本日1月10日、東京・東京国立近代美術館フィルムセンターにて
本イベントは、1月22日まで同館で行われる特集上映「自選シリーズ 現代日本の映画監督5 押井守」の一環として実施されたもの。マイクを握った押井は「50年ぐらい前、入場料が安かったこともありフィルムセンターに通っていました。ポーランド映画の特集に毎日通ったことを覚えている」と同館との思い出を述べる。「テレビアニメから出発してエンタテインメントの世界の端っこで仕事をしてきた僕の作品が、名だたる監督たちの作品がかかってきたこの場所で上映されるなんて夢にも思っていなかった」と述懐する。
上映作品、プログラムともに押井によって決められた本企画。MCから上映作品の選定基準を聞かれた押井は「上映されるだけでなく、収蔵してくれるということで僕の仕事の中でもマイナーなもの、迷惑がられたものを優先して選んだ」と答える。「そういう作品を観ていただける機会を増やしたいと思ったし、マイナーな作品で行った実験から代表作と呼ばれるものにたどり着いたことがあるので」と思いを述べる。
自身の自宅がある熱海をロケ地に選んだドラマ「ケータイ捜査官7」を編集した「圏外の女」のディレクターズカット版、「THE NEXT GENERATION パトレイバー」の「大怪獣現わる」について押井は、大林宣彦や石井岳龍の名前を挙げ「自分の故郷、あるいは私生活を行っている場所で映画を作ること自体がテーマになる」と説明。「いつか“熱海3部作”を作りたい! 1つは熱海に怪獣が上陸する話。これは『パトレイバー』で実現できた。あとは『101匹わんちゃん』のような作品と、熱海はF1が行われるモナコと似てるので『熱海GP』」と嬉々として構想を語る。
またホームグランドを舞台にすることの意味について押井は「自分が生活している地域をロケハンしてみるとまるで違う世界に見えた。自分の日常を違う視点で見るというのは大変面白い」と解説。続けて「自分の日常空間を虚構化するということに興味がある」と現在の関心を明かす。
イベント前に上映された「ケータイ捜査官7」について押井は「初めて入浴シーンに挑戦した作品。でもその撮影は楽しくなかった」と述べ、「風呂場は狭いので居場所がなく、僕はずっと廊下にいた。監督という仕事がいかに疎外されてるか」と冗談交じりに振り返る。「濡れた女の人は実にいい。野性味が出てくる」と複数の作品で女性が水に濡れるシーンを捉えてきた理由に言及し、「つくづく映画は女優を撮るものだと思う。僕も今は女優さんしか撮りたくない。アニメーションでも一緒で、僕の作品の主人公は女性じゃなくちゃいけなくなってきた」と熱っぽく語った。
特集上映では出世作として知られる「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」、国内外のクリエイターに影響を与えた「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」などを計20本を上映。また押井のトークイベントは21日にも実施予定だ。
自選シリーズ 現代日本の映画監督5 押井守
2017年1月10日(火)~22日(日)東京都 東京国立近代美術館フィルムセンター
<上映作品>
「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」
「天使のたまご」
「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」
「紅い眼鏡」
「立喰師列伝」
「機動警察パトレイバー2 the Movie」
「イノセンス」
「アヴァロン」
「ケータイ捜査官7」より「圏外の女」(ディレクターズカット版)
「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」ほか
料金:一般 520円 / 高校・大学生、シニア 310円 / 小・中学生 100円
トークショー
1月21日(土)開演 15:05
入場:無料
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小黒祐一郎 @animesama
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