ジャッキー・チェン(右)とハグをする山田くん(左)。

〇〇の異常な愛情 Vol. 11 [バックナンバー]

山田くんの場合:12歳ながらジャッキー・チェンのファン歴9年の男の子は、如何にして愛を温め続け本人と対面するに至ったか

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ジャッキーファンから学んだのは「自分の人生は自分で楽しくする」ってこと

──家でジャッキー・チェンの映画を観て研究したり、コスプレを楽しんでいた山田くんが、大人のジャッキーファンと交流するまでにはどんな経緯があったんでしょうか。

幼稚園を卒園した頃はジャッキーへの愛を語れる人がいなかったんです。コロナが始まった3年生のとき、妹もお姉ちゃんも小学校が被らない年で心細くて、自分の筆箱にジャッキーのシールを貼って学校に行ったら、後ろの席の女の子が「ジャッキーだ!」って反応してきたんですけど、最初は「知ってるわけがない!」って信じてなかったんです。でもその子のお父さんがすごくジャッキーが好きで、その人がグッズをくれたり、話をしてくれたり、いろんなところに連れて行ってくれて、それが最初の本格的なジャッキーファンとの関わりでした。その年の夏休み、「アジアの殿堂」っていう企画(※2020年に行われたアジア映画の特集上映)で東京にジャッキーの映画を観に行って、ジャッキーファンの皆さんと出会いました。

──それまでは劇場で観たことがなかった?

カンフー・ヨガ」とか新作はありましたけど、過去作品を劇場で観たのは初めてでした。僕が最初「アジアの殿堂」の「スパルタンX」を観に行ったとき、終わったあとにぽろっと「ジャッキー最高……」とつぶやいたんです。そしたら周りの人がその様子をツイートしてくれて、次に行ったとき、ファングループの中心の人が話し掛けてくれました。そのまた次の回に皆さんの集いにお父さんと参加させてもらったら、本当に素敵な人たちで、すごく僕に優しくしてくれて世界が一気に広がりました。

「スパルタンX」場面写真 (c) 2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.

「スパルタンX」場面写真 (c) 2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.

──それまで周りになかなかジャッキー愛を語れる人がいなかったと考えると、すごく大きな出会いでしたね。

ファンの方々に教えてもらったことで2つ、これからの人生で大事にしたいなと思ったことがあって、1つ目はジャッキー・チェンという人の人柄。僕は今まで、ジャッキー・チェンのアクションとか映像が好きだったんですよ。もちろんインタビューとかで素晴らしい人とは聞いてましたけど、映像として好きだったんです。でもファンの人たちの中には何回もジャッキーに会ったことがあるとか、若い頃のジャッキーの(ファンとの)接し方を知ってるとか、撮影現場でのジャッキーを見たことがあるという人たちがすごく多いんです。世界中からファンを呼んでジャッキーの負担でイベントをやったことや、東日本大震災のときも多額の寄付をしたことを教えてもらい、そういうジャッキーの人柄が印象に残って、この人を一生応援していきたいなって思いました。

2つ目は、「自分の人生は自分で楽しくする」ってこと。ジャッキー・チェンに感銘を受けたファンの皆さんは、ジャッキーを応援するため、ジャッキーを伝えるために、俳優になったりラジオを始めたりと自分の人生を変えてきたんですね。それを受けて、僕も将来はジャッキーを伝えていきたい、ジャッキーになりたい、ジャッキーに愛と感謝を伝えたいと強く感じるようになりました。このことは、(小学校の)卒業文集にも「ジャッキー・チェンとジャッキーファンに支えられて」というタイトルで書きました。

左から山田くん、ジャッキー・チェン。

左から山田くん、ジャッキー・チェン。

──「マツコの知らない世界」でも「僕の人生を作ってくれたのは本当にジャッキー」「(ファンのみんなとの)出会いもジャッキー」と言ってましたね。

4歳から今までジャッキーのおかげで夢みたいな出会いや機会が絶えず続いているので、ジャッキーがいなかったら僕の人生どうなっていたのか想像がつかないですね。

──友達や周りの大人への広報活動もしていると聞いたのですが。

ファンの皆さんの話を聞いていると、「ジャッキーになりたい」という人と、「ジャッキーを伝えたい」という人がいるんですよ。僕はどっちもなんですけど、より強いのが「伝えたい」。当時の子供たちも、僕も、大人も魅了されている人がたくさんいるから、きっとどの時代でもジャッキーは支持を得ると思う。僕も伝えていくべきだと思って、積極的に学校集会やクラスでジャッキーのことを話しています。「ライド・オン」もみんなの前で宣伝したり、LINEのステメ(ステータスメッセージ)に「『ライド・オン』5月31日公開、みんな観てね!」と書いたり、僕なりの方法でできることを1つひとつやりました。今回はこのチラシも作ったんですけど、予告編動画のQRコードや映画のホームページのURL、「涙あり、アクションあり! 笑いあり! 超傑作!!」「映画好きに年代は関係ない! みんなでみてね!」という言葉を書いています。友達と遊ぶときに持っていったり、家の近くにある施設でジャッキー世代のおじさんたちに配ったり、下校するときに会う警備員さんにも渡しました。

山田くんが手描きで作成した「ライド・オン」のチラシ。

山田くんが手描きで作成した「ライド・オン」のチラシ。

──ジャッキー・チェンと映画への愛があふれていて胸が熱くなりました。あと、めちゃくちゃ絵が上手でびっくりしています。

なんか照れるー(笑)。僕は美術部で、絵を描くのも好きなので、ジャッキーの絵はめっちゃ描いてます。

山田くんの父 1人で集中して紙に向かってると思ったら、だいたい写経のようにジャッキーの顔を描いています。なんだか落ち着くみたいで。

何時間ジャッキーを描いていても楽しいです。ちっちゃいときから“何を描くか迷ったらこれ”と決めてるジャッキーの写真があるんですけど、描くたびにまだ発見があるんですよね。鼻の角度を変えたらより近くなった!とか。

「ライド・オン」で隣の子が大号泣してて、「伝わった!」と僕も大号泣

「ライド・オン」ビジュアル (c)2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO.,
LTD.,BEIJING HAIRUN PICTURES CO.,LTD.

「ライド・オン」ビジュアル (c)2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICTURES CO.,LTD.

──美術の腕もジャッキー・チェンのおかげで向上してるんですね。今回、小中学生が対象となる「ライド・オン」の100円キャンペーンを企画したことで“宣伝アドバイザー”に就任したわけですが、もともとは「寅さん」がきっかけなんですよね。

男はつらいよ お帰り 寅さん」の中学生以下100円鑑賞キャンペーンのときにお母さんが連れて行ってくれたんです。最初はまったく興味がなかったんですけど、面白かったからそのあと何作品か「寅さん」を観ました。そんな感じで、親になったジャッキー世代は「彼の映画人生の集大成らしいし100円なら子供を連れて行こう」と思うはずだから完璧!と思ったんです。映画館の収入としては少なくなっちゃうかもしれないけど、まずはジャッキー・チェンの存在を子供に知ってもらえればいいじゃん!と。今後(ジャッキー・チェンの別作品を)宣伝したときに「知ってる!」となってもらうために、知識として定着させないと、と思って今回イベントを提案させていただいたんですけど、まさか実現するとは思っていませんでした。僕が「ライド・オン」を(キャンペーンの対象劇場である)新宿ピカデリーで観たとき、前の席も横の席も子供だった回があったんですけど、隣にいた小学2年生ぐらいの子が大号泣してて、その顔を見て僕も大号泣。伝わった!って思ってうれしかったです。

──「ライド・オン」はもう何回も観ているんですか?

(6月11日の時点で)5回“だけ”です。言い訳すると、定期テストが近くて時間が全然合わなくて(笑)。

──公開から2週間も経っていない中で5回は相当です。「ライド・オン」は5回観ていてもまだ発見がありますか?

あります! ジャッキーが「香港国際警察/NEW POLICE STORY」の本を読んでいたり、「スパルタンX」に出てきた黄色い車が、ジャッキーが市場で戦う背景にぼんやり映っていたりしました。

「ライド・オン」場面写真 (c)2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO.,
LTD.,BEIJING HAIRUN PICTURES CO.,LTD.

「ライド・オン」場面写真 (c)2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICTURES CO.,LTD.

サモ・ハン・キンポー、アーミル・カーン、チャップリン、キートンも好き

──ちなみに、ジャッキー・チェン以外の映画も観るんですか?

めちゃくちゃ観ますが、どれもジャッキー・チェンがきっかけです。ジャッキーが尊敬する(チャールズ・)チャップリンや(バスター・)キートン、(ハロルド・)ロイドの無声映画がすごい好きで、あとはイギリスコメディの「Mr.ビーン」や、「パディントン」「ナイト ミュージアム」などファミリー映画も観ます。

──12歳の男の子から「ファミリー映画」という言葉が出るとは思っていませんでした。

ライフ・イズ・ビューティフル」も観たし、お父さんが好きなインド映画も観ます。この前はイラン映画も。僕、ゲームを持ってないんです。だから映像を観ること自体が珍しくて、ちっちゃい頃から「映画観よう」って言われたらもう最高!って感じでした。

──好きな監督はいますか?

ジャッキー・チェンです(即答)。

ジャッキー・チェンが監督・脚本も担った「プロジェクトA」の場面写真。(c) 2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.

ジャッキー・チェンが監督・脚本も担った「プロジェクトA」の場面写真。(c) 2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.

──愚問でした。ではジャッキーのほかに好きな俳優は?

俳優はたくさんいます。サモ・ハン・キンポーサモ・ハン)、ユン・ピョウウー・ジンとかみんな好きです。インド映画の俳優はみんな素敵なんですけど、シャー・ルク・カーンアーミル・カーンサルマーン・カーンの三大カーンで一番好きなのはアーミル・カーン。チャップリン、キートン、ロイドも好き。ローワン・アトキンソンもめっちゃ好きです!

──では最後に、改めてジャッキー映画をアピールしてください!

ジャッキー・チェンの映画はストーリーがわかりやすくて、その中で繰り広げられるコミカルなアクションシーンと、それぞれのキャラクターが本当に素敵です。ジャッキー・チェンの映画は観れば観るほど発見と楽しさ、そして希望が満ちあふれているので、どんどん観てほしいです。

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読者の反応

大成龍祭2011 @daiseiryusai

映画ナタリーさんの、著名人の意外な趣味にスポットを当てる連載「〇〇の異常な愛情」。というコラム記事。今回の取材とコラム記事を書かれた脇菜々香さんの、山田くんのインタビューは、彼の人となりがよくわかって良いですね!山田くんのコメントが読んでいて、微笑ましくもあり、感心させられます! https://t.co/wL9QXsJI6E

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