2023年の映画界を振り返る、村山章×西森路代×ビニールタッキー鼎談
“希望の星”マ・ドンソク、低調なMCU、「バービー」「マリオ」の大ヒット、騒ぎになったバーベンハイマー
2023年12月30日 12:15 8
2023年は映画業界においてどんな年だったのか? 映画ナタリーでは、ハル・ハートリー作品の広報や配給業務に携わる映画ライターの村山章、6月に書籍「韓国ノワール その激情と成熟」を発売したライターの西森路代、“映画宣伝ウォッチャー”のビニールタッキーによる鼎談を実施。年の瀬に1年間を振り返った。
取材・
参加者プロフィール
村山章(ムラヤマアキラ)
1971年12月24日生まれの映画ライター。2009年より続く「しりあがり寿 presents 新春!(有)さるハゲロックフェスティバル」では、初回から運営スタッフを務める。配信系映画やドラマのレビューサイト・ShortCutsの代表。2017年からハル・ハートリー作品の広報や配給業務にも携わっている。
西森路代(ニシモリミチヨ)
愛媛県生まれのフリーライター。主な仕事分野は韓国映画、日本のテレビ・映画についてのインタビュー、コラム、批評など。著書に「K-POPがアジアを制覇する」「韓国ノワール その激情と成熟」、共著に「韓国映画・ドラマ──わたしたちのおしゃべりの記録2014~2020」などがある。
ビニールタッキー
映画宣伝ウォッチャー。ブログ「第9惑星ビニル」の管理人。海外の映画が日本で公開される際に発生する“おもしろ宣伝”を観察・収集する。トークイベント「この映画宣伝がすごい!」を毎年開催。
希望の星はマ・ドンソク
ビニールタッキー 実は僕、お二人のファンでして。トークイベントに客として参加したこともあるので、今回お話しできて光栄です。
西森路代 え、そうなんですか! ありがとうございます。私もお話ししてみたいと思っていました。
村山章 僕もビニールタッキーさんのXアカウントをフォローしてますし、いつもポストを楽しみに拝見しています。
ビニールタッキー ありがたいです。
村山 2023年の映画界を振り返るということで、何から話すべきかを考えていたのですが、まずは配信の話からしてもいいでしょうか? 5年くらい前までは配信が作品の多様性を担保してくれて、救世主になってくれるかと思っていたんですが、最近はディズニープラスのオリジナル作品が知らぬ間に配信停止にされていたり、NetflixやApple TV+でも打ち切りになるドラマが急増していて。それが100%悪いこととは言い切れませんが、自分の好きな作品がいつかは観られなくなってしまうかもしれないという危機感をひしひしと感じています。皆さんはいかがですか?
ビニールタッキー 確かにそうですよね。Netflixは映画会社がやらないような面白いことをやってくれて、ディズニープラスは自分たちのIP(知的財産)を生かして今まで観れなかったものを作ってくれるなど、数年前はワクワク感がありました。ただ最近は予算の都合などであっさり終わってしまうことが増えてきている気がします。野心的に始まったものが結局コストの問題で切られていくことには、正直「あれ?」という気持ちがあります。
村山 配信サイトの規模が大きくなりすぎて、メジャースタジオへのカウンターとしては機能しなくなってますよね。今度はきっと主要配信サービスに対するカウンターが出てきて、それはそれで面白いことだと思うんですが。アジアの配信作品はどんな感じですか?
西森 配信停止になったり打ち切られたりして残念というニュースはあまりなかったんですが、韓国では劇場公開作の興行が不振で。コロナ前は1000万人観る映画が年に何本もあるという状況が6、7年は続いていましたが、今は500万人で大ヒットという感じです。
ビニールタッキー 韓国映画ってコメディもアクションも面白くてすごいなと思うんですが、興行的には苦戦しているんですね。
西森 日本と比べるとコロナの影響を大きく受けていて。大物俳優が出演している作品でも興行的に振るわないものはあって、そんな中で人気なのが
村山 マ・ドンソク人気は本当なんですね。「この人が出ていたら必ず観る」みたいなスターシステムは世界的にあまり機能しなくなってきていると思っていたんですが、希望の星はマ・ドンソクということか。
ビニールタッキー 納得ですね!
西森 「犯罪都市」以外のシリーズを作って大ヒットするかはわからないんですが、そもそも韓国ってシリーズものが流行ることがあまりなかったので、マ・ドンソクの功績は大きいと思います。個人的には「イカゲーム」の
ビニールタッキー 初監督作としてはすごすぎましたよね。
西森 ですよね! あとは今久しぶりに「ソウルの春」という映画が、「犯罪都市 NO WAY OUT」を超えるほどの大ヒットになっていて。「
低調なMCU、ユニバースものの未来は…
村山 ハリウッドの作品では、最近はMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)が失速してきていると言われてますよね。実際、興行的にも落ちてきている。
ビニールタッキー 「
村山 マーベルの強さは作品それぞれの出来よりキャラクターの魅力だと思っているんですが、急にキャラクターの描き方がダメになったという話ではないですよね。
ビニールタッキー 「マーベルズ」で言うと、キャプテン・マーベルは2019年に単独主役の「
村山 映画を1本観るのと、配信サイトの会員になってドラマシリーズを全部観るのとではハードルの高さが違いますもんね。
ビニールタッキー 数十年前は基本的にはヒーローって白人男性だったんですが、ミズ・マーベルはパキスタン系アメリカ人で、モニカ・ランボーはアフリカ系アメリカ人。監督の
村山 MCUの成功があったからだとは思うんですが、ユニバース的なプロジェクトは増えてますよね。2014年の「
西森 日本のハイロー(「HiGH&LOW」シリーズ)はユニバースと言えますし、先日ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」の世界線と交差する映画「
村山 今年の9月に「
ビニールタッキー それは知らなかったです(笑)。そういえば8月公開の「
村山 ユニバース乱立問題が生じていますね(笑)。今後MCUが息を吹き返さないとも限りませんし、ユニバースの未来は果たして……。
西森 そんな中で、韓国はユニバースとうたっている映画がほとんどないんです。たぶん
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映画ナタリーさんの2023年の映画界を振り返る鼎談に参加しました!村山さん、西森さんという尊敬するお二人とお話しできて光栄でした。明るい話暗い話笑える話色々しましたのでぜひご覧ください。
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