神山が脚本も手がけた本作は、東京オリンピックを3日後に控えた2020年を舞台にしたロードムービー。岡山・児島で暮らす女子高生ココネが、自身や両親の過去につながる事件に巻き込まれていく。ココネを高畑充希、その幼なじみモリオを満島真之介、ココネの父モモタローを江口洋介が演じ、その脇を古田新太、釘宮理恵、高木渉、前野朋哉、高橋英樹らが固める。
積極的に制作工程のデジタル化を行っている本作。そのため巨大なタブレットがズラッと並ぶ卓上には原画やレイアウト資料の紙などは少なく、すっきりと保たれていた。
デジタル化したメリットに関して作画を担当する辻智子は「音声に合わせてキャラクターの動きを描ける」とプレビュー機能の利点を語る。同じく作画スタッフの末澤慧は「すぐにプレビューができるので失敗が減った」と述べ、「トライアンドエラーがしやすくなった分、いろいろと試せるようになった」とコメント。続けて末澤はタイムシートやストップウォッチを使用しなくなったことに触れ「監督や演出の中にしかなかった画のつながりを個々人でイメージしやすくなった」と明かす。
瀬戸大橋のたもとの町や東京の湾岸エリア、そして夢の世界といった印象の異なる場所が舞台となっている本作で、全編にわたって美術ボードを作成したという美術監督の鮫島潔は「光を撮りたいという希望が神山さんの中にあった」と述べ、岡山にロケハンに行った神山から聞いた話などを語る。また同じく美術監督の日野香諸里は一部手描きを併用していると明かし「手描きとデジタルのいいとこ取りになれば」と狙いに言及。神山との意思疎通について尋ねると日野は「神山さんの指示はわかりやすくて明確。光や空間のニュアンスを生み出すために具体的な指示を出してくれる」と回答。鮫島はその言葉に「とても明確だか、自分にとっては水準の高い指示が多い」と笑う。
新しいスタジオを作り、デジタル化に舵を切った神山は「100%のデジタル化はまだ難しい」と前置きし、「日本のアニメーションにおいて作画のシステムというものが強固なインフラになっている。でも作画がデジタル化しないと演出もデジタル化しない」とその理由を述べる。続けて「各工程で上がってくるものをその場でムービー化できるので、勘でやっていた部分がなくなり、クリアになった」とメリットを語り、「トライアンドエラーが簡単にできるようになった分、迷いが増えた」と冗談交じりコメントする。
「スケジュールや予算によって映画としての作り方を実行できている」と本作について語る神山は「テレビだと絵の力で見せきるというのは何話かに1度しかできない。全体のクオリティを上げるためには脚本の部分で強度を保っていかないとリカバリーできない。僕はそういうやり方が習慣づいてしまっていた。でもどこかで飛躍する部分がないと映画にはなりえない」と述懐。「映画は公共物で僕の仕事はサービス業。だから作り手が挑戦をしてはいけないと思っている。『俺は食べてないんだけど、どうぞ』と料理を出すわけにはいかない」と信条を明かした神山は「本作は今まで出したことのない料理ではある。でもおいしいと思いますよ」とアピールした。
「ひるね姫 ~知らないワタシの物語~」は、2017年3月18日より全国ロードショー。
※動画は現在非公開です。
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- 「ひるね姫 ~知らないワタシの物語~」公式サイト
- 「ひるね姫 ~知らないワタシの物語~」作画の様子
- 「ひるね姫 ~知らないワタシの物語~」予告編
- シグナル・エムディ 公式ブログ
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2Dでフルデジタルの作画スタジオは初めて見た。
原画マンは、デジタル化に抵抗ない人を選んだのかな?
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