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行定は、岩井が監督を務めたテレビドラマ「GHOST SOUP」に助監督として参加したときのことを振り返り、「打ち上げのときに岩井さんの言ったことが支えになってて。『行定はいつか監督になるだろうから、それまではうちでやってよ』とこっそり言われたんですよね」と述懐。「『GHOST SOUP』に参加する前に岩井さんの作品を観たとき、『なんだこいつ』って思ったんですよ。『こいつは日本映画を変えるぞ』って。当時はそんな岩井さんの映画を成立させるために必死になってましたね」と続ける。また、キャスティングについて「最初からしっくりくるものを出しても面白がらない人なんです。『リップヴァンウィンクルの花嫁』でも、しっくりはこないんですよ。なのに、『うめえなあ、キャスティング』と唸らされる。ちょっと悔しい」と語り、「もう俺がいなくても大丈夫ですよ」と岩井を励まして笑いを誘った。
一方岩井は、監督デビュー後の行定について「実は作家性のすごく強い男で、うまくやっていけるんだろうかという心配はあったんですよ。エドワード・ヤンとかホウ・シャオシェンが日本でデビューするような感じというか。だからハラハラしながら見ていたんですけど、自分のテイストとエンタテインメント性をうまく融合させてるなと思います」と述べる。さらに、「今回の『ピンクとグレー』もそうだったけど、“不在の主人公を探す”という物語を、行定は永遠のテーマとして追ってるのかなと。『ピンクとグレー』はそういう意味でひとつの到達点のような作品になっていたので、観ていて感無量の思いでした」と話した。
行定は「リップヴァンウィンクルの花嫁」について、「“嘘”というのが1つのテーマなのかな、と。ある事象を、何をもってして真実と言うことができるのかというような」と分析。「絶望の先にも意外と幸せってあるんだなと思わされて、胸を打たれました」と述べ、「綾野剛がいいんですよ。彼があの役を演じてることがものすごく重要」と語る。
岩井は最後に、「『リップヴァンウィンクルの花嫁』がどういう物語だったのかということはこれからじっくり検証しようと思ってます。『ピンクとグレー』とはどこかテーマが共通してるなと思うんですよ。たとえば“嘘”という要素ですね。嘘の質というものが昔よりはるかに問われていて。“真”であればいいということですらなくなってきていて、果たして僕らはこういう事態とどう折り合いを付けていけばいいんだろうという。そこが1つの大きなテーマなのかなと今は思ってます」と説明。少し間を置いてから「……明日はどう思ってるかわからないですけど。今言ったことが嘘かもしれないし」と笑った。
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- 加藤シゲアキ「ピンクとグレー」 | KADOKAWA
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篠儀直子/ Shinogi Naoko @phyl705
行定監督がコメントしているとおり、あの役を綾野剛が演じていることがとても重要。この映画を成立させている鍵でさえあるかもしれない。/岩井俊二、かつての片腕・行定勲に「もう俺がいなくても大丈夫」と太鼓判押される - 映画ナタリー https://t.co/8vpjP5jrUk