わせのためにアメリカ・ニューヨークへ向かった。報道陣に対し申し訳なさそうな顔を見せた是枝は「いろいろ差し支えがありまして。あまりしゃべれないんですよね」と吐露。打ち合わせ自体は非常に順調に進んだようで、「近々おそらく製作発表会が行われると思いますので、そこまで待っていただければと」と述べる。ニューヨークにいる間トロフィーはスタッフが金庫に保管していたと言い、「この記者会見が終わったらどうなるんだろう。僕が持って帰っていいのかな? 一晩くらいは抱いて寝ようと思います」とお茶目に話した。
続いて「万引き家族」の撮影に関する質問が飛ぶ。是枝は「役者のアンサンブルがとてもうまくいった。集大成と言うとキャリアがピークを迎えてしまう気がするので自分では使わないですけど、僕の撮りたいものや感情を理解してくれる樹木希林さんとリリー・フランキーさんがいて、そこに安藤サクラさんと松岡茉優さんが加わる。非常にバランスがいい形でメインキャストが集まりました」と自信をのぞかせる。また是枝がキャストの城桧吏を「周りの人々を観察して、それを自分の演技に生かしていくような子でした」と称賛すると、1人の記者から城は是枝の行動も観察していたという情報が。それがコロッケをラーメンに浸して食べる行動であることが明かされると、是枝は「なぜコロッケをラーメンにひたひたするのか……?」と記者からの質問をうつろな表情で反復し、会場に笑いを起こす。「おいしいからですよ。ハマると思います」と律儀に回答したあとは、本作の見どころについて「まずは役者の演技を見ていただければと。(撮影時)これは特別な瞬間だと思うことが何度もありました。いろいろな化学反応が現場で起きて、いい映画ができたのかなという実感は持っています」と落ち着いた様子で語った。
「万引き家族」は6月8日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国で公開。なおパルムドール受賞を記念して、6月2、3日に先行上映が行われることが決定している。
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