「オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~」のチャンダーが手がけた長編3作目にあたる本作は、1981年のニューヨークを舞台に、事業拡大に奔走する移民夫婦が次々と事件に巻き込まれていくさまを描いたサスペンスドラマ。オイルビジネスでアメリカンドリームを叶えようとするも、積荷のオイルの強奪、脱税の嫌疑といったトラブルに見舞われる。
画面の端々にチャンダーの強いこだわりが見え隠れしており、特に高級感あふれる衣装が印象的な本作。上昇志向の強いキャラクターにアルマーニの白いロングコートを着せるなど、登場人物のパーソナリティと衣装が深く関連付けられている。チャンダーは自身の過去作において、衣装が目立ちすぎると作品性から目を奪われると懸念していたそうだが、「今回は初めて作品性に何かをプラスしてくれ、よりよい世界観を広げてくれた。衣装には本当に満足しています」と語る。
また本作では、アイザック扮する実業家アベルと、チャステイン扮する妻アナの激しい言い争いがたびたび登場する。そのリアルな演技について、チャンダーは、2人がアメリカのジュリアード音学院卒であるからだと分析。古典演劇に精通している2人はアドリブを多用するタイプではないが、言葉に対して命を吹き込み、感情をリアルに表現することに優れていると指摘し、「2人の喧嘩シーンは本作においても、僕においても最高の見せ場のシーンだった。親の顔、ビジネスパートナー、夫婦、出自の複雑さなど、それをあの瞬間にすべて表現し、お互いにぶつけあうという演技は本当にたまらない極上の体験でした」と本作の見どころを強調する。
最後にチャンダーは、アイザック演じる実業家アベルに自己を投影したことを明かす。ただ、はっきりした成功の定義に向かって走り続けるアベルと違い、自身は「成功ってなんだろうと自問するし、葛藤もする」とも。映画の撮影後は家族と過ごす時間を大切にしていると言い、「成し遂げたいゴールもあるし、世界に残していきたいものもあるし、日々の幸せもある。そのバランスをいかに取っていくかが、僕を含むいろんな人が悩むことなのではないでしょうか?」と我々に問いかけた。
「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」は10月1日より全国順次ロードショー。
※動画は現在非公開です。
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