中国ドラマ イケオジ放談 第2回 [バックナンバー]
50代の気になる俳優をトーク──リウ・イージュン、ワン・ジンソン、フー・ジュン、ユー・ホーウェイ、イン・ジューション
2023年9月2日 12:15 17
イケオジの宝庫と言われる中国ドラマ。皇帝や仙人、師父、父親、悪役、上司などさまざまなキャラクターとして登場し、物語に深みを与えている。
映画ナタリーでは中国ドラマを彩るイケオジにフォーカスしたコラムを全4回にわたって展開。第2弾となる今回はライターの青木久美子、小酒真由子、熊坂多恵に50代の気になる俳優について語ってもらった。
取材・
若手が太刀打ちできないエロさでリウ・イージュンが全部かっさらっていっちゃう
──第1弾では皆さんに気になる60歳以上の俳優さんを挙げていただきましたが、第2弾では50代の気になる俳優さんを伺いたいと思います。1人目は
リウ・イージュン(劉奕君)
1970年6月12日生まれ、現在53歳。北京電影学院出身。出演作にドラマ「琅琊榜(ろうやぼう)~麒麟の才子、風雲起こす~」「酔麗花~エターナル・ラブ~」「扶揺(フーヤオ)~伝説の皇后~」「剣王朝~乱世に舞う雪~」「燕雲台-The Legend of Empress-」「开端(原題)」「冰雨火(ひょううか)~BEING A HERO~」などがある。
──今回の企画で唯一3人全員が気になるイケオジ俳優に挙げてくれたのがリウ・イージュンでした。
熊坂多恵 イケオジの代名詞みたいな(笑)。存在が濃厚すぎる。
青木久美子 出てきたら絶対目立ちますよね。
小酒真由子 リウ・イージュンの好きなところは一言で言うとエロいところなんですよ(笑)。
青木 私もそうなの!(笑) 親父のエロスを感じるというか。
小酒 そう! 若手のイケメンが太刀打ちできないエロさでリウ・イージュンが全部かっさらっていっちゃうんですよね(笑)。「酔麗花~エターナル・ラブ~」には、ウィリアム・チャン(陳偉霆)とか、シュー・ハイチャオ(徐海喬)とか、ゴン・ジュン(龔俊)とか、若手キャストが演じる美しい皇子が何人も出てきてそれぞれのエピソードが描かれるんですけど、終盤はすべてリウ・イージュン演じる皇帝が持っていってしまって。見終わったあとに男性キャラの中で誰に一番心をつかまれたか?って考えたら悪役でも愛には正直だった皇帝だったんですよ。
青木 基本的に悪役全面押しなんですけど、合間に入る愛のエピソードに泣かされるんですよね。報われない愛に泣くイケオジ(笑)。「琅琊榜(ろうやぼう)~麒麟の才子、風雲起こす~」は一番衝撃でしたね。悪役だけど妻へ執着していて、愛を理解してもらえずにかわいそうな役。「剣王朝~乱世に舞う雪~」でも悪い役なのに妻への愛は純粋で、でも愛に恵まれない。そのピュアさが胸にきてしまって(笑)。
小酒 そうそう! 若手キャストがまねできない愛の熱度をリウ・イージュンが出していてキュンと来ちゃうんですよね(笑)。「剣王朝」ではリー・シエン(李現)、リー・イートン(李一桐)演じる主人公たちがすごくピュアピュアで、あまり恋愛シーンがない分、国王役のリウ・イージュンがそれを引き受けていて。王后に伸ばす手があまりに艶っぽくて、もう、びっくり。このドラマのリウ・イージュンはエロラブ担当なので見逃せないです(笑)。現代劇にもよく出てるんですけど、私は時代劇のリウ・イージュンのほうが好きですね。かつらにひげがほしいイケオジ(笑)。いい歳の役だけど、女性との恋愛要素がある場合、プロデューサーもリウ・イージュンにお願いしようって思ったりするんですかね?
熊坂 ラブ要素があるから
小酒 そうそう! ワン・ジンソンにエロラブ担当をお願いしようとは思わないですよね(笑)!
ワン・ジンソンは心の中で静かに爆発しているイメージ
──今ちょうどお話に出たワン・ジンソンは熊坂さんと青木さんに挙げていただきました。
ワン・ジンソン(王勁松)
1967年11月15日生まれ、現在55歳。江蘇省戯劇学校出身。出演作にドラマ「琅琊榜(ろうやぼう)~麒麟の才子、風雲起こす~」「三国志~司馬懿 軍師連盟~」「扶揺(フーヤオ)~伝説の皇后~」「破氷行動 ~ドラッグ・ウォーズ~」「永楽帝~大明天下の輝き~」「冰雨火(ひょううか)~BEING A HERO~」などがある。
熊坂 私の中でリウ・イージュンとワン・ジンソンがイケオジの代名詞というイメージ。
小酒 ワン・ジンソンは遭遇率の高いイケオジですよね。
熊坂 ライターさんからもよく名前が挙がる俳優さんですね。「破氷行動 ~ドラッグ・ウォーズ~」では悪の親分のような役をやっているんですが、それがすごいんです。「琅琊榜」にも出ていますよね?
青木 そうそう。「琅琊榜」はイケオジ入門作品というようなドラマ。あの作品でワン・ジンソンが演じているのは内面に複雑なものを抱えた人物なんですけど、静かな表現なのにそれが伝わってくるのが素敵だなと思いました。彼の場合は枯れた美しさを感じるんです。だから55歳だと思っていなかった(笑)。
熊坂 私も60代ぐらいかなと思ってました。
青木 ワン・ジンソンは知的な感じがするイケオジで、リウ・イージュンが感情をグァーっと爆発させるのに対して、心の中で静かに爆発しているイメージ。
小酒 だから悪役をやると静かに怖いんですよね。
熊坂 「冰雨火(ひょううか)~BEING A HERO~」でも難しい役をやっていますよね。公安局の局長で、忙しくてなかなか家に帰れないから、娘には反抗されていて「金だけ寄越せ!」みたいに言われたり(笑)。そんなかわいそうな感じも漂わせつつ、もしかしてこの人って内通してる?悪い人なの?みたいなグレーゾーンの役。
小酒 彼はセリフがうまいってよく言われている俳優さんですよね。史劇もいいし、現代劇もいい。個人的にワン・ジンソンもリウ・イージュンと同じくひげがほしいイケオジです(笑)。
どんな役をやっても、フー・ジュンだったら観たいと思わせてくれる
──続いてお話しするのは青木さんに挙げていただいた
フー・ジュン(胡軍)
1968年3月18日生まれ、現在55歳。中央戯劇学院出身。出演作にドラマ「天龍八部」「フビライ・ハン」「雪中悍刀行(原題)」や、映画「東宮西宮」「藍宇/情熱の嵐」、「レッドクリフ」シリーズ、「カンフーサイボーグ」「孫文の義士団」などがある。
青木 彼との出会いは「藍宇/情熱の嵐」という伝説的なBL映画。周りに夢中になる人がたくさんいて「ぜひ観てくれ!」という声が大きくて。
熊坂 私もフー・ジュンとの出会いは「藍宇」でしたね。かなり話題になっていました。
青木 当時香港に行ったときもフー・ジュンとリウ・イエ(劉燁)がすごい人気でした。フー・ジュンが「藍宇」で演じたのは金の鎖を首に付けていて、ブイブイ言わせているようなお金持ち。そんな彼がリウ・イエ演じる学生と恋に落ちる。とても印象的な作品で、そこから彼に注目していたんです。アクション系も強いし、「金鶏(原題)」「カンフーサイボーグ」のような作品にも出ていて、コメディもいける。その振り幅が魅力だと思います。
熊坂 「孫文の義士団」では、最強の暗殺者といった役で、めちゃくちゃ強いキャラクターをやっていましたよね。去年日本で公開された「刺客」でも、すごく強い役だった。
青木 悪役のイメージはあまりないけど、悪役もやるんですね。
小酒 映画俳優として国際的な知名度がある本格的な役者さんっていうイメージですね。映画「東宮西宮」も印象深かった。ドラマにも出ているんですけど、歴史劇の武将役が多いから、ファンタジー時代劇で仙人役とかやったらどうなるだろう?(笑) フィルモグラフィを見ると日本に入ってきてないだけでドラマにもけっこう出ていますよね。
青木 どんな役をやっても、フー・ジュンだったら観たいと思わせてくれる俳優さんですよね。
ユー・ホーウェイは劉備、曹操、始皇帝を演じている
──続いて熊坂さんには
ユー・ホーウェイ(于和偉)
1971年5月4日生まれ、現在52歳。上海戯劇学院出身。出演作にドラマ「三国志~司馬懿 軍師連盟~」「項羽と劉邦 King's War」「三国志 Three Kingdoms」「上陽賦~運命の王妃~」「三体(原題)」や、映画「崖上のスパイ」「ゴッドスレイヤー 神殺しの剣」などがある。
熊坂 私は枯れた俳優さんが好きなので50代のイケオジがパッと出てこなかったんですけど、一番最初に浮かんだのがユー・ホーウェイだったんです。「三国志」はイケオジドラマだと思っているんですが、「三国志 Three Kingdoms」では劉備、「三国志~司馬懿 軍師連盟~」では曹操、さらに「項羽と劉邦 King's War」では始皇帝をやっている。劉備に曹操に始皇帝ってすごくないですか?
青木 確かに、すごい。
熊坂 味のある俳優さんで、いい作品にたくさん出ているイメージ。貫禄があるから60代ぐらいだと思ったら52歳だった。
小酒 「上陽賦~運命の王妃~」ではチャン・ツィイー(章子怡)のお父さん役をやっていますもんね。
熊坂 実力派の俳優さんですよね。劉備のときは怖くはないけどカリスマがあって、「上陽賦」では偉そうで腹黒い感じもある父親を演じていた。
小酒 ドラマ「三体」を観てユー・ホーウェイいい!って思いました。私の印象では小説のイメージにわりと近い。情の深いたたき上げの刑事役になりきってます。
青木 小説を読んだ限りだとユー・ホーウェイのイメージはなかったけど、ああいう役もハマるんですね。
小酒 ハマってましたね。「三国志~司馬懿 軍師連盟~」の曹操のイメージだったからびっくりで。「三体」は主人公の科学者を守る立場でもあるんですけど、ユー・ホーウェイの熱さが忘れられないです(笑)。
ユー・ホーウェイ出演作情報
「三国志~司馬懿 軍師連盟~」
Huluにて配信中
イン・ジューションは画面の中にいるだけで放つものがある俳優さん
──続いてお話しするのは小酒さんに挙げていただいた
イン・ジューション(尹鋳勝)
1965年10月2日生まれ、現在57歳。上海戯劇学院出身。出演作にドラマ「鳳凰の飛翔」「長安二十四時」「風起隴西(ふうきろうせい)-SPY of Three Kingdoms-」「江湖英雄伝~HEROES~」「夢華録(むかろく)」などがある。
小酒 イン・ジューションは、もしかしたら視聴者が気付かないうちに出演作をたくさん観ているタイプのイケオジかなと思っているんです。舞台俳優としていろんな賞を獲っている俳優さんで、若い頃はめちゃ美男子。三国時代を舞台とした「風起隴西(ふうきろうせい)-SPY of Three Kingdoms-」では、諸葛亮の政敵・李厳を演じているんですが、迫力が違う。「江湖英雄伝~HEROES~」「夢華録(むかろく)」「長安二十四時」などにも出ていて、醸し出す存在感が違います。
熊坂 目力がある俳優さんというイメージがありますね。
小酒 イケオジってお父さん役だったり、出番が少なくて脇に回りがちじゃないですか。でも「風起隴西」はイケオジパラダイスドラマでイン・ジューションの出番もすごく多いんです! 諸葛亮のライバルで悪役なんだけど、ただの悪役じゃない。キャラクター造形に深みを感じました。イン・ジューションはセリフを言わずとも、画面の中にいるだけで放つものがある俳優さん。優しくて枯れている感じのタイプではなく、ギラギラしていて押しの強いイケオジかもしれないです。
──「江湖英雄伝~HEROES~」でも存在感を放っていましたよね。
小酒 そうなんです。プロデューサーだったらインパクトが欲しいからイン・ジューションにオファーしようという俳優さんかもしれないです。
イン・ジューション出演作情報
「風起隴西(ふうきろうせい)-SPY of Three Kingdoms-」
Blu-ray BOX1~2販売中 各税込1万6500円
DVD-BOX1~2販売中 各税込1万3200円
発売・販売元:エスピーオー
提供:エスピーオー / テレビ東京メディアネット
▶︎中国ドラマ イケオジ放談第3回に続く
青木久美子(アオキクミコ)
華流ウォッチャー。アジアンエンタメライター。「韓流ぴあ」「見るべき中国時代劇ドラマ」(ぴあ)、「韓国テレビドラマコレクション」「中国時代劇で学ぶ中国の歴史」(キネマ旬報社)ほか、情報誌を中心に韓国・中国・台湾などアジアンエンタメの魅力を紹介。
小酒真由子(コサカマユコ)
映画界・出版界での会社勤めを経てフリーライターに。アジアから欧米までドラマについて執筆中。「韓国TVドラマガイド」(双葉社)にて「熱烈推薦!! 中華ドラマはこうハマる!」を、Cinem@rtにて「アジドラ処方箋」を連載している。
熊坂多恵(クマサカタエ)
「中国時代劇で学ぶ中国の歴史」「最新!中国時代劇ドラマガイド」(キネマ旬報社)ほか編集。映画雑誌の編集を経て、中国、台湾、韓国などアジアのエンタメを紹介するムック本の編集や執筆に参加。「最新!注目スター&中国時代劇ドラマガイド2023」が6月27日より販売中。
バックナンバー
アジア・リパブリック 社長の呟き @Asia_Republic
中国ドラマ イケオジ放談第2回 | 50代の気になる俳優をトーク──リウ・イージュン、ワン・ジンソン、フー・ジュン、ユー・ホーウェイ、イン・ジューション https://t.co/kOeLez32eo