本日11月25日、東京・有楽町朝日ホールで開催中の第18回東京フィルメックスにて「
本作は、大阪・泉南地域の石綿(アスベスト)工場の元労働者とその親族が、損害賠償を求め国を訴えた“大阪・泉南アスベスト国家賠償請求訴訟”を8年にわたり追ったドキュメンタリー。制作を振り返り、原は「もうお手上げでした」と漏らす。その理由を「私はこれまで尖った人たちにカメラを向けてきましたが、今回は普通の人たち。だから撮影しながら面白い映画になるはずがないと思っていましたし、完成後もずっと疑問が付きまとっています。皆さんに『面白いよ』と言ってもらうのを待っているんです(笑)」と素直に話した。
イベントには原告団や支援団体に属し、本作にも出演している柚岡一禎氏、佐藤美代子氏、志野善紹氏、石川ちう子氏も出席。時に自らカメラの前に飛び出し、自身に沸き起こる衝動を表現する場面もあった原だが、佐藤氏は「人の心を読み取って、私たちの心にすっと入って一生懸命撮ってくださいました。この映画ができたのも監督の温かい心があったからだと思います」と涙ながらに伝えた。また志野氏は「必死にあおり立てて何か行動させようとしたり、絵になる場面を作ろうとしたり焚き付けてくるんですよ。裁判で隠しカメラを回そうとしたり」と明かして原を苦笑いさせたが、「確かに原さんの主観は入っていると思います。でもこれによって泉南の歴史の隠された面が後世に残ったのは支援者としてうれしいし、非常にありがたいです」と感謝を述べる。
劇中にも記録されている判決の結果について、柚岡氏は全面的には受け入れていないことを前置きしつつ、「一部とは言えど国が責任を認めたのは初めて。そして世界に発信されたことにより、世界の各地でも次々とアスベストの裁判は起きていきます。そのときに泉南の裁判を無視しては勝てません。そこに泉南の戦いに大きな意義があったと我々は自負しております」と胸中を語った。
最後に原は「面白い映画を作りたいというのが一番の原動力。それに尽きる」と繰り返し、「ドキュメンタリーとはその時代の空気を記録していくもの。そして『黙っていられない』という気持ちをこの人たちに託すわけです」と言って、原告団の面々を見つめる。また「今まで私が作ってきた映画は波乱含みで完成するので、完成作を観た人が『ここは消してください』と言ってくるトラブルが必ず発生するんです」と打ち明け、「今回も何か言ってくるだろうなと思っていた。でも『原さんが作ってくれた映画なので私たちは受け入れます』という言葉を聞いたとき、この人たちは見事だ!と思いました」と明かす。「さっきから“普通の人”って言ってますが、私が好きなように編集したものを『これでいい』と言ってくれたのは初めて。すごいです」と互いの信頼関係をのぞかせた。
「ニッポン国VS泉南石綿村」は、2018年3月に東京・ユーロスペースにて公開。
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