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水谷の初監督作にあたる「TAP -THE LAST SHOW-」では、ある事故をきっかけに自堕落な生活を送るようになった元・天才タップダンサー渡真二郎が、豊かな才能を持つ若者たちと出会い再生していくさまが描かれる。
舞台挨拶には、水谷のほかタップダンス監修を務め出演も果たしたHIDEBOH、撮影監督の会田正裕、映画評論家の金澤誠が登壇した。本作の終盤には、24分にわたるショーの模様が収められている。春夏秋冬をテーマに、サンバやフラメンコといった世界の音楽を使用したショーの構成について、水谷は「実は一晩で考えたんです。イメージしながら『んー、ここは2分』『うん、3分』と時間を入れていったら、24分になっちゃったのよ」と笑う。
12シークエンスにわたるショーの撮影は、約3日という短期間で撮影された。会田が「監督から言われたのは、途中から映画が舞台に変わったような錯覚を与えてくれ、ということ。皆さんに伝わったかな」と言うと、観客から拍手が。「与えてくれ、じゃなくて与えてくださいと言ったんですよ」と水谷から丁寧に言い直されると、会田は「丁寧なときが一番怖いんですよ!」と笑った。
クライマックス直前の3分半踊り続ける過酷なパートに関して、HIDEBOHは「ダンスのセオリー的に何小節か休憩を入れていたんですが、監督が『全部抜いてくれ』というので、ダンサーに『お休みはなしになりました』と伝えて。さらに、もともとは2分半だったんですが、監督に『1分間延ばしてくれ』と言われまして。体力的な限界を超えてやっと撮り終わったところで、会田さんと相談した監督から『もう一度頭から』と言われまして……(笑)」と振り返る。会田とともに急いで立ち上がり、深く頭を下げた水谷は「初めての監督で、最後に『もう一度やってほしい』と言うのが一番つらかったですね。みんな僕のこと鬼だと思ってるんだろうなって(笑)」と言いつつ、出来栄えには満足している様子だった。
監督を務めてみて驚いたことを聞かれた水谷は、「初日に気付いたのは、肩にかけているバッグを誰も持ってくれないんですよ。俳優のときは誰かが駆け寄ってきて持ってくれるんですけど……監督ってバッグ持てるんだ!と思いました。スタッフの一員になれた感じがしました」と述べて笑いを誘う。また「監督は方向性を決めるので、責任を持たなければいけない。そこから先は、皆さんに“やってもらう”仕事なんだと思いました」と語り、「この作品で賞を取れるとしたら、作品賞、監督賞、主演男優賞のどれがいいか?」という質問には「やってくれたスタッフに何かもらってほしい」と答えた。
30代、40代のときにタップダンスのトレーニング経験を持つ水谷。「2回とも2カ月くらいレッスンしたんですけど、タップダンスは3カ月の我慢らしくて」と言うと、HIDEBOHが「3カ月経つと基本ができて踊れるようになってくるのですが、残念ながら監督はちょっと足りなかったんです(笑)」と続ける。またイベントでは、HIDEBOHがステージ上で実際にステップを披露して会場を沸かせた。
最後に水谷が「僕は子供の頃から、大好きな映画にずいぶんといい世界に連れて行ってもらいました。病気は治せないかもしれないけど、映画を観ているときはすべて忘れて別世界に行けるんじゃないかと思っています。『TAP』を観た皆さんの中にも、そう感じた方がいらしたらとてもうれしいです」と語りかけ、イベントは終了した。
「TAP -THE LAST SHOW-」は全国の劇場で上映中。
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「TAP」水谷豊、初監督して気付いたことは「監督ってバッグを持てるんだ」 https://t.co/EkzEL9RvzH #水谷豊