月刊おもしろ映画宣伝2024年6月号

ビニールタッキーの「月刊おもしろ映画宣伝」 2024年6月号 [バックナンバー]

あらゆるジャンルに目を光らせる宣伝のお仕事に感服

タレント、ミュージシャン、怪獣絵師に現代美術作家

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映画会社は、日々工夫をこらし、作品の魅力をPRしようと努力している。時には評論家や俳優が真面目に作品の魅力を語り、時には他ジャンルとコラボし客層の拡大を図り、時にはダジャレやこじつけでSNSでのバズりを狙い……。そんな施策を日々ウォッチしている“映画宣伝ウォッチャー”ビニールタッキーが、前月気になった映画の記事についてコメントする連載が、「月刊おもしろ映画宣伝」だ。

2024年6月、ビニールタッキーが気になったのは「ツイスターズ」「呪葬」「ライド・オン」「インサイド・ヘッド2」「ブルー きみは大丈夫」「フェラーリ」などに関する宣伝。記事末ではMVP(モスト・ヴァリュアブル・プロモーション)も発表している。

/ ビニールタッキー

「月刊おもしろ映画宣伝」6月号をお届けします。「おもしろ映画宣伝」とは、海外の映画を日本で宣伝する際に発生する面白いPRイベントや不思議なコラボなどの案件をまとめて総称するために私が勝手に名付けた名前です。このコラムはその月にあったおもしろ映画宣伝をピックアップする連載コラムです。今月もご紹介していきましょう!

「クレオの夏休み」

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個人的に追いかけている「タレントナレーション予告編」、今月は前田敦子さんでした。とても優しく繊細なナレーションで映画の魅力を的確に伝えられていると思いました。一気に観たくなりました!

映画「クレオの夏休み」予告編

「ライド・オン」

イベントレポート
本作の海外プロモーションは今まで実施されなかったが、日本愛にあふれるジャッキー・チェンの「友達(ファン)に会いに行きたい」という希望により日本限定でプロモーションが実現したという。約13年ぶりに公式来日を果たしたジャッキー・チェンは「日本に来るのは容易ではないので、本当にうれしい。日本のファンの皆さんはずっとサポートし続けてくれていましたね」と感慨深げに挨拶。「何年か前に日本に来ましたが、コロナの影響で皆さんには会えなくて。無事コロナが明け、今まで5本の作品に出演しました。カナダでは新作を撮影したばかりで、10月にはマカオでもクランクインする予定ですよ」と近況を報告した。

なんとジャッキー13年ぶりのPR来日! もう国民の休日にすべき!と思うぐらいうれしい話です。イベント中も終始楽しそうで、モノマネでおなじみのジャッキーちゃんに直々に指導をしたり、主題歌の生歌まで披露してくれたりとサービス満載のイベントでした。さりげなく新作をまた撮っているという衝撃の事実も発表されて「ジャッキー! 新作はうれしいけどお身体には気を付けて!」と願うばかりです。

「怪盗グルーのミニオン超変身」

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そして背後からこっそりと近付くミニオンたちに気付いたLiSAは驚きの声を上げ、機密文書から吹替参加決定のお知らせを発見。「メガうれしいです!」と喜びをあらわにする彼女は「私が登場するのは、メガミニオンたちが大活躍するシーンなので、ぜひ劇場で探してみてください!」ともコメントした。

先月は「ザ・ウォッチャーズ」の宣伝でこがけんさんがドッキリを受けていましたが今月はLiSAさんが吹替参加決定のドッキリ! 大喜びするLiSAさんのリアクションもいいですし、その前の普通のインタビューの背後でうろうろするミニオンたちが気になって見ているこっちは話に集中できない!という面白さも含めて良い動画だと思いました。

映画「怪盗グルーのミニオン超変身」LiSA出演決定サプライズ特別映像

「ツイスターズ」

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怪獣絵師の開田裕治氏による「ツイスターズ」のド派手なコラボビジュアル! 開田氏はこれまでも何度か海外映画のコラボビジュアルを担当してきましたが、超巨大竜巻を怪獣に見立てたこのアイデアには唸りました。実際「巨竜」が本作のキャッチコピーですので納得の人選です。

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本日6月20日にYouTubeで公開された映像では津田が「ツイスターズ」を観賞。「ほんまにすごくないと出ないですよ、僕のゴイゴイスー」と語っていた彼だが本編の迫力に圧倒され、「エグすぎるやろ!」「ツイスターズ、ゴイゴイスー!」と叫びまくる。

映画鑑賞中のわかりやすいオーバーリアクションも面白いのですが、鑑賞後の落ち着いた空気の中での素のダイアン津田さんが見ものです。確かにディザスター映画を見たあとってドッと疲れるのでその感じ、わかります。

映画「ツイスターズ」特別映像(ダイアン津田編)

「呪葬」

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禍々しい新ビジュアルも気になるのですが一番気になるのは「実家帰るな」ステッカーです。
台湾ホラー映画「呪葬」のアザービジュアル6種が到着。7月12日から現代美術作家・加賀美健の描き下ろしによる「実家帰るな」ステッカーが先着入場者特典として配布されることもわかった。
入場者特典として配布されるステッカーは加賀美の「実家帰れ」シリーズからインスパイアされたもの。配布は一部上映劇場のみとなっており、なくなり次第終了となるのでご注意を。

「呪葬」は祖父の葬儀のために実家に帰った主人公が恐ろしい目に遭うという話とのことですが、そこから発展して現代美術作家の作品につなげるという着眼点がすごいと思いました。宣伝をするには芸能だけではなくあらゆる方面にアンテナを張り巡らせる必要があるんだな、と感心しました。

そのほか本作を盛り上げるタイアップも発表となった。7月12日と翌13日には東京・シネマート新宿、大阪・シネマート心斎橋にて、台湾レストラン「KiKiレストラン」開発のまぜそば「KiKi麺」と南膳房まぜそばシリーズの「エシャロットまぜそば」を来場者に抽選でプレゼント。両劇場では7月12日から「中西怪奇菓子工房。」とのコラボクッキーも販売される。クッキーは本作のクライマックスに登場する正体不明の“何か”の足跡をモチーフに生まれたものだ。

なんだか気になるコラボだらけです(まぜそば……)。しかし本当にあらゆる方向のアンテナが必要ですね!

インサイド・ヘッド2

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ディズニー&ピクサーの映画「インサイド・ヘッド2」日本版エンドソングが、SEKAI NO OWARIの楽曲「プレゼント」に決定。YouTubeでは本予告が解禁された。
「プレゼント」は、2015年にNHK合唱コンクール中学生の部の課題曲として作られた楽曲。メンバーのSaoriが葛藤の多かった中学生時代の自分に“プレゼント”したい曲として歌詞を手がけ、レコーディングは中学校で行われた。“失敗したことやうまくいかないこと、今つらいと思うことも、きっといつか自分の人生へのプレゼントなんだと思える日が来る”という楽曲のメッセージが、映画のテーマと合致していることからエンドソングに選出された。

日本版主題歌に書き下ろしではなく既存曲が使われることはたまにありますが、NHK合唱コンクールの中学生の部の課題曲が使われるというのは技アリだと思いました。「インサイド・ヘッド2」は思春期を迎えた主人公ライリーの頭の中の話なので、この選曲は実に的確です。そして、かつてこの課題曲を中学生の頃に歌った子供たちが今この映画を観たらどんな感情を抱くのか……考えただけでエモい気持ちになりますね!

ブルー きみは大丈夫

イベントレポート
また浪川を“師匠”と慕う宮田は「4年前に初めて声のお仕事をさせていただいた際に、師匠からビシバシとたくさんレッスンを受けまして……。浪川さんと同じ作品に出るのが1つの目標だった。師匠、僕大きくなりました!」と思いを伝える。今作では同時にアフレコをすることは叶わなかったが、浪川は「僕が収録した次の日に宮田くんが来ると知って、ディレクターさんに『宮田くんを何卒よろしくお願いします!』って頼みました。宮田くんは吹替は初めてで、レッスンはそんなにしていなかったんですが(ブルーの声は)本当に素晴らしかった」とたたえる。加瀬も「宮田くんの声が好きでした」と絶賛した。

吹替を担当したタレントさんと声優さんがイベントで絡むというシーンをよく見ますが、宮田俊哉さんがガチのアニメ好きで声優さんを心からリスペクトしているため、独特のいい雰囲気が流れているのが印象的でした。また、この映画のブルーが多くの仲間に見守られながら目標を達成しようとするキャラクターであるため、プロの声優に交じって参加する宮田さんの姿に重なっていると感じるのです。こういう好印象があるだけで映画のイメージも良くなると感じました。

そして最後は私が勝手に決める今月のMVP(モスト・ヴァリュアブル・プロモーション)。今回はこちらです!

「フェラーリ」

特集記事
7月5日公開の映画「フェラーリ」を全面的に応援する宣伝アンバサダー改め“宣伝コメンダトーレ”に就任した堂本光一。筋金入りのフェラーリ好きとして知られる彼は、世界屈指の自動車メーカーの創始者にして、F1界の“帝王”と呼ばれた男エンツォ・フェラーリを描いた本作をどう観たのか。物語の中心となるのは、1年前の愛息の死と冷え切った夫婦関係、ひそかに愛し合うパートナーとの二重生活、そして死と隣り合わせのレースに懸ける情熱と狂気。映画を観終えた直後「予想とは違った」と驚く堂本に、興奮冷めやらぬままの感想を聞いた。

いやー楽しい特集インタビューでした。タレントさんと映画を絡めたPRは数あれど、本当にその映画の題材が好きな人が映画について語るインタビューは読んでいるだけで熱気が感じられていいですね。車についてあまり詳しくない自分のような人間が読むと解像度高すぎな堂本光一さんの話は発見の連続でした。例えばこの発言。

現代において考えると信じられないようなことがたくさんあったんだなとしみじみ思いました。例えば、あの時代だからなんでしょうけど、レーサーが普通の私服みたいなのを着て走ってる。耐火性でもないし、もっと言えばヘルメットも被ってないときもある。走りながらたばこを吸ったり、マシンにわざわざ灰皿を付けようとしたり……。現代では考えられませんよ。逆に言うと、ある意味のんきじゃないと、命なんか懸けられなかったんじゃないかな。それぐらいかなりの確率で死んでしまう。まあ、そういう意味でもキャッチコピーになっている「情熱と、狂気。」という言葉がふさわしい映画なのかもしれない。

着眼点も的確ですし、映画のキャッチコピーに絡めたコメントも流石ですね。ほかにもこの映画で描かれたあとのエンツォ・フェラーリの人生や、フェラーリオーナーだからこそ感じるこの映画の魅力など本当にためになる面白いインタビューでした。

今月の宣伝たちを見て感じたのは、宣伝という仕事はあらゆる方向に目を光らせ、アンテナを張り、情報を収集する仕事であるということでした。「ツイスターズ」の開田裕治さん、「呪葬」の加賀美健さん、「インサイド・ヘッド2」のSEKAI NO OWARI、「ブルー きみは大丈夫」の宮田俊哉さん、そして「フェラーリ」の堂本光一さん。タレント・ミュージシャンだけでなくアーティストなどあらゆるジャンルの著名人に映画との関連性を見出してオファーする作業は並大抵のことではないと改めて感服しました。まさに「フェラーリ」のキャッチコピーである「情熱と、狂気。」という言葉がふさわしい仕事だと、尊敬と畏怖の念を感じました。

以上、月刊おもしろ映画宣伝2024年6月号でした。次回もお楽しみに!

ビニールタッキー

ビニールタッキー

ビニールタッキー

映画宣伝ウォッチャー。ブログ「第9惑星ビニル」の管理人。海外の映画が日本で公開される際に発生する“おもしろ宣伝”を観察・収集する。トークイベント「この映画宣伝がすごい!」を毎年開催。

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ビニールタッキー @vinyl_tackey

映画ナタリーさんの月一連載コラム「月刊おもしろ映画宣伝」2024年6月号を書きました!今回は怪獣絵師から現代芸術作家まで様々なコラボが光ってました!

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