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ホラーを語るリレー連載「今宵も悪夢を」 第33夜 [バックナンバー]

選者 / 磯村勇斗「アイアムアヒーロー」

日本ゾンビの代名詞に?「独特の狂い」がある造形

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ホラーやゾンビをこよなく愛する著名人らにお薦め作品を紹介してもらうリレー連載「今宵も悪夢を」。集まった案内人たちは身の毛もよだつ恐怖、忍び寄るスリル、しびれるほどの刺激がちりばめられたホラー世界へ読者を誘っていく。

第33回は磯村勇斗が、花沢健吾のマンガを原作とした「アイアムアヒーロー」を紹介。“独特の狂い”があるゾンビ造形の魅力、また同作のゾンビを日本人が受け入れられる理由を語ってくれた。

/ 磯村勇斗(コラム)、田尻和花(作品紹介)

ゾンビ造形技術、製作費、宗教観の違いを全てクリアした“新たなジャパニーズゾンビ映画”

人気コミックを実写化したパニックホラー「アイアムアヒーロー」。主人公の冴えない漫画家アシスタントを大泉洋さんが演じ、監督は「GANTZ」「キングダム」「今際の国のアリス」などを手掛ける佐藤信介さん。個人的にジャパニーズゾンビ映画の中でも、この作品はトップに入る。いや、世界のゾンビ映画の中でも上位に入る作品だ。
「ゾンビ」となると、これまでの邦画ではなかなか製作するのが難しい印象があった。それは、ゾンビの造形を造る技術と製作費、「火葬」と「土葬」や宗教観の違いがあるので受け入れづらい部分もあったからだ。しかし「アイアムアヒーロー」は見事に全てをクリアして、新たなジャパニーズゾンビ映画を誕生させたような気がする。

まず、ゾンビから言うと、特殊メイクのクオリティーがとにかく高い。ゾンビの顔のアップが途中何回も出てくるが、目を逸らしたくなる程に本当に怖い。「呪怨」や「リング」もだが、日本のホラー映画に登場するキャラクターは、脳裏に焼き付く程のトラウマを植え付ける魅力がある。今作のゾンビも海外のゾンビ映画に出てくるような容姿とはまた違い、「独特の狂い」がある。貞子のようなゾンビも出てくるし、「眼球」が特徴的である。少しクリーチャーに近いのかもしれない。しかし、この狂いが日本ゾンビの代名詞になりそうな気がした。それくらい造形のクオリティーとオリジナリティーが高いゾンビが多数登場する。「過去の記憶の中に生きている」という設定も面白い。

次に、宗教観の違いについてだが、まずこの作品の世界では、ゾンビを「ZQN(ゾキュン)」と呼称する。この呼び方もまたいい。ネットスラングから引用した造語だが、このネーミングからも日本のカルチャーを感じる。そして、ZQNは死者が蘇って誕生するものではなく、未知のウィルスによるものだと劇中のニュースで発表している。この時点で、宗教観の違いでありえないと思われてしまう世界が、ありえる世界になっていく。特に今の時代にこの作品を見返すと、パンデミックを起こしている画はどこか僕らの世界と近いものを感じる。2016年に製作された映画だが、なんだか「今」を予言しているような怖さもある。

これまでに述べた点で考えると、日本人に受け入れられる要素を入れつつ思考された映画だと分かる。更に、ジョージ・A・ロメロ作品へのリスペクトも感じる。ゾンビの倒し方は頭部を破壊すること。噛まれたら感染すること。主人公たちが逃げてきた先がショッピングモールだったりと映画「ゾンビ」をオマージュしている描き方もあり、ゾンビ映画好きにはたまらない構成にもなっている。それだけではなく、漫画原作というのもあって、主人公の冴えない漫画家アシスタントがヒーローになっていくサクセスストーリーも見応えがあり、鍵を握る女子高生が出てきたり、設定や登場人物も漫画好きには胸熱な展開が待っている。あくまでも個人的な意見だが、「漫画」は日本において宗教にあたるのではないかと考える。「アイアムアヒーロー」がジャパニーズゾンビ映画として成功した一番の要素は、そこにあるのかもしれない。日本を代表するゾンビ映画がここに誕生した。

磯村勇斗(イソムラハヤト)

磯村勇斗

磯村勇斗

1992年9月11日生まれ、静岡県出身。特撮ドラマ「仮面ライダーゴースト」のアラン / 仮面ライダーネクロム役、連続ドラマ小説「ひよっこ」でヒロインの夫となる役を演じ脚光を浴びる。近年の主な出演作に映画「今日から俺は!!劇場版」「ヤクザと家族 The Family」「東京リベンジャーズ」「劇場版 きのう何食べた?」、大河ドラマ「青天を衝け」などがある。また出演した「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-」が今年のゴールデンウイーク、「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-」が今夏に全国公開。「波紋」は今年初夏に封切られる。

「アイアムアヒーロー」(2016年製作)

「アイアムアヒーロー」DVDジャケット

「アイアムアヒーロー」DVDジャケット

花沢健吾の同名マンガを佐藤信介が実写化した映画。大泉洋扮する主人公・英雄(ひでお)が、謎の感染によって人から変貌した生命体“ZQN(ゾキュン)”から生き残るため、サバイバルを繰り広げるさまが描かれる。英雄が道中出会う女子高生・比呂美役で有村架純、元看護師・藪役で長澤まさみも参加した。

「アイアムアヒーロー」Blu-ray / DVD販売中

税込価格:
Blu-ray豪華版 7480円 / DVD豪華版 6380円
Blu-ray通常版 5280円 / DVD通常版 4180円
発売元:東宝
販売元:エイベックス・ピクチャーズ

※「アイアムアヒーロー」はR15+指定作品

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この記事の画像・動画(全4件)

(c)2016映画「アイアムアヒーロー」製作委員会 (c)2009花沢健吾/小学館

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沼津三郎 @nnroomuta18

磐田と沼津の違いですけど、静岡の役者さんが出てる作品を選出するとはですね。磯村君。 https://t.co/Deh9s4pXgd

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