マレーシアの女性監督
3月25日に同館で封切られる「タレンタイム~優しい歌」は、高校の音楽コンクール“タレンタイム”の開催を軸に、人種や言語、信仰の異なる少年少女たちの感情の揺れを描いた1作。アフマドが逝去した2009年に発表された作品で、日本ではこれまでに映画祭や特集上映などで紹介されてきたが、このたび劇場公開される運びとなった。
本作で高校教師アディバを演じたヌールはアフマド作品の常連女優で、ほかに「
「私のような“大きなサイズ”の人を使った広告は絶対になかった。私を起用して監督が伝えたかったのは、愛情を持って人に接すること、敬意を持って人に接すること。それは彼女の作品で一貫している」とヌール。彼女が「細い目」で演じた使用人ヤムも、使用人らしからぬ堂々としたキャラクターであるため、ヌールはアフマドを「常識を壊していく人」だと表現する。
ほかの俳優に関する話題では、主人公の父親役ハリス・イスカンダルについて「フィンランドの『世界で一番面白い男コンテスト』で優勝し、マレーシアではコメディアンとしてゴッドファーザー的な存在になっている」というヌールによる報告や、アディバを慕う同僚アヌアール役の俳優について「彼はもともとヤスミンの家族の運転手だったけど、私にとってはとにかくイラつく人!(笑) たぶん監督はそれをわかっていて、わざと役に生かしたんだと思います」と笑う場面も。
またヌールはアフマドの撮影現場を「幸福感であふれていた」と振り返り、「彼女は心理学を専攻していたので人の感情を引き出すのが上手。私たちの人生経験を聞き出し、それをキャラに反映させていたのでストレスのない現場でした」と述懐。アフマド亡きあとのマレーシア映画界について話が及ぶと、「ヤスミンっぽいことをやってみるという風潮はありました。でもただ異人種の関係を描いてハッピーエンドという内容で、気持ちが置いてきぼりのものばかり。ヤスミンの作品は『多様性を描かなきゃ』という考えありきではなく、彼女の人生が投影されていて真摯なもの。そこがほかの作品と違います」と分析した。
なおトークショーには京都大学東南アジア地域研究所准教授の山本博之氏、「タレンタイム~優しい歌」の配給会社ムヴィオラの武井みゆき氏も参加した。
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ヤスミン・アフマドの映画作品
リンク
- 「タレンタイム~優しい歌」公式サイト
- 「タレンタイム~優しい歌」予告編(「I Go」ver.)
- 「タレンタイム~優しい歌」予告編(「Angle」ver.)
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「タレンタイム」アディバ先生が初来日、ヤスミン・アフマドの思い出を語る https://t.co/BysaN9gjLz https://t.co/bvAHcyM86E