暗殺の恐怖と戦うミュージシャン追う記録映画、監督らが来日し撮影秘話を語る

2

60

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 8 14
  • 38 シェア

11月12日まで全国6都市で開催されている「国連UNHCR難民映画祭2017」。10月6日に東京・ユーロライブにて上映作「神は眠るが、我は歌う」のトークイベントが行われ、監督のティル・シャウダー、プロデューサーのサラ・ノジューミが登壇した。

「神は眠るが、我は歌う」トークイベントの様子。

「神は眠るが、我は歌う」トークイベントの様子。

大きなサイズで見る(全7件)

「神は眠るが、我は歌う」 (c)Amin Khelghat

「神は眠るが、我は歌う」 (c)Amin Khelghat[拡大]

本作は、女性弾圧や人権侵害を批判する作品を発表したことで懸賞金を懸けられ、暗殺の恐怖と闘いながら音楽活動を続けるイラン人のミュージシャン、シャヒン・ナジャフィの姿を追うドキュメンタリー。

ティル・シャウダー

ティル・シャウダー[拡大]

ナジャフィとの出会いについてシャウダーは「サラと私は4年前にアメリカのバスケットボール選手がイラン遠征に行く『The Iran Job(原題)』という映画を撮っていた。その頃に、2009年にイランで起きたグリーン革命で若者たちがヒップホップなどをやっていたことを知り、彼を見つけたんだ。彼を『The Iran Job』のプレミアに呼んだときには、すでに宗教令が出ていてイランにはいられなかった」と述懐する。続けて、「シャヒンは人間的にも魅力的だったので、彼の映画を撮りたいと思った。だが、すでに危険な状態にあった彼は『僕の名前を映画のクレジットに入れないでほしい』と言ってきた」と明かす。ノジューミは「ほかの人がシャヒンを撮っていたけど、彼に宗教令が出たことで撮影をやめてしまったの。彼は『The Iran Job』を気に入ってくれたけど、映画に出る決心をするまで1年かかった。求愛のようにアプローチを続けて夢が叶った」と語る。

サラ・ノジューミ

サラ・ノジューミ[拡大]

劇中でナジャフィがさまざまな変装をしていることを受けて、司会者が「この映画に出たことで変装していてもわかってしまうのではないか」という質問を投げかける。シャウダーは「すでに彼は有名でFacebookも100万人フォロワーがいる。映画を上映をすることによって、より守られるところがあると思います」と回答する。ノジューミは「映画を撮る前から警察が彼に『見た目を変えるように』と言っていたが、彼はパフォーマーでもあるので変装するのが趣味みたいになっている。編集する側としては見た目がいつも変わるので大変だった」と述べ、「彼は変装した写真をFacebookに自分で載せてしまったりしているんです」と笑顔を浮かべた。

「神は眠るが、我は歌う」トークイベントの様子。

「神は眠るが、我は歌う」トークイベントの様子。[拡大]

司会者が「ほかの国ではどうやって難民をサポートしているのか」と尋ねると、ノジューミは「アメリカではいろいろなサポートのコミュニティがあって、Facebookで医者や仕事や欲しいものを探している人や語学を教えてほしい人に情報提供をする。小さなことでもさまざまな支援をしている人がいるんです」と話す。そして、「難民のことを知ってもらう意味でも映画は大事。シリア人はこういうことを考えているんだと知ること、それも支援の一歩ではないかと思います」と述べる。シャウダーは「世界中の人々が、それぞれ自分たちでできることがあるはず。日本ではこういった映画祭をやって啓発をしていくとか、メディアで取り上げてもらうとか、寄付をしたりとか」と思いを吐露した。

続けて、観客から「撮影は危険を伴っていたと思うが、どういう気持ちで彼を追っていましたか」という質問が。シャウダーが「ケルンでのコンサートのときに脅迫が来たんですが、映画を選ぶのか自分たちの私生活を選ぶのかサラと長い話し合いをして、本能的に映画を撮り続けようという決意をしました」と答えると、客席から拍手が沸き起こる。最後にノジューミは「この作品のFacebookページを広めていただけたらうれしいです」とアピールし、イベントは終了した。

「国連UNHCR難民映画祭2017」ポスタービジュアル

「国連UNHCR難民映画祭2017」ポスタービジュアル[拡大]

12回目を迎える「国連UNHCR難民映画祭」は、難民問題の啓発を目的に、難民にまつわる現状を題材とした世界中のドラマやドキュメンタリーを特集するイベント。本日10月7日から9日に東京・イタリア文化会館で上映されたあとは、北海道、愛知、大阪、福岡、広島で順次開催される。

国連UNHCR難民映画祭2017

2017年10月7日(土)~9日(月・祝)東京都 イタリア文化会館
2017年10月14日(土)、15日(日)北海道 札幌プラザ2・5
2017年10月21日(土)、22日(日)愛知県 イオンシネマ大高
2017年10月28日(土)、29日(日)大阪府 ナレッジシアター、朝日生命ホール
2017年11月4日(土)、5日(日)福岡県 レソラNTT夢天神ホール
2017年11月11日(土)広島県 広島平和記念資料館 メモリアルホール
2017年11月12日(日)広島県 広島国際会議場

<上映作品>
「シリアに生まれて」
「神は眠るが、我は歌う」
「私たちが誇るもの ~アフリカン・レディース歌劇団~」
「とらわれて ~閉じ込められたダダーブの難民~」
「ナイス・ピープル」
「シリアからの叫び」※広島は上映なし
「アレッポ 最後の男たち」※東京・大阪のみ上映
「希望のかなた」※上映終了
「ウェルカム トゥ ジャーマニー(仮題)」※東京のみ上映
「ノーウェア・ トゥ・ ハイド ~あるイラク人看護師の記録~」※東京のみ上映
「市民」※東京のみ上映
「カイエ・アフリカン ~暴力の記録~」※東京のみ上映
「アフター・スプリング ~ザータリ難民キャンプの春~」※東京のみ上映

この記事の画像(全7件)

読者の反応

  • 2

岩本太郎 @iwamototaro

暗殺の恐怖と戦うミュージシャン追う記録映画、監督らが来日し撮影秘話を語る - 映画ナタリー https://t.co/7N69qRPy6H

コメントを読む(2件)

関連記事

リンク

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャの映画ナタリー編集部が作成・配信しています。

映画ナタリーでは映画やドラマに関する最新ニュースを毎日配信!舞台挨拶レポートや動員ランキング、特集上映、海外の話題など幅広い情報をお届けします。