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前川知大による同名戯曲をもとにした本作は、宇宙からやってきた“侵略者”たちによって、日常が非日常へと変化していくさまを描いたSF。黒沢作品への参加が初めてとなる長澤は、「油断しているとすぐ置いてけぼりになってしまう」とその印象を語る。「監督は撮るのが速くて。そのペースに負けないよう、お芝居を準備しなければならないというプレッシャーが日々ありました」と撮影を振り返った。
一方の黒沢は、長澤について「とにかく芝居がうまい方」と。しかし、撮影の事前に行われる衣装合わせなどで、「嫌がられているのか?」と錯覚するほど、長澤に煮え切らない態度を取られたという黒沢は「でもそれがこの人独特の個性なんだなと。芝居となると、一気に自分がやるべきこと、物語上望まれていることを瞬時に理解してしまう」と評した。黒沢が煮え切らない長澤を「はーい……」「やってみまーす……」と気の抜けた声でモノマネし、茶化す場面も。長澤は「昔からよく言われます(笑)。自分のそのときの感情を人に伝えるのが恥ずかしいタイプなんですかね……」と弁明した。
続いて長澤は自身が演じた鳴海について「女性あるあるが詰まっている、ある種理想の女性像」と語る。「最初は冷めきった関係性なのに、いやいやだけれど夫の真治に尽くしてしまう。結局、夫婦っていう関係性はどっちかが前で、どっちかが後ろで。平等と言いつつ、横並びで進もうとするとうまくいかないのかな」と演じていて感じたことを率直に明かした。
続いて本作のジャンルについて話が及ぶ。ホラーやヤクザものを多く手がけてきた黒沢だが、本作では「真っ向から“宇宙人侵略SF”を忠実にやりたいと思いました」と。「ただ、SFって未来都市とか、宇宙人がやってきたとか、宇宙船の中とか日常と違う状況設定があるだけで、描かれるドラマはなんでもありなんです。ラブストーリーもあれば、サスペンス、コメディもあって、ストーリーは確立していないんです」と撮影をしながら思い至ったという。そして「だからこの映画は、登場人物たちが喜怒哀楽の感情を見せて右往左往して、訳がわからないように見えるかもしれないが、観客は安心して鑑賞できるんじゃないか」と語った。
最後に、長澤は「今の自分の年齢で、この作品に出会えたことが本当に幸運でした。長く愛される映画になったらいいなと思います」と挨拶。黒沢は「長澤さんが演じた鳴海は、愛というものがほとんど失われつつあるところからスタートして、最後に愛をつかんだと思ったら、同時に手放すという難しい役柄でした。彼女を完璧に演じきった長澤さんの最後の顔、表情を撮れただけでもこの映画を作った甲斐がありました」と語りイベントは幕を閉じた。
「散歩する侵略者」は全国で公開中。
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