「TAIWAN MOVIE WEEK」ロゴ(画像提供:TAICCA)

映画ナタリーが見たコンテンツビジネスの祭典・2023 TCCF Vol. 4 [バックナンバー]

もっと多くの人に台湾映画や台湾ドラマに出会ってほしい!TAICCAが手がける台湾映像フェス「TAIWAN MOVIE WEEK」の未来

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2023年10月に日本で初開催されたリアル・オンライン一体型台湾映像フェス「TAIWAN MOVIE WEEK(台湾映像週間)」。台湾の人気映画・ドラマ12本を無料で劇場上映した同企画は、2019年に台湾・文化部(※日本の文科省に類似)によって創設された独立行政法人・台湾クリエイティブ・コンテンツ・エイジェンシー(TAICCA)が主催したイベントだ。台湾文化コンテンツの産業化、国際化を促進するTAICCAでは「TAIWAN MOVIE WEEK」のほか、「脳内トラベル台湾」「台湾漫画喫茶」などさまざまなイベントを通し、日本に台湾発コンテンツの魅力を届けてきた。

このたび、映画ナタリーではTAICCAの職員・李昀にインタビューを実施。TAICCAの活動内容や「TAIWAN MOVIE WEEK」の開催経緯、台湾のコンテンツ産業の現在地を聞いた。台湾映画やドラマが近年勢いを増している理由とは?

取材・/ 金子恭未子

TAICCAの活動とは?

──台湾クリエイティブ・コンテンツ・エイジェンシー(TAICCA)は台湾・文化部(日本の文科省に類似)によって2019年に創設されました。どういった活動を行っている団体なのでしょうか?

TAICCAの一番大きな目的は台湾文化コンテンツの産業化、国際化を促進することです。日頃、いろいろなアプローチで台湾コンテンツを盛り上げる活動を行っているのですが、その中でも、もっとも大きな活動が台湾のコンテンツ産業への投資です。台湾政府の国家発展基金の一部を使って、コンテンツ産業に投資することで、作品やクリエイターのサポートをしています。台湾コンテンツの量を増やし、質を高めることも投資の目的です。そのほかTAICCAでは人材育成にも力を入れているので、クリエイターが海外でも活躍できるようワークショップなども開催しています。

──李昀さんが組長を務めている「全球市場處市場拓展三組」という部署は普段どんな仕事をされているんですか?

私たちの部署でメインに行なっているのは、海外展開の推進です。海外のブックフェアや展覧会、映画祭に参加して、海外の市場に台湾作品をアピールしています。海外のビジネスパートナーと関係を作ることも活動の1つです。各国のトレンドを調べたり、市場調査、研究も行なっています。

──TAICCAの職員の皆さんは英語はもちろんのこと、日本語、韓国語、フランス語など語学が堪能なスペシャリストが集まっているイメージです。

それぞれ得意な言語はありますね。海外営業マンみたいな感じです。

──TAICCAで働いていてどんなときが楽しいですか?

映画やドラマ、マンガといったコンテンツがもともと好きな人がTAICCAには集まっているんです。TAICCAに入ってからよりコンテンツに触れ合うことができるので楽しいですね。

「TAIWAN MOVIE WEEK」が無料になった理由は?

──TAICCAは2020年5月からXの日本アカウントを作成し、日々あらゆる台湾コンテンツの魅力を発信しています。今までどんな活動を行ってきたか教えてください。

日本と台湾は親しい関係なので、TAICCAにとって、日本はとても重要なパートナーだと思っているんです。ただ、TAICCAが立ち上がってすぐにコロナになってしまったので、活動するうえで、なかなか難しい面もありました。その中でも、2020年には「台湾漫画夜市」というイベントを開催して、台湾のマンガを紹介しました。2021年に実施したのは、日本にいながら台湾を体感できる「脳内トラベル台湾」です。これは、コロナ禍で旅行に行くことが難しい状況だったことから開催したイベントで、旅行関係の書籍だけでなく、台湾の小説などを紹介しました。あとは台湾マンガと台湾ドリンクを楽しめる「台湾漫画喫茶」を2022年に期間限定でオープンしました。日本の皆さんは旅行、グルメを通して台湾に親しみを感じてくれている印象があるので、そういったものを切り口にしました。今後もさまざまなイベントを開催したいと思っています。

「TAIWAN MOVIE WEEK」ポスタービジュアル(画像提供:TAICCA)

「TAIWAN MOVIE WEEK」ポスタービジュアル(画像提供:TAICCA)

──TAICCAの活動で記憶に新しいのが、今年初開催されたリアル・オンライン一体型台湾映像フェス「TAIWAN MOVIE WEEK(台湾映像週間)」です。参加費が無料ということに驚きました。

これまで日本で開催してきたイベントはマンガなど出版物に関するものだったので、「TAIWAN MOVIE WEEK」は初めての映像系イベントでした。台湾の映画が日本で公開される際には、独立系映画館で上映されることが多いので、観る人が限られているというイメージがある。台湾好きや台湾映画好きだけでなく、もっと多くの人に台湾映画やドラマに出会ってほしいと思って、入場料を無料にしました。ファミリー層などにも楽しんでほしいので、劇場もユナイテッド・シネマ アクアシティお台場などを選んだんです。

──ラインナップ作品はどのように選んだのでしょうか?

海外で作品を上映する際は、その国のお客さんがどんなものを好んでいるのか考えることも重要です。なので、まず胸を張ってお薦めできる台湾作品をTAICCAがピックアップして、その中から、伊藤さとりさん、よしひろまさみちさん、月永理絵さん、児玉美月さんの4人に日本に合った作品を選んでもらいました。用意したのはホラー、BL、ロマンスに加えて、「新鋭監督の長編映画デビュー作」という4つのジャンルです。台湾の作品といえば、日本ではエドワード・ヤン(楊德昌)監督や、ホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督などのイメージが強いので、新しい監督の作品もアピールしたいという狙いがありました。

TAIWAN MOVIE WEEK(台湾映像週間)劇場上映作のラインナップ

TAIWAN MOVIE WEEK(台湾映像週間)オンラインのラインナップ

  • 映画「呪詛」
  • 映画「怪怪怪怪物!
  • ドラマ「We Best Love 永遠の1位」
  • ドラマ「We Best Love 2位の反撃」
  • ドラマ「悪との距離」
  • ドラマ「模仿犯」 など

※上記作品のほかにもTAICCAではNetflix、U-NEXT、Hulu、FOD、ディズニープラス、DMM TV Prime Videoといった配信サービスで観られる台湾映画・ドラマ約30作を紹介中。詳しくはTAICCA公式Xで確認してほしい。→台湾クリエイティブ・コンテンツ・エイジェンシー(TAICCA)(@TAICCA_Japan) | X

──4人の方が最終的に選んだラインナップを見て、どのように思いましたか?

台湾と日本は作品の好みが近いのかなという印象です。同じようなイベントをフランスでも行ったんですが、フランスでは台湾の古いアニメーションや芸術映画といった予想外のものが選ばれて、びっくりしました。現代のアニメーションと比較して、台湾の古いアニメーションが珍しく映ったのかもしれないです。

──「TAIWAN MOVIE WEEK」のオープニング作品には、現在日本で公開中の「赤い糸 輪廻のひみつ」が選ばれました。

「赤い糸 輪廻のひみつ」は「あの頃、君を追いかけた」などで知られるギデンズ・コー(九把刀)監督の手がけた作品で、個人的にもお薦めの1本です。TAICCAとしては、台湾の作品がビジネスとして海外で展開できるようにバックアップすることも大切にしているんです。だから、エンタテインメント性が強くて、みんなが楽しめる「赤い糸」をオープニング作品に選びました。CGなどを使用したファンタジーですし、キャストのクー・チェンドン(柯震東)やビビアン・ソン(宋芸樺)、ワン・ジン(王淨)も素敵です。ギデンズ・コー監督はとてもクリエイティブな方なので、今後の作品も楽しみな監督さんですね。

──「TAIWAN MOVIE WEEK」の劇場上映を終えて、手応えはいかがでしたか?

思ったよりも反応がよかったですね。「赤い糸 輪廻のひみつ」は告知から半日くらいで満席になりましたし、ほかの作品も2、3日で満員になりました。また今回、反響が大きいなと思ったのが台湾BLです。TAICCAのXで発信すると、いつも反応が一番大きい。視聴者数も増加していますし、ニーズも高まっているのでBLにも力を入れていきたいと思っています。「TAIWAN MOVIE WEEK」は毎年行っていきたいですし、今後は台湾の俳優さんにも登壇してもらいたいです。

映画やドラマに投資する額が毎年上昇

──「TAIWAN MOVIE WEEK」のラインナップ作品でもある「返校 言葉が消えた日」のジョン・スー(徐漢強)監督にインタビューした際、「台湾では、ここ数年でコンテンツ産業の可能性が一気に膨らんだ」とおっしゃっていました。こういった状況をどのように分析していますか?

TAICCAでは市場調査も行っているのですが、調査報告のレポートを見ると、台湾では、映画やドラマに投資する額が近年、毎年上がっています。大きな要因の1つはNetflixなどの、国際的な配信サービスの登場で、人々がより気軽に映画やドラマを観られるようになったことです。台湾の市場は小さいですが、配信サービスが大きな影響力を持つようになったことで、作品を海外市場に売り出すチャンスが増えました。他国と共同制作をするチャンスも増えたので、映画やドラマに投資しようという動きも活発になった。さらに台湾では今年、法律を改定して、コンテンツ産業に投資した企業は税金が減免されるようになりました。だから大手企業にとってコンテンツ産業への投資は魅力があるんです。

──台湾のコンテンツやクリエイター支援が年々パワーアップしているのを感じます。

台湾の文化部が来年から4年間で文化コンテンツ産業に100億台湾ドル(約470億円)を投じる「黒潮プロジェクト(T-content plan)」の実施を決定しましたし、TAICCAも毎年、コンテンツ産業にどんどん投資しています。海外のビジネスパートナーと関係を構築していくことも重要なのでKADOKAWAとタッグを組んで映像作品に投資していく予定ですし、韓国のCJグループとは一緒にファンドを作っています。

──さまざまなプロジェクトが進行しているんですね。

そうですね。ただ、台湾のコンテンツ産業に勢いがあるのは支援の影響だけではないと思っています。台湾が中華圏の市場の中でもっとも自由に作品作りができる場所であることも理由の1つ。そういう意味でも台湾のクリエイターは海外の作り手から見て、仕事がしやすい相手だと思います。台湾の製作者たちは海外のクリエイターと共同制作することに前向きなので、これからもっともっと日本の皆さんと一緒にいろいろなことに取り組んでいきたいと思っています。

──クリエイター同士をつなぐ場所といえば、TAICCAが主催しているコンテンツビジネスの祭典「TCCF クリエイティブコンテンツフェスタ(Taiwan Creative Content Fest)」があります。2年連続台湾現地で取材させていただいたんですが、コロナ禍を経て今年はより進化していると感じました。

TAICCAとしてもTCCFの進化を実感しているんです。今年はコロナによる制限がなくなったので、海外バイヤーの参加者数が去年の3倍以上になりました。TCCFは外から見ると毎年同じような展覧会に見えるかもしれないですが、実は内部で毎年さまざまな調整を行っています。例えば今年はPITCHING(※)にとても力を入れたので、世界29の国と地域から、539の企画の応募がありました。 “文化と技術の融合”を展示したINNOVATIONSも重視した企画の1つです。VRなどのコンテンツ市場はまだビジネスモデルの型もできていないですし、市場として熟していない。ただ技術がある人とクリエイターは一緒になって、どんどんチャレンジしてほしいんです。TCCFはそんなチャンスを作る場所、可能性を提示する場所でありたいと思っています。コンテンツの展覧会は台湾だけでなく、さまざまな国で行っていますが、その中でTCCFが存在感を見せること、立ち位置を見つけることがとても重要。TCCFを“強い”展覧会にしていきたいと思っています。

※編集部注:PITCHINGは参加者が映像化を目指す企画をプレゼンし、国内外の出資者から支援を募ることができる催し。

「2023 TCCF クリエイティブコンテンツフェスタ(Taiwan Creative Content Fest)」PITCHINGの様子。(写真提供:TAICCA)

「2023 TCCF クリエイティブコンテンツフェスタ(Taiwan Creative Content Fest)」PITCHINGの様子。(写真提供:TAICCA)

──TCCFには今年も日本のクリエイターや企業が参加していました。今後参加してみたいと思っている日本のクリエイターやバイヤーもいると思うんですが、最後にそんな方たちにメッセージをお願いします。

今後、TCCFをより、国際的なイベントにしていきたいと思っています。TCCFには海外のクリエイターやバイヤーが集まっていますので、日本の皆さんが参加する際には、台湾はもちろん世界中の人と交流ができます。作品を制作する際の資金を集めたいときや、海外のパートナーを探したいならばTCCFへ! 日本の皆さんにももっと参加してほしいですし、台湾と日本でこれからもたくさん国際的なコンテンツを作っていきたいです。

台湾クリエイティブ・コンテンツ・エイジェンシー(TAICCA)

台湾・文化部(※日本の文科省に類似)によって2019年に創設された独立行政法人。台湾文化コンテンツの産業化、国際化を促進するため、台湾作品、クリエイターを積極的に支援している。

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