大山淳子の同名小説を
「グーグーだって猫である」などで知られ、「猫に関しては、日本で一番撮ってると思う。たぶんもう誰も追い付けないです。普通こんなに撮らないもん(笑)」と豪語する犬童。劇中で猫のキャラクターたちは、本物の猫で撮影されたパートと、吉沢やコムアイ(水曜日のカンパネラ)らが扮する擬人化パート、2つの形で描かれる。
2017年11月、この日は沙織がこっそり良男を飼っているスーパーの倉庫でのシーンを撮影。本作のために、普段は演劇などで使用されている群馬県内のホールに、舞台のようなセットが建てられた。舞台美術家・伊藤雅子によって、猫の良男目線で実寸よりも大きめに作られたセットが、カメラのまわっている最中にも次々と転換されていく。
同倉庫や野良猫が集まる“ねこすて橋”など、本作ではいくつかのパートがこのような舞台風セットを用いて撮影されている。犬童に理由をたずねると、「擬人化された猫が実景の世界にいる状態でやりきるほうが難しいと思った」と回答。「でもアバンギャルドなものを撮っている意識はなくて、かわいくてグッと来るものを撮ろうとしているだけです」と説明した。
ロシアンブルー役の吉沢は青みがかったグレーのウィッグに、グレーのボーダーTシャツ、そして肉球をイメージしたピンクのスキニーパンツという衣装でセットに現れた。「ひっかいたりしちゃ駄目だよ」となでられる、キャットフードが皿に入れられる音にピクッと反応するなど、猫さながらの動きで芝居をする吉沢。沙織から邪険に扱われた良男がいじけるシーンでは、しゃがみこんでプイッとそっぽを向く仕草を、犬童と細かく相談していく。これらは稽古期間に吉沢が考案した動きを、“猫らしさ”を踏まえて修正する形で作り上げられた。撮影3日目にあたるこの日「猫役は……難しいですね」とこぼしていた吉沢を、犬童は「また次の映画を一緒にやりたいですね。吉沢くんは逸材なんじゃないですか。まずきれいですよね。ずっと見ていても飽きない。それからきちんと鍛えられた演技をしている」と絶賛していた。
一方沢尻は、スーパー店員のエプロン姿で撮影に臨んだ。元アイドルという原作にはない設定を追加した理由を、犬童は「主人公を説明するときに、“アラサーの元アイドルで今はスーパーの店員”というだけで、うまくいっていないという現状がはっきりする。フェデリコ・フェリーニの『8 1/2』でも、“映画が撮れない映画監督”という設定がまずフックになっていますから」と明かす。また現場については、「沢尻さんと吉沢くん、2人きりのシーンが、今撮っていて一番楽しい」と顔をほころばせた。
この日撮影された場面では、良男が沙織をじっと見つめながら「君が誰を好きになろうと、ずっと一緒だからね」と声をかけるが、当の沙織にその“猫語”は届かない。そんな2人の関係を犬童は「良男は本当に沙織のことが大好き。献身的に相手のことを100%思っている関係を人間同士の設定でやると、ある種のオブセッションのような異常な話になってしまう」と、ルキノ・ヴィスコンティの「ベニスに死す」を例に挙げて説明。「でも、吉沢くんが猫としてこのセリフを言うと、すんなり聞けるんだよね。本当の気持ちに思えるし、作品として娯楽になる」と語り、沙織と良男が強い絆で結ばれていく本作を「恋愛映画ではないけど、ラブストーリーです」と称した。
後半には、人間相手の恋愛がうまく行かず落ち込む沙織が、良男になぐさめられるシーンも。鼻を赤くして涙を流す沢尻を、吉沢がひざ枕しながら優しくなでる演技に、現場では「完成度が高すぎる!」という声も上がった。
「猫は抱くもの」は6月23日より全国ロードショー。
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