本日4月21日、
この特集では、戦争の時代に生きた若者たちの姿を描く最新作であり、戦争3部作の最終作「花筐/HANAGATAMI」、大林の劇場映画デビュー作で少女たちが生き物のような“家”に、次々と食べられてしまうホラーファンタジー「HOUSE ハウス」がスクリーンにかけられる。
立ち見客も出る大盛況の場内に登場した大林は「皆さんのいいお顔と拍手に迎えられるのが何よりもうれしいことでございます」と挨拶。「『花筐/HANAGATAMI』のポスターを描いてくれたのは森泉岳土くんといって大活躍している絵の作家なのですが、その妻が『HOUSE ハウス』の原作者である私の娘の千茱萸であるという。映画はつながるものですね」と話す。そして、「理想的な2本立てですよ。目黒シネマは映画愛にあふれている誇るべき映画館です」と称賛した。
大林はすでに脚本ができていた「花筐/HANAGATAMI」を撮影したかったが、「HOUSE ハウス」でデビューした。大林は当時を振り返り「『戦争の映画ではなくて、東宝の監督が思い付かないような映画はないですか』というオーダーがありましてね。家に帰ってお風呂上がりで長い髪を梳かしていた娘と話していたら『この鏡に写ってる私が私を食べに来たら怖くない?』と言いました。どこか純文学的でもあるし、哲学がありそうだと」と11歳の娘がアイデアの源泉となったことを明かす。
「怪奇と幻想は美的センスを問われるから海外の映画作家たちも生涯に1作はお撮りになってるんです。テーマは戦争で死んだ人たちの話で『花筐/HANAGATAMI』とまったく同じテーマなのですが、怪奇と幻想にすると映画会社の人も乗ってくる」としみじみと語る。さらに、大林は「ニューシネマ真っ盛りの頃で誰も観たことのない映画だったので『こんなものは映画じゃないぞ』と言われた」と述懐し、「純粋な少年少女たちは『自分たちの映画だ』と喜んでくれてヒットした。100年後に理解されるのがいい作品だと言う人もいた」と続けた。
海外の上映会では客席が「HOUSE ハウス」の登場人物の服装をした“HOUSEギャル”で賑わうと大林が話していると、突然「HOUSE ハウス」でガリ役を演じた松原愛が舞台の下に現れ、大林に花束を贈呈した。「あのときあなた大変だったねえ。素っ裸で」と大林が声を掛けると、松原は「今日『花筐/HANAGATAMI』を拝見させていただいたんですが、同じシーンがあったので先生はぶれてらっしゃらないなと。とても素敵でした」と笑顔で答える。続けて大林は「僕の映画にはいつも裸体が出てくるから一頃、大林は脱がせ屋だなんて言われたんですが、脱がせたことは一度もないんですよ、着せないだけなんです。人間は本来素っ裸ですから、一番純潔で美しい命の姿なんです」と思いを吐露する。
肺がんのため、4月5日に82歳で死去した高畑勲と盟友だった大林は「山田洋次さんと高畑さんと僕の三老人が親しみを超えてお互いを必要としているのは、戦争体験を伝える責任感。高畑さんと『僕たちが平和ボケしていたから日本は戦争がまた起きる国になってしまった』と合言葉のように言っていた」と明かし、「山田さんと僕が生きていかなきゃならない」と述べた。
最後に大林は客席に向けて「世界中の人が皆さんのように映画を愛していたら戦争なんて必要ないですよね。戦争を起こす前に映画を観てほしい。それに足る映画をこそ愛して作らなければ映画の意味がないと思います」「未来の歴史をよくするために役立つ新しい映画を若い人たちに育ててほしい。平和でありたいですね。いや、必ず平和になることを信じて生きたいですね」とゆっくり噛みしめるようにメッセージを伝えた。スタッフに支えられて階段を降りながら大林は「早く元気になって映画を作らなきゃ」とつぶやいた。イベント後には大林のサイン会も実施され、ファンとの交流を楽しんでいた。本特集は、27日まで行われる。
大林宣彦監督作品2本立て
2018年4月21日(土)~27日(金)東京都 目黒シネマ
料金:一般 1500円 / 学生 1200円 / シニア 900円
<上映作品>
「花筐/HANAGATAMI」
「HOUSE ハウス」
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